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雑感・Fallout4

 フィクションにおいて、現代文明の崩壊とその後を描いた、いわゆる「終末もの」「ポストアポカリプス」と呼ばれるジャンルがある。
 隕石の衝突から疫病の流行まで、描かれる原因は様々だが、その代表的な下手人(?)と言えるのが、核戦争ではないだろうか。
 第二次大戦後、核開発競争と代理戦争に塗り固められた東西冷戦の中、高まっていく全面核戦争の恐怖は、人々に「その後」の世界を強く想起させるのに十分なものだった。
 科学への過信と不信。国家の同調と軋轢。一個人ではどうしようもない奔流にあって、それでも生きていくために、人間は何ができるのか。
 ポストアポカリプスとは、そんな切なる願いの思考実験なのかもしれない。

 オープンワールドゲームの代表格にして、ポストアポカリプスの最右翼と名高きRPGの最新作である。今回も様々な新要素を織り交ぜて、眠れぬ夜を連れてきた。

 二発の核兵器により終止符が打たれた大戦。その力に魅了された人類は、原子力をより身近に使えるエネルギーにすべく研究を始めた。
 家庭用ロボット、携行コンピュータ、原子力自動車。人々の生活を変えた未来のエネルギーは、やはり同時に兵器としての活用も進んでいた。
 2077年10月23日、とうとう悪夢は現実となる。アメリカ本土各地が核攻撃を受けたのだ。ネイトとノーラ、そして生まれたばかりのショーンの一家は、運良く巨大地下核シェルター『Vault』への入居を認められる。が、なぜかそこで皆、奇妙な装置に入れられる。
 やがて遠のく意識の中、つかの間の眠りにつく。そして目覚めた時、あなたはさらなる絶望を目の当たりにするのだった……。

 ゲームはいわゆるミッション受注型のオープンワールドRPG。リアルタイムに戦闘や物語が展開するので、FPSに見えることもあるが、成長や装備の概念は紛れもないRPGである。
 そうしたRPG的なテンポをつくるため、シリーズではお馴染みのV.A.T.S.が今回も登場する。
 これは戦闘中、敵の狙いたい部位を指定すれば自動で撃ってくれるという機能。もちろん使用制限はあるが、エイミングが苦手な人は重宝するだろう。
 前作からの主な変更点としては、前作ではV.A.T.S.使用中は敵が停止していたが、今回はスローながら動いていること。攻撃を受け続けることになるので、HPがぎりぎりの時は注意したい。
 武器に関しては、耐久度の概念がなくなったかわり、かなり細かいカスタマイズが可能になったほか、弾薬を自前で作ることができなくなっている。
 シリーズの代名詞的装備であるパワーアーマーも、かなり早い段階から入手可能だが、運用には高価なフュージョンコアが必要だったり、アーマーの部位ごとに耐久度が設定されていて、これがゼロになると損失してしまう。こまめな修理が必要となるだろう。

 そして今作最大の特徴とも言えるのが、町づくりが可能になったことだ。
 各所に点在する居住地の敷地内に、家屋やアイテムをかなり自由に設置できる。住み着いた移住者に寝床と水と食料を行き渡らせるのが、町づくりの主な目的になる。
 そうすることで、居住地にさらに人が呼び込めるようになり、住民に農作業や店舗経営を指示すれば、一定時間ごとにキャップ(通貨)や農作物が手に入るというわけだ。
 だが世も末過ぎた終末世界。潤った生活をしていれば、当然それを奪わんとする者も現れる。発展した居住地ほど敵に襲われやすいのだ。
 防衛の仕方も様々ある。オートタレットやブービートラップを設置するもよし、住民に武器を持たせるもよし(もちろん調達は自分がやる)、敷地をぐるりと囲む壁を作る手もある。
 とにかくこの要素だけで一本別のゲームができるくらい深いので、嵌りすぎて肝心のストーリーが疎かにならぬようご留意を。

 上記のようなクラフティングの要素を支えるのが「素材」になるわけだが、これがとにかく手に入りづらい。なにせ文明らしい文明は崩壊し、ライフラインなど見る影もない。となればすべて自給自足するほかないのだ。
 幸い世界にはあちこちに雑貨や食料が転がっており、司法も崩壊しているのでネコババしてもお咎めはない(一部所有者指定のある品は例外)。せっせとガラクタを拾い集めることで、なんとか居住地や装備の改良につぎ込めるのだ。
 そのうちアルミ缶がお宝に見えてくるのだから困ったものだ。

 ストーリー的自由度は相変わらず。主だった二つの派閥のいずれかを選んだり、会話の選択肢で展開が変わったり、およそそこにいる人物は大体攻撃できて、落ちているものは大体取れるという、善悪の選択をもプレイヤーに委ねるスタイルは、もはやオープンワールドRPGの鉄板だろう。
 あまり書くとネタバレになってしまうのだが、今回は特に大戦の始まりとその後を知ることになるので、シリーズファンにとっても意義深いのではないのだろうか。

 いささか残念なのは、主人公が男女自由に選べるものの、字幕が男性用のみであること(そういえば主人公が喋るようになったのは初めてか?)だろうか。おそらくシステム上、字幕を二種類組み込めなかったと思われるが、これは致し方なかろう。
 また今回国内発売にあたり、ゴア表現の修正がなかったそうだが、これは関係スタッフを賞賛したい。これだけジューシーな人体欠損表現をよくぞ通したと感心しきりである。

 圧倒的自由度と、それを支える作り込みの細やかさ。今やパワーゲームと化した据え置き機ゲーム開発にあって、安定してそれが行えるメーカーは多くない。一見煩雑に見えるシステムも、理解して運用した時の気持ちよさは保証していい。
 オープンワールドがオープンたる所以を体感できる傑作。是非。


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