夢日記2022


俺は学校帰りに、小学校の同級生の男女3人と出くわした。俺がその昔そこまで仲良くなかった彼等は、見た目こそ小学生のままだったが、とにかくおだやかな性格の一般的な高校生に成長しているようだった。小学校の時はそんなことしようとも思わなかったのに、俺達は他愛も無い話をしながら日の暮れる通学路を一緒に帰った。駅に向かって歩き続けて1時間くらい経っただろうか、気づいたら俺達は自分の知っている道ではなく、荒れ果てた山道を歩いていた。一体どこに向かっているんだろうと俺は思ったが、不安な気持ちよりも彼らと一緒にいたいという気持ちのほうが勝った。みるみるうちに日は傾いて、空には澄みきった群青が拡がっていった。それでも俺は楽しかった。彼らもきっと楽しかったと思う。寒くなったので俺達は肩をくっつけて歩きながら語り合った。だけどそのうち、多分害はないだろうけど、捕まったら面倒くさそうな、そんな得体のしれない何者かが、俺たちの後を追っていることに気が付いた。多分大人だったと思う。俺達はその誰かから逃げるべく、苔の生えた岩場を乗り越え、生い茂る草をかき分け、ぬかるんだ山道をがむしゃらに進んだ。そのうち友達の一人から荷物を減らせと言われたので、俺は持っていた教科書を半分くらい山道に置いていった。しっかり記名されていたから後ろめたい気持ちだった。やがて日はすっかり暮れて、あたりは暗闇に包まれた。けれど俺達は今更引き返すつもりも無かった。帰りたいとは誰も思っていなかった。暗すぎて松明を燃やしたりもした。昔林間学校でやったキャンプファイヤーのように暖かな火が、若すぎる思い出と俺達の頬を照らしていた。その時に気づいた。俺はあまりにも難しい勉強をし過ぎたので、本当は山道なんか歩けないのだ。こっちこっちと友達に案内されるがままに、俺は必死で歩き続けた。俺を見捨ててはくれない彼らに、今度こそ忠実についていこうと思った。


やがて俺達は暗い洞窟の先に、ぽつんと光る宿屋の建物を発見した。宿屋に入れば、どうにかなるだろうと皆がなんとなく分かっていた。俺達は宿屋の人間に見つからないように、息を潜めて裏口から階段を登った。途中で着物を着た給仕とすれ違って息を呑んだが、何も言われることはなかった。上まで登り切ると、木で組まれた足場に辿り着いた。外は凍てつく寒さだったが、暖かな窓の内側ではしゃぶしゃぶをしている宿屋の客がいた。俺は彼らを見ながら、今ここにいることをいつ親にLINEしようかと思っていた。


ふと俺は空を見上げて、そして歓声を上げた。空は完全に黒く澄み切って、見たことも無いような満天の星空だったのだ。知らない場所に訪れる夜のよそよそしさ、冷酷さ、恐ろしさ、人一倍臆病な俺でさえもそれを感じないほどの、本当に見たことのない量の星が静かに輝いていたのだ。共にこの場所に辿り着いた俺の仲間のほうを振り返ると、なぜか全員がしゃがみこんで、何かを必死にメモしている。叶えたい将来の夢でも書いているのだろうか。俺も彼らと同じようなことがしたくて紙とペンを手にしたが、そこに俺の座る場所はなかった。そればかりか足場も不安定で、素手で持ち歩いていた俺の参考書類が木の隙間を割ってどんどん下に落ちてしまっていた。それらを回収しようと隙間に手を伸ばしたら、共通テストに合格しましたという謎の文言が書いてある、やがて誰かへの手紙となるであろう1枚の便箋が目に入った。驚いたことに、それは明らかに俺の筆跡だった。そういえば俺は共通テストをもう受けたんだっけ。考え込んだ瞬間に足が滑り、俺はバランスを崩して木の足場に顔面から衝突しそうになった。

そこではっと目が覚めた。




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