見出し画像

リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改訂第2版

リハビリテーション、特に脳神経領域においては私が臨床に出てから大きくパラダイムシフトした感があります。

脳神経が損傷してしまうと身体に麻痺が生じ、リハビリテーション専門家は麻痺した身体を回復させるために運動療法や物理療法などの各種治療法を駆使して回復へと導きます。

ただし、注意すべきなのは”何をターゲットとして治療を行うのか”ということ。

手が動かないから手を動かすことで手の動きを回復させる、というのは人間を機械として扱っているかのような安直な治療となります。

あくまでその手に運動の命令を下しているのは脳であり、損傷した脳を回復させることが手の動きを回復することになります。

脳には可塑性があります。損傷した脳神経は再生できませんが、運動や感覚を学習していく過程で柔軟に役割やシステムを変更していくことができます。

リハビリテーションではそういった脳の可塑性を拠り所にして患者さんの動作能力や身体機能を回復させ、社会的役割や尊厳までも回復に導くことが使命となります。

脳の可塑性を引き出そうとするなら、まずは脳の機能や神経ネットワークのつながりを理解しておくことが必要となり、脳神経科学はその基礎となる知識として、リハビリテーション専門職が当たり前に持っていなくてはいけない知識です。

この本ではそういった基礎的な内容を、非常に多くの文献を引用しながら丁寧に解説しており、まさに現代のリハビリテーションの必携の書となっています。

しかし、これまであまり慣れ親しんでこなかったリハビリテーション専門職(私を含む)にとっては、内容が難解であり理解するのに苦労するかもしれません。

この本では理論的な背景や臨床への応用のヒントが散りばめられているのですが、おそらく何度も読み込んでいって初めて臨床に活きてくるのではないかと。

私が臨床に出た当初はこれらの知識はまだ一般的ではありませんでしたが、現代のセラピストたちは当たり前にこれらの知識を持っているのでしょうか。

もしそうだとしたら、頼もしいと同時に焦りを感じるのは私だけではないのではないでしょうか。

科学の進歩は確実に続いています。もちろん脳神経科学についても同様です。

ちょっと気を抜いていると、あっというまに取り残されてしまいます。私のように。

一方で、学ぶ気持ちが芽生えたのなら、遅すぎるということは決してないということも事実でしょう。

覚えの悪い私だから、20回くらい読んでみたらようやく使い物になるでしょうか。

いつでもどこにでも持ち運んで、暇があれば読み込むということを可能にしてくれるコンパクトサイズのこの本の中には、非常に大きな希望が詰まっています。

脳神経疾患にかかわるセラピストだけでなく、リハビリテーションに携わる全てのセラピストにとってなくてはならない知識が詰まった本書は、まさに現代のリハビリテーションのスタンダードであると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?