塩漬について考える。
はじめてCreva ? を使ってみた。 正直使いかたがよくわからないが、いろいろ楽しそうな要素がたくさんあるのが面白かった。 特にフォント。
フォントでPCが重くなると言う人もいるらしいので、これだけのフォントをPCに負担をかけずに使えると言うのはありがたい。 そのうち毛筆使おう。
生ハムを作るにあたって最初に悩むのが塩の量。
一般的な生ハムの塩分量って果たしてどれくらいだ? と思ってぐるぐる先生に訊いてみたら、100グラム当たり2.2gだって。2パーセントか。
しょっぱいなと思ったけれど、数字としてはそんなに高くないんだね。
ちなみに汁物だと0.6% 漬物で3%が目安なんだそう。ふむふむ。じゃあ、数字だけで見るなら浅漬けくらいか。
じゃあ、その数字を基に考えてみるか。 電卓を用意して。
平田屋さんでいつも買う時がだいたい10キロ。10キロの肉の2%というと、えーと・・・ ・・・200グラムだって。 ふーん。
200グラムでいいのか・・・。 って思うと失敗するんだよな。
当たり前の話だけれど、もともと生ハムみたいな保存食は保存のために塩漬しているのであり、そのためには全体に塩を馴染ませる必要があるわけだ。
表面だけしょっぱくて、中がそのまま、だと保存に適していない状態になるのはまあ、素人考えでも想像がつく。 さらにドリップとして水分が流れていくのだから、その時に塩分を伴って流れていく以上、200グラムでは足りるわけがない。 当然、それ以上を使うということになる。
表面から奥にかけ、水分を奪い、塩分を浸透させていく。 そのために内部にまで浸透する時間。と言うのを想定しているのだが、これが造り手によって実にまちまち。 何キロを用意して、と言う人もいれば全体を覆う程度、と言う人。 塩の桶の中に突っ込むと言う人もいるのだがそれだと%なんてあったもんじゃない(一度試してみたい)。
なので、自分で知ることの出来た範囲でその量と時間、そして塩抜き工程について書いておく。
諸先輩方のメソッド。
日本の生ハムの父、尾島さんを特集した番組で、その作業の一部を拝見することが出来た。
粗塩と言うよりは大きい、岩塩と言うには小さいくらいの塩を収めた槽と言うべき設備の中に入れて10日と言っていた。
10日の塩漬のあと、15分間水に浸け、脱塩工程を終わる。
短すぎないか、早すぎないかと自分なんかは思うが、塩を抜かないのであれば、その分少ない量と期間で塩漬すると言うのは、なるほど道理なのかもしれない。
神谷シェフのレシピではもも肉から骨を外し、その半量の塩を使うとある。
揉み込む作業にも塩を使うので、その分も合わせて10キロの肉に対して5キロを目安とされている。
ミートラッパーと呼ばれる布にくるみ、塩漬期間は冷蔵庫に入れて一か月。
このあと1日ほど流水にかけて脱塩。 全体の塩分量を0.8-1.0%の塩分量に収めるのだそう。 0.8%だと少なすぎないかと不安になるが、このあと時間をかけてゆっくりと水分を飛ばしていくので、最終重量に対しての塩分はちょうどいいくらいに収まるのだろう。
桜井シェフのレシピでは、塩漬工程を二度に分け、前漬けと呼ばれる工程で硝石、カソナードを含んだ280gの塩を擦り込みラップでくるみ一週間寝かせ、本漬けと呼ばれる工程で、『適量の』塩を擦り込み、またラップにくるみ2週間寝かせる。 また出た適量。
桜井シェフのレシピの特徴はこの2週間の本漬けのあと、休憩と呼ばれる工程を持つ。冷蔵庫に吊るして2週間。この工程で塩を全体に行き渡らせる。
その後、一晩溜め水につけ、その後流水で塩を抜く。 脱塩時間は合計で24時間ほど。 大阪の人は8時間溜め水で、その後16時間を流水で塩抜きしていた。
別の方の場合だと(ぼかして書いておられ、誰とは書いてなかったが多分秋田の有名な方だと思う)、血を抜く、塩を擦り込む。→一週間寝かせる。 洗う。これを3セット。 都合4週間塩漬させた後、溜め水で数日塩を抜き乾燥工程、その後で熟成に入るのだそう。ちなみに塩の量は未記載。
この方法の素敵な所は表面に発生するぬめりを都度落とせること、都度血抜きが出来、一度や二度では絞り切れなかった血を出すことが出来るのだろうなと言う点。 ただし、塩分が入り、水分が抜け肉全体が固くなっていく過程の中で、どれ程絞り出せるのだろうかと言うと少し疑問もある。
尾島さんの動画でも塩抜きのあとで血を抜く動作があった。これはイタリアの作り方を紹介する動画にもあったので、心配しなくてもいいのかも。実際自分の時にも吊った時に血が出て来たから、そういうものなのかも知れない。
何回も塩をして洗うを繰り返すと、塩の消費が激しいような気もする。 程度を考え、溶け切る量で行っているのか、塊の塩で行っているのか、塩の消費に糸目をつけないからなのか、その辺りはよくわからない。
塩漬期間もまちまちだ。
前述の尾島さんは10日間と紹介されていた。
神谷シェフは1か月。 桜井シェフは休憩を含めると塩抜きまで5週間。
別の方も4週間と言ったところ。
イタリアのハムの製作動画を見たことがあるが、こちらは秋田の方と同様に2度に分けて、はじめ4-7日、洗浄、血ぬき、つづいて7-10日の塩漬をされていた。 都合2週間前後と言ったところか。 2度目の洗浄ももちろん行う。
動画で不思議だったのは塩の量が少ないせいもあるのか、表面の塩を洗っただけで塩抜きはしていないような様子だったこと。 まぁ、企業秘密のため非公開とか言われてしまえばそうなのかもしれないが、実際現地で召し上がった方の話によればとてもしょっぱくてびっくりした、なんて言葉もあるから本当に洗浄だけに済ませ、塩抜きはしていないのかも。 まぁ、保存食だしな。
ちなみに群馬の育風堂さんは完全に非公開。 企業秘密だもん、おいそれとオープンにはできないわな。むしろ他の諸先輩方がそんなにオープンにされていいのかと心配にすらなる。
そもそも肉に浸み込む量と、時間とは?
平田屋さんのご主人に、目安としての話だが、一日1センチの厚さで塩が浸透していくと教えてもらった。上からはそうだろうけれど下からは違うだろうな… 上ほど塩はつけられないし… なので、肉の厚さ=日数と考えるのが良いのかもしれない。
また別の話では1キロあたり1日とも、1キロ当たり40時間とも紹介されていた。
一本の豚もも肉がだいたい10キロ前後なので、㌔1日であれば10日、㌔40時間で考えれば17日と言ったところだろうか。そう考えると結構短い。あるいは日本で製作されている方に多い1か月前後の時間は長めとみるべきなのだろうか。
自分が教えてもらったところでは、塩漬期間は40日だった。すぐにソースを見つけられなかったのだが、以前大阪の食品衛生に携わる機関のHPで40日と明記されていたのを覚えている。 自分に教えてくださった方をはじめ多くの方は、恐らくはその基準を基にしているのだろう。
おそらくは尾島さんはその基準が明確化される前に確立されたメソッドに基づいての日数なのだろう。 父だしな。 日本の生ハムの。
もちろん重量に対して1%の塩の量、10%の塩の量、50%の…としていったら、塩の量に伴い浸漬する塩分量も変わってくるだろうし、浸透の度合いだって変わってくるはずだ。 そう考えると、一口に『何%の塩を何日』なんていう事は出来ない筈で、本場では塩を振る専門職があるのだから当然と言えば当然なんだろう。
結局何が言いたいかと言えば、経験と勘、それが総てということになる。
おいおい、ここまで引っ張ってそれかよと思うが、そうなんだから仕方がない。 実際、仕事にしろスポーツにしろ、やってみて、経験を積まないとわからない事ばかりだ。 生ハム造りだってそうなんだ。 まずはやってみろ。 そうとしか言えない。 自分だって始めたばかりなんだ、偉そうなこと言ってすみません。
とは言え、その目的を簡潔に追及すると、『塩を浸透させる(保存のため)』『塩を均等にする(食べやすくするため)』に集約できる。
つまり、保存をしたいが美味しくも食べたい。という当然の目的になる。
そのため、塩抜きと言う工程がとても重要になる。 抜きすぎてもダメ、入り過ぎてもダメ。
入る量を調節するより、出る量で調節するほうが作業しやすい。 これは自分の経験からも理解できる。 加熱ハムを作っていた時、加熱前にとりあえず味見して、若干薄いかなーくらいまで引くと、仕上がりが上手にできていた。
料理は逆に、足しやすく引きにくい。 薄めるとなると水を足し全体のバランスが水っぽくなる。
保存食は逆で、足しにくく引きやすい。 足りなければ腐るし、食べられなくなるのだから無理もない。
はじめ、過剰までの塩を与え、そこから適量まで抜いていく。
そうする事で、適切な塩分に個々の肉を調整していく。
塩漬時間が短ければ、浸水時間も短い。(ただし塩分の見極め大事)
塩漬期間が長ければ、浸漬時間も長い。(ただし塩抜きの見極め大事)
そうする事で、目標とする塩分濃度を肉に留め、保存と味わいを持たせることが出来るんだろうな。
ちなみに自分は、塩漬40日。塩抜きは流水で24時間でやってます。
来年からは少しづつ変えていくつもり。
今回はそんな感じです。 お疲れ様でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?