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#19 さるうさぎが生きる道

美香の言葉
8時ちょっと過ぎのころ、もう、沙留卯(さるうさ)は寝ていて、美絵1人の時間。

美絵は、美香が言った言葉が忘れられなかった。みんな同じ生命から生まれてきたのに、みんな同じなのに、なぜ、こんなに差別されるのだろう。

気がつくと、美絵は外に出て走っていた。これは、無我夢中としか言い表せようがなかった。そして、15分も走って着いた場所。それは、大きな大きな木の根本だった。それから、近くにあった花を3輪ほど摘んで、その木の根元に置いた。

「何で、なぜ私は世間から見放されるの。教えてよ、ねぇ、ねぇ、何か言ってよ、おばあさん。」

そう、おばあさんは結婚についての、たった1人(1羽)の味方だった。でも、そのことや、それまでの行いで、おばあさんが死んでしまった時、この木の根元に蹴って入れられてしまったのだ。なので今、ここでどんなに唸っても、おばあさんは言葉を返してくれないのも、当然といえば当然なのだ。その時、美絵にはこんな声が聞こえたような気がした。

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「美絵よ。強く、強く生きろ。それが、私と美絵に定められた運命なのだから。」

と。

「私、おばあさんの分も頑張るから、強く生きるからね。」

そう、美絵は心の中でつぶやいた。

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