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#23 さるうさぎの生きる道

卯野 美奈絵(うさの みなえ)は秀才
沙留卯(さるうさ)は校門をくぐった。そして、資料室にこっそり入った。今は給食の時間なので、近くには誰もいなかった。そこには、色々な動物の資料があった、しかし、その中には、卯野 美奈絵のファイルは1つもなかった。給食の時間はあと5分でおわってしまう。

「ま。まさか…」

沙留卯は一番端にあったファイルをとった。すると、そこには美奈絵の名があった。実は、このファイルは転入校ファイルだった。そこには、

11/1 卯野 美奈絵 私立卯山小学校へ転校

と書いてあった。なぜ転校したか。それは、この学校は市立の中では名門校だったからだ。だから、5,6,7,8,9,10年生の試験をトップで合格した卯や猿は私立高へ通えるのだ。沙留卯は美奈絵が全部一回で合格していたこと、あまりにも切りの良い転校の時期、そして、転校先から考えて、そう考えたのだった。しかし、もっとびっくりすることがあった。それは、偶然としか言えないことだった。

「卯山小学校。何かひっかかる」

そう、その時は気付かなかった。思い出せなかった。

「キンコーンカンコーン…」

チャイムがなった。沙留卯は、あっまずい、と思った。部屋を出ると、急いで出口に向かった。でも、遅かった。あと少しの所で、廊下掃除の動物が来てしまったのだ。沙留卯は思い切って、そこを通りきろうとした。しかし、声をかけられてしまった。

「あなた、誰?」

と、それだけなら無視していけた。でも、次の猿の言った言葉で足が止まってしまった。

「ウッキーィ?」

そう、それは猿江(さえ)だった。そして、次の言葉が沙留卯に追い打ちをかけた。

「ウッキーなんだね。そうなんだね」

猿江が沙留卯の体を揺さぶりながら言った。猿江は興奮して、口癖も忘れていた。沙留卯は今までの気持ちを抑えて、必死に言った。

「ごめん、猿江!」

沙留卯は猿江を振り切り、ものすごい速さで靴をはき、走っていった。

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