2021年5月某日
2021年5月某日のことです。その日は思い切り週番をすっぽかしたので、なりふり構わず何時間も後悔をしました。自分でも呆れるほどに後悔をしました。何かの集まりをすっぽかすのが久々だったからか。
週番のメンバーに、少しでも私の誠意が伝わって欲しくて、トイレの個室で謝罪の言葉など考えて、そのあと謝りに行きました。とてつもなく、大きな声で謝りました。少しでも私の誠意が伝わっていたなら良いです。
当時、信用を失うというのは、私が最も恐れていたことでした。それでも失ったものを取り返したい、というか、なんとなくでも取り返せたような気持ちになりたくて、放課後に何倍もの仕事をしました。失ったものを取り返すこと。実際には無理でも、ちっぽけな達成感が、絶望からちょっとだけ立ち上がるきっかけにもなるのです。
高3だったのですが、大学に受かるための勉強を始めたのは、それからしばらくしてからのことでした。よくもまあそんなに勉強をするようになりましたと、大学に受かったときはつくづく思ったものです。
ちなみに、小学生の時は、滑り台を滑りたくなかったし、壁に爪で相合傘を書いていました。黒板に落書きもしました。人生を楽しみ過ぎていたので、授業には行かなかったし、他クラスの給食を勝手に盗んで食べたりしました。
悪事、例えば、校庭に植えてあるせっかくの植物を摘みとって、主婦ごっこをしたことがあります。私が豪華な食卓を用意して、パパの帰りを待っていたのに、途中で上級生が、きれいなワンピースを着た女が来て注意されました。そいつと話したのはその一度きりだったんですが、未だに顔をよく覚えています。何か余計な事をしそうな顔だった。野暮ったい眉毛で。
子供だろうと、大人だろうと、他人に説教を垂れている奴には何も分からない。渾身の嘘がバレて怒られる悔しさ。盗んで食べる揚げパンの甘さ。学校の先生を馬鹿にしてやったときの、たまらない舌の痺れ。いや、分からせない。分かってたまるか。あの後お前はお家に帰って、ママにただいまを言って、いけないことをやってる下級生を注意しましたと自慢して、ママの焼いたマフィンを食べて、計算ドリルをやって、丁寧な字もちゃんと書いて、パパの帰りを待ってたに決まってる。お前、分かっているか。わからないだろうな、お前みたいなやつには。知る由もない。あれから10年経ったあの日、2021年5月某日、私が授業中にトイレの個室で、ココア片手に惨めな謝罪文を考えてたことも。
本当に惨めなことで、そんなこんなで、親や先生に酷い叱られ方をしました。自分より頭の良い友達には一層蔑ろにされました。それでも私に出来ないことなんて何にもない、と思ってきました。いや、本当の私は自分の長所すらも愛せない奴なのかもしれないが、今はまだ、その事に気づかないふりをするしかないのです。
なんとなく、漠然としており、文字に起こしたこともない気持ち。きっと私の中には、自分のことが嫌いだという気持ちがありました。それも中高6年間ずっと。
周りより駄目な部分が多いから、とかじゃなくて、そもそも絶対的に自分のことが嫌すぎるのです。だけど、先生に「私はこのフェリスという学校から疎外されていませんか」って声を震わせて聞いたら、「あなたは周りより少し大人になるのが遅かっただけ」って、笑ってくれました。
だからね。先生!全部が大丈夫だったよ。
その日に渡したお菓子と手紙、それが、先生への最後のプレゼントでした。
年が明けたあとは、受験がありました。色々あって、そのあと大学生になりました。
大学生の自分と同じように、不器用で必死だったかつての自分はどうでしょうか。フェリスに入学したのは昔のこと過ぎるので、あまり覚えていません。心理学では抑圧というそうです。
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