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おじいさんゲーム

おじいさんゲームという遊びを思いつきました。法や倫理に抵触するためルールなどの詳細についてはここでは書けませんが、例えば地下鉄に揺られながら目的地に運ばれるだけの虚無な時間、ドア上部に設置されたモニターから垂れ流されるCMも一通り見終わり、仕方なく、何のために付いているのかわからない車窓から外の闇をぼんやりと眺める、そういう日常における真空のような瞬間にふと、もう逮捕されてもいいから一刻も早くこの遊びを誰かに共有したいという思いに駆られます。先日など、それこそ電車内でうってつけのおじいさんに遭遇し(おじいさんゲームには実際のおじいさんの存在が必要不可欠になります)、その、足腰の弱さを殊更にアピールする姿勢で満員になった座席を睥睨する姿と、その視線を徹底的に無視してツムツムや寝たふりをキメる乗客たちに、私の血は沸きました。これ以上ないほどにゲームの条件が揃っていたのです。堪えることができず私は、スマホの画面を執拗に指で摩擦し続ける中年女性の長髪を掴んで持ち上げ、同じく、その横でうつむいて目を閉じている若い男もその首の関節構造を無視して強引に頭を引っ張り上げた後、「これから私の考えたゲームに参加してもらいます!」と、完全顔出し普段着ver.のデスゲームの主催者みたいな感じで叫びました。しかしこちらがどう見ても丸腰のためか、二人は普通に迷惑そうな顔で私の手を振り払い、そそくさと席を移動、周りの乗客らもこちらから顔を背け手元のスマホに没頭・寝たふりをするなど当事者意識のかけらもなく、まともな反応といえば唯一、恐らく他人との喧嘩が常態化している小太りのおじさんから「お前うるせえよ!」と素朴な怒声をぶつけられたのみでした。そして一応その後3駅ほどは車内に緊張感が満ちていましたが、それも乗客の入れ替わりとともに徐々に風化し、私が降車する頃には先程の騒然を知る者は一人もいなくなっていました。
どんなに危険な状況になっても具体的な行動を起こさず現状を維持しようとするのは、非常時における人間の習性だと聞いたことがあります。それは急に髪を掴んでくるやばい奴と同乗していたとしても同様で、人々は無関心で居続けることが自らの身の安全補償に繋がると本気で信じているのです。私はますますおじいさんゲームを広める必要があると感じました。人間達をこの保守的な本能から解き放たなくてはいけません。おじいさんゲームには人類の未来への可能性が込められているのです。ぜひ高評価をお願いします!

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ブンブン丸 0点
何を評価すればいいのかわからない。

ローリング内沢 0点
クロスレビューは個人が送ってきた怪文書を読むコーナーではありません。

乱舞吉田 0点
というか上はこれを通すな。
レビューさせるな。

浜村通信 10点
ゲームの可能性を大きく広げる充実の内容だった。ベイグラントストーリー以来の最高傑作。文章をただ読ませるという手法で、サウンドノベルの永久の課題であった「分岐を選ぶ手間」をクリアーしている点も◎。あとこれからこの雑誌は今後こういう感じでやっていくので、異を唱える者は私が考えた独自の刑罰に処します。よろしくお願いします。

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