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#8 さるうさぎの生きる道

島上 宇幸姫(しまかみ うさひめ)の家
あの新聞を見てから2匹は「嘘だよね。夢でも見ているんだよね。」と言いあっていたが、それは夢でもなく、現実と他ならないことだった。

「ねえ、ずっと泣いていても仕方がないわ。島上さんのところへ行きましょう。あそこは、大金持ちで何をされるか分からないけれど、このままここにいるほうが、ずっと惨めに思えるの。」

お母さんが言った。

「うん、私も賛成だよ。でもね、これだけは誓ってほしいの。」

と沙留卯(さるうさ)がいうと、お母さんは”えっ、何?”という顔で沙留卯を見つめた。

「お父さんは絶対悪いことなんてしていない。って、ずっと信じることを誓ってくれる?」

と沙留卯が言うと、お母さんは、

「ええ、もちろんよ。それでは島上さんのところへ行きましょう。」

と言った。そして、沙留卯たちは島上さんの家へ行った。島上さんの家に着くと、お母さんは、

「すみません、お話がしたいのですけども。」

すると、島上家に仕えているうさぎが出てきた。

「どちら様ですか?」

とうさぎが言ったので、「山中と申します。」と言おうとすると、山中の「や」と言っただけで、仕えているうさぎは家に飛び込み、大声で

「お嬢様 誘拐犯の仲間が、や、やって来ました。」

と言うと、これまた大声で

「山中の仲間どもが来ただと。」

「ええ、さようでございます。」

「いったい、何匹だ、女か男か。」

「2匹です。2匹ともメスだったようです。」

「大変なことになったみたいですねぇ。」

「こら、こんなに大きな声を出しては、敵に聞こえるではないか、声を慎まなければならぬ。」

こんな声が聞こえてきた。しかし、この後は警戒したらしく、もにゃもにゃした声しか聞こえてこなかった。

「そろそろ勝負時だね。」

お母さんがぽつりと言った。

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