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【ロック名盤100】#10 The Beatles - The Beatles

 今回紹介するのはビートルズの2枚組アルバム「The Beatles」通称”White Album”だ。まだまだヒッピー/サイケのムーヴメントが元気な1968年11月にリリースされた。しかし、逆にビートルズはサイケから脱却するような内容の作品を発表した。(その動きを見せたのはザ・バンドらの方が先。彼らはいわゆるルーツ・ロック志向のアーティストであり、本作は彼らから影響を受けた面もある)。ドラッグから脱却した作品作りを目指したビートルズは超越瞑想の修行のためインドに渡る。本作の多くはインドで作曲されたものだ。アコギ主体の曲が多いのは、現地にピアノがなくて仕方なくアコギで演奏していたからだとか。
 それにしても特徴的なジャケットである。シンプルの極みかのようなデザインとは裏腹に内容はビートルズのアルバムの中では最も豊かであるといえるだろう。それにしては音像と完璧にマッチしたジャケットであるのが不思議である。全体的なラフさというか、都会の喧騒とは無縁なインドのリシケシュで作られた曲が多いからだろうか。

1 Back In The U.S.S.R.
2 Dear Prudence
3 Glass Onion
4 Ob-La-Di, Ob-La-Da
5 Wild Honey Pie
6 The Continuing Story Of Bungalow Bill
7 While My Guitar Gently Weeps
8 Happiness Is A Warm Gun
9 Martha My Dear
10 I’m So Tired
11 Blackbird
12 Pigges
13 Rocky Raccoon
14 Don’t Pass Me By
15 Why Don’t We Do It In The Road?
16 I Will
17 Julia
18 Birthday
19 Yer Blues
20 Mother Nature’s Son
21 Everybody’s Got Something To Hide
    Except Me And My Monkey
22 Sexy Sadie
23 Helter Skelter
24 Long, Long, Long
25 Revolution 1
26 Honey Pie
27 Savoy Truffle
28 Cry Baby Cry
29 Revolution 9
30 Good Night

 最初の4曲が最高の勢いで畳み掛けてくれる。次の曲はなんだろうと心を躍らせていざ5曲目が始まると拍子抜け。あれ?「ハァニパァ〜イ」とポール・マッカートニーが繰り返しているだけ。この「ワイルド・ハニー・パイ」はビートルズの偉大なディスコグラフィの中では最も変かもしれない。まあでもそういうレイヤーがこのアルバムにとっては大事なんだろう。
 ジョージ・ハリスンの代表作「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」は凄まじい。リード・ギターにあのエリック・クラプトンが参加している。客演を滅多に迎えないビートルズにしては珍しい。ジョン・レノンの名曲「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」も素晴らしいし、その後に続く「ブラックバード」「アイ・ウィル」「ジュリア」の優しさといったら。「バースデイ」「ヤー・ブルース」「ヘルダー・スケルター」といったハードな側面も堪能できる。
 長かった2枚組もそろそろ終わりかなとメロディアスな佳作「クライ・ベイビー・クライ」が終わったあと、ビートルマニアのトラウマ体験「レボリューション9」が僕たちの耳を襲う。再度言うが、こういうレイヤーがこのアルバムにとっては大事なんだろう。そして世界の終わりを迎えたかのような騒ぎに傷ついた心を癒すのが、リンゴ・スターのララバイ「グッド・ナイト」だ。1時間弱続いた2枚組アルバムはリンゴの「おやすみ」という呼び掛けによって目を閉じる。
 #9で僕は「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を「史上最高の名盤」と評したが、僕が一番好きなアルバムはこの「ホワイト・アルバム」かもしれない。いつもより記事の文量が多いのもそのせい。
 「ワイルド・ハニー・パイ」にせよ「レボリューション9」にせよ、そういうちょっと変なところが愛おしいんだろうか。録音時メンバーの雰囲気はあまり良くなかったらしいが、不仲とは思えないくらい大きな魅力を持った名盤だと思う。

↓「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」

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