たたき台答案【刑法第1回[3]の一部】~”あつみん流”アガルート「論文答案の『書き方』」勝手に58選!より~

第1 設問前段
1 乙の罪責
 ⑴ 閉店後のXに忍び込んだ行為
  ア 乙が閉店後のXに忍び込んだ行為について、建造物侵入罪(刑法130条前段)が成立するか。
  イ 「建造物」について、Xは「建造物」に当たる。
    「人の看守する」について、「人の看守する」とは人により事実上管理支配されている状態をいう。Xは、スーパーマーケットであるから、店長や従業員により事実上管理支配されているといえる。したがって、「人の看守する」に当たる。
    「侵入した」について、「侵入」とは管理権者の意思に反する立入りをいうと解する。関係者以外の者の閉店後の立入りを許容しないのが管理権者の意思と考えられるから、上記乙の忍び込み行為は、管理権者の意思に反する立入りといえる。したがって、「侵入した」に当たる。
    建造物侵入の故意について、上記構成要件該当事実の認識を欠くような事実は認められないから、故意が認められる。
  ウ よって、上記乙の行為について、建造物侵入罪が成立する。
 ⑵ Bの胸部をサバイバルナイフで突き刺した行為
  ア 乙がBの胸部をサバイバルナイフで突き刺した行為について、殺人罪(199条)が成立するか。
  イ 「人を殺」す行為(殺人の実行行為)について、胸部は身体の枢要部といえ、また、サバイバルナイフは殺傷能力が高いといえる。つまり、上記乙の突き刺し行為は、Bという人の死亡結果発生の危険性を有する行為といえる。したがって、「人を殺」す行為に当たる。
    「人を殺した」(死亡結果)について、Bは死亡しているから、「人を殺した」に当たる。
    因果関係について、上記乙の突き刺し行為によりBは死亡しているから、因果関係が認められる。
  ウ 殺人の故意(38条1項)について、故意とは構成要件該当事実の認識をいうところ、乙はBをAだと勘違いしているため、故意が阻却されないか。
    故意責任の本質は、犯罪事実の認識により規範に直面し反対動機が形成できるのにあえて犯罪に及んだことにある。また、犯罪事実は、構成要件として類型化されている。したがって、認識した内容と発生した事実が構成要件の範囲内で符合する場合、故意を阻却しないと解する。
    本件についてみるに、乙が認識した内容はAの殺害であり、発生した事実はBの死亡である。つまり、両者は、「人を殺した」という形で殺人罪の構成要件の範囲内で符合するといえる。
    したがって、故意は阻却されず、殺人の故意が認められる。
  エ よって、上記乙の突き刺し行為について、殺人罪が成立する。
 ⑶ 罪数
   以上より、建造物侵入罪と殺人罪が成立し、両者は目的と手段の関係にあるから、牽連犯(54条1項後段)となる。
2 甲の罪責(省略)
第2 設問後段(省略)
以 上

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