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砂の詩集 【詩/現代詩】


〜はじめに〜

おすすめの読み方

①試しに好きなフレーズを探してみる。

②あ、ここがこーだから、あれがあーで、え?てことは…えー!そうだったのかー!といった感じで深く読んでみる。

※参考※


途中まで無料で試し読み出来ます。
ビール片手に(飲めない方は珈琲や紅茶を片手に)まった〜りと詩集を味わってみませんか?

砂の詩集に埋め込まれた仕掛けを楽しんでいただくため、最後まで読んでいただけたらとても嬉しいです。この作品が、どうか心に響きますように!


青い鳥書店もどうぞよろしくお願いします🐦

こちらからは以上です。


もくじ

吃水
混沌観察
植木鉢が逆さの闇です
きらり
空洞問題
玩具TV
詩人
世界の縁側・桃
くとうてん
中十七
青空が邪魔をした
砂の城
祈りの効用
煙の形
設計図
時と響き
混沌討伐
良夜の歌
世界の縁側・金魚
吃水線
砂を掛ける


では、本編(全21篇)をお楽しみください。




吃水


ツツツと波頭に遊ぶ

吃水って言葉が好き

砂浜の
まぶしい風景
デパートでママを呼ぶ
子供みたいに
亀を待ってた
振返ると
同じように
待つ人々が座っていた

希望のように
やって来るのか

深海の
名もなき魚の口が
ぬっ
と開いた


混沌観察

(ママ)
呼ばれた気がして
行かなければ
なのだけれど
デパートを抜け
地下街にいた
誘惑の激しい
花屋の前を何度も通る
きっと
花屋しかないのだろう
きっと
それを観るしかないのだろう

(枯れてしまうのです)
白状すると
(では)と指差す
カクタスの横の
混沌
と書かれた花
中心は
悪夢の種のように渦巻いていた
そこに
わたしの混沌があった


植木鉢が逆さの闇です

小さなひとかたまりの土を
ずらずら並べ
そのひとつひとつに
悪夢の種が蒔かれました
じんじんと
お昼まで残るような悪夢です。
灰色の蛙です
真暗でありました
植木鉢が
逆さの闇です
助けが必要なのです
針が迫る
風船のようでした
ワレはふくらみます
夢はふくらむものなのです
闇いっぱいに
もう
跳ぶことなんて出来ません

大きな手が迫ります


きらり

カラフルなお菓子みたいだ
ぼくはうれしくて
ぴょんぴょん跳ねた
天井が低くて
頭から星が出た
次々と生まれて
星々となった
地球がきらりと輝いた
〈時間は頭の中にあります〉
ぼくは何かを忘れた気がした


空洞問題

〈空洞〉
には何があって
彼を苦しめるのか?
置きざりにされた過去
「そのような事実は
認められませんでした」

ならば

球体に閉じ込められ
一体どこなのか
わからなくなったのです

玩具です
カラフルな
はい
さっきまで
ありました、では
どこへ
母は、一体どこへ

球体から見える
燃えあがる恒星を
空洞に
焼き付ける
極小のワレワレの球体
許されよ
混沌!


玩具TV

真っ暗な真昼の部屋で
カーテンがゆれている
さっぱりとしたテーブルの上に
置かれたコップは
硬い水に満ちている

つけっぱなしのTV

〈砂嵐が来る〉

少年の影
猛烈な風に
チカチカあらわれる
玩具
チューインガムの味
三角の
棘の風が
うすくやわらかい
画面を超える

ゆうらりゆらり

枯れていた
コップも


詩人

目をひらくと
目の前の机の上に
二冊の本がありました

一冊は閉じられており
きらきらと輝くその本を
開いて目次をみてみると
「映る世界」
「絡まる世界」
「変わる世界」
「降る世界」
「溶ける世界」
と続く世界がありました

もう一冊は開かれていて
その上に
パーカーの万年筆が置いてありました
最初からページをめくると
白紙の海に
ブルーのインクで

「吃水…」

という言葉だけが
滲んでいます

すっかり夜でした
わたくしは詩を書く人
そう心に刻みました


世界の縁側・桃

世界さんは云いました
「世界はそれぞれ閉じられておる」
続けて
「隣の世界を覗くことは出来ない」

鈴木さんはふんふん
と云いながら
お茶を啜ります
(急須で世界さんが淹れました)
「たとえば、この羊羹
わしは漱石の羊羹として食べる
するとうまいうまい
世界さんが食べる羊羹とは
同じなようで全く違うんじゃ」

「それな」

ずず、ずと
お茶を啜り啜り
羊羹を堪能しました

庭の、
桃の花が
きれいです


くとうてん

過ちを
涙で洗い流す
夢のようなことを
思いながら今日も
洗濯機のスイッチを押す
夜中の女の
悲鳴のような音がする
壊れそうだ今日も
ぐるぐるん回る
ちっぽけな自分

地球は歪んでいる
地球は美しい

世界は寂しい
世界はそうぞうしい、

宇宙は。


中十七

「ひさしぶり」
雲ゆるゆると
月に添ふ


青空が邪魔をした

青天の霹靂、青空が、青空が邪魔をしたんです私達の、あれも、これも、それもどれも駄目になって、別に、月へ行きたいわけじゃないのよ、ハワイでもハノイでもないし、って話、なのに、あの紙も、この紙も白く破れて、愚痴のひとつやふたつ、みっつやよっつ言ったって罰は当たらないでしょう、だから、全部、この、この青空のせい、青空のせいにしました、はい、お気の毒さま、けれど、大声で叫んだって全部全部全部、ずうずう吸い込んでくれるでしょう、許してね、そんな私を、許してね、そんな日々を、ああ千言がようやく空に溶けて、あした

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