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#21 さるうさぎの生きる道

新しい家
大家が案内してくれた家は、新しくも古くもない中古の家だった。でも、便利な場所にあり、市役所なども近くにあった。その家は、3階建てで、1階の半分がロビーとなっていて、そこにはスポーツ新聞や300冊くらいの本やトイレ・非常用のお風呂があった。そして。1つの階につき、8つの部屋があった。

「あなた方の住む家は、ここ、307号室です。家賃は市が払ってくれますので。中、見てみます?」

と言った。お母さんは、

「はい、お願いします。」

と言った。中は、思っていたより充実していた。

「この部屋、沙留卯(さるうさ)の部屋にしていいよ。」

と、お母さんが言った。沙留卯は、

「ほ、本当に。」

と言った。そう、沙留卯は、生まれてこのかた自分の部屋をもったことがなかったのだ。

「ええ、本当よ。そして、1ヶ月に一度、150A※のお小遣いをあげるわ。」

とお母さんは言った。

「ありがとう、私、頑張って勉強するからね」

と沙留卯は言った。


※Aとはお金の単位。

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