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SURFACEはB’zのパクリ

世界は依然として目まぐるしい新陳代謝を繰り返していた。地面の隆起、空の変色、海の腐敗など、人類がこれまで一切の疑いを持たず依存してきたあらゆる秩序・通念は尽く破壊され、今この世界で「SURFACEはB’zのパクリ」という言説を唱える者は私ただ一人となっていた。かつて夕方の再放送枠で覇権を振るっていた「ショムニ」や「まもって守護月天!」のOP曲を知る者達はすでにその命を地に返し、SURFACEとB’zのメンバーも恐らくもうこの世にはいなかった。そもそも音楽というものがそれを聴く者達の不在により消滅し、世界にはまったく意味のない音としての音だけが鳴り響いていた。全てが無意味になった今際の際に、恋人は私へ最後の言葉を求めた。しかし私はそれに「SURFACEは歌い方と歌詞の感じが完全にB’z」と応えることしか出来なかった。彼女の瞼がゆっくりと閉じられるその時、二つの瞳が一体何を映していたのかはわからない。しかし最後の一瞬、僅かな唇の動きと吐息だけで残した彼女の言葉は私の脳裏に焼き付いて離れない。
「B'zはエアロスミスのパクリ」
眼前に広がる荒野では、枯れた樹が強風に煽られしなる音、倒壊したビルの破片が転がる音、有毒な何かが煙を上げて燃え盛る音などが、そこかしこで無意味に鳴っている。私は、エアロスミスはアルマゲドンの有名なやつしか知らない。

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