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#24 さるうさぎの生きる道

信じるということ
沙留卯(さるうさ)は家に戻った。そして悩んだ。猿江(さえ)はどうしたのか、私のこと、今どう思っていたのか。沙留卯が今一番会いたくなかった動物、それは、猿江だったのだ。天はなんて意地悪なことをするのか。どうすれば良いのか。…でも、でも私信じよう。信じなければ。どんなことがあっても、信じなければ。だった、私達、親友だから、お願い猿江。


「ウッキー。」

しかしその時には、もうウッキーはいなかった。猿江はかなりき声を出して、悲鳴を叫んだ。

「今のこと、先生に言おう」

「やめてっ!」

とっさに猿江は友達を止めた。その声はさっきより増していた。

「何で、何でよ、花山さん」

「だって、この事を言ったら、ウッキーもっと責められる。今、幸せな生活を送っている。そこへまた責められたら、あまりにもかわいそうだよ。不公平すぎるよ。」

猿江は言った。

「幸せな生活なんて送っているはずないじゃない!」

かなきり声だった。その声は意外にも、うさだった。外の兎が

「それは、秘密のことじゃないの。」

と言った。

「お父さんもなくして、あなたみたいな親友もなくしているのよ!おまけにだまされているのよ!」

とうさは言った。そして、またうさは口を空けた。でも、その声は、もう何も力もないような声だった。

「やめましょうよ、もう…。」

すると、そこにいた二羽の兎が、

「ねぇ、熱でもあるの、うさ?」

「あ、花山さん。熱があって変なこといっちゃたみたい。今のこと、全部忘れてね。」

と言った。それこそが変だということが、勘の悪い猿江には分からなかった。何も疑わずに、それに従ったのだった。

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