#20 さるうさぎが生きる道
勇気を持って
そして次の日の朝。季節は紅葉の秋を過ぎ、今は冬の一番寒いころ。その日の朝起きて、沙留卯(さるうさ)の第一声は、
「おはよう、そういえば、決めたの?」
と、不安な言葉だった。その答えに、
「何言っているの?決めたじゃない」
と、お母さんは小さな嘘をつくのだった。
それから、沙留卯とお母さんは、家を出て、待ち合わせの場所に行った。そこにはやはり、沢山の兎が群がっていた。
「こんにちは、一昨日も昨日も雨でしたが、今はすっかり晴れて良かったですね。」
と市長が行った。お母さんは、
「ええ、良かったです。それより、あの件、お受けいたします。」
と言った。それを告げた瞬間、周りからは喜声が聞こえた。それで、沙留卯の「ええっ」という声が聞こえなかった。
「皆、静粛に、静粛に。」
と市長が言うと、周りは静かになった。すると、
「本当に良いのですね。二人とも」
と市長が言った。沙留卯は、「いや。」と答えようとしたが、それよりも先にお母さんが答えてしまった。
「ええ、いいです。」
と。市長は声を張り上げて言った。
「これから、この兎は兎川 兎子(うさぎがわ うさぎこ)。この…動物は、山中 沙留卯だ。大家、家を案内しなさい。皆、仲良くするのだよ。」
それから、大家が来て、
「これから、家を案内します。まぁ、引っ越しは明後日ぐらいですかね。」
と言った。
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