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雑記・オススメの落語の噺

 指慣らしというと生意気ですが、最近ちょっと執筆から遠ざかりかけているので、落語をテーマに一筆認めたいと思います。
 落語未経験の方に向けたオーソドックスな噺ばかりですがご容赦を。

『芝浜』
 腕はいいが酒癖の悪さが治らない魚屋の勝は、ある朝珍しく早起きさせられて芝の魚河岸に行くと、海に落ちている財布を拾う。中には目もくらむ大金が!飛んで帰った勝はかみさんに酒を買って来させ、長屋の仲間とどんちゃん騒ぎ。しかし翌朝起きると、酒の空き瓶はあれど財布はどこにもない……。

 三遊亭圓朝が作った、三題噺という即興落語が原案だそう。名落語家、三代目桂三木助が翻案、好演したことで有名になった。
 人情噺に分類され、しっかり夫を支える妻と、なんやかんやで女房を幸せにしたいと願う夫の愛情がしんと浮かび上がる名作。くすぐりは少ないがサゲ(いわゆるオチ)の粋さは出色のもの。耳慣れない言葉も少ないので、最初の落語に是非。

『はてなの茶碗』
 京都清水の音羽の滝のほとりにある茶屋で、身なりの良い男が茶を飲んでいる。ところがこの男、手に持った茶碗を八方から眺めて「はてな」と呟いて帰った。
 これを見ていた油売りの男が一計を案じたことから、この茶碗がとんでもない事件を巻き起こす。

 上方落語中興の祖、桂米朝が現代に復活させた傑作落語。これぞ落語!といった展開の突飛さや、キャストの豪華さが楽しいエンターテインメント作品。
 ものの値段と価値の違いという、結構深いテーマが根底にありながら、全く感じさせないのも落語らしい。
 演じ手にとっては腕の良し悪しが出やすい作品らしく、上手に演じられると相当に嬉しいらしい。

『焼き塩』
 大店に奉公している娘の元に、親元から手紙が来る。手紙など珍しい時代。身体の弱い親に何かあったかと心配するが、娘は読み書きができない。急いで通りがかった侍に事情を話し、手紙を読むよう頼む。侍は手紙に目をやると「ああ手遅れだ、なんということだ」と天を仰ぐ。娘はやはり親に何かあったと泣き出す。
 そこを通りがかった焼き塩売りの男。この二人を見てミョーな想像を始め……。

 別題で生まれた噺を、桂米朝が翻案した。(原題がネタバレなのであえて書かないでおく)
 焼き塩とは、そのまま塩を炒ったもの。今のように水分やにがりを除いた塩が珍しかった昔、塩は各家庭で焼くか、焼き塩売りから買うのが一般的だった。
 笑わせるところが少なく演じ手も少ないそうだが、そのままギャグ漫画にできそうな王道的な起承転結は今なお愉快。

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