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地球ってすごいわ

今まではふらっと色んなところに行ってへらへら楽しみながら写真を撮ったり撮らなかったりしていたのだけど、仕事の都合でなかなか県外に出ることも難しくなってしまって、県外に行く機会がある時は何をしようかを前よりもちょっとだけ真剣に考えてみるようになった。

行ってみたいな〜と思ったことのある場所はいくつだってあるはずなのに、だいたい決まってこういう時に思い浮かばないのはなぜなのだろう。
呪いの類か何か?この現象に名前をつけたい。きっともうある。

その日は夜に新宿でジンギスカンの予定。なので昼間の時間は自由がきく。事前に考えたかったけど時間的にも脳みそ的にもまったくその余裕がなかった。

当日までに思いついていなくても当日何か思いついた時に動けるようにできるだけ時間的余裕を持って東京入りするようにしている。考えるのは東京に向かう電車の中でもいい。

どうしてだったかはまったく思い出せないけど、中央線沿いの景色を眺めている時に不意に「国立科学博物館」の7文字が脳裏を横切ったのをぼくは逃さなかった。
たぶん直近に奇石博物館に行っていたのもあるんだろうな、と今になって思う。

思いついたことが奇跡すぎて時間的余裕をまったく加味していないまま目的地をそこに決めた。絶対にまわりきれないだろうなと思いつつ、それでも気持ちはもう科学博物館をロックオンしてしまっていた。

昼過ぎに上野駅に着いた。駅構内にたくさん動物が散りばめられているので楽しい。動物園に心がなびきそうになるけど、きっと来園者も多い。今日は動かない動物たちをみにいく。

科博では企画展をやっていたけど、なんとなく常設展を見ないまま企画展に行くのは気が引けたのとそこそこ混んでいるみたいだったので企画展入り口を横目に常設展の入り口へ。
企画展の方が動物園感あったけれど。

前情報皆無で乗り込んだので日本館と地球館で分かれていることにまずうろたえる。日本より地球の方がどう考えても先輩だと思ったので今回は地球館へ。

万が一時間が余るようなことがあったとしたならば日本館もまわることにした。

10分後にはそれも無理だということを確信する。この時のぼくは回りきれないだろうなと思っていたとはいえ、科学博物館の情報量を見くびっていた。
いや、見すらしてない、くびっていた。くびっていたのだ。

いまだにどの順路でまわるのが正解だったのかわからないけど、一応自分の中で納得できたルートを立ててそれをなぞるようにまわったつもりではある。
撮ってきた写真を見返してみてもまったく何に納得してこのルートを辿ったのかわからないのだけど。

右を向いても左を向いても、上も下も何かしらの展示がされてる。
剥製やレプリカを眺めているだけでもかなりの情報量なのだけど、それらほぼほぼ全てに解説がついている。

常設展も結構な人だかりで、一つひとつの解説を熟読することはままならなかった。人の波に逆らえないまま流されていく。

そもそも最初の方に書いたように時間の制限があるなかですべてを堪能できるなんて思ってもいなかったけど、一歩進めば情報が100現れるといった具合で1日どころか1週間でも足りないのでは?と思ってしまう。
ほんとうに舐めてました。パない。

その時から「今回はもうオブジェ的なものをみるという楽しみ方をする」にシフトした。

どうしても気になるものは解説も読むスタンスでいこうと決めたのだけど、展示の仕方が絶妙でどうしても気にならせるようなものばかりだった。
もしぼくがアッコさんだったら全部に「この方は何をされてた方なの?」と訊いてしまってるとおもう。

ちょっとだけ申し訳ないと思いながらもさらっと展示を眺めて次々にまわっていく。

いくんだけど、爆速で展示を巡っているつもりなのにまったく進んでいない。どうしても足を止めてゆっくり見たいと思ってしまう。

特に3階のたくさんの動物の剥製が並ぶフロアは圧巻で、全ての動物たちと目を合わせてみたいと思ったのだけど、周りをぐるっとまわるだけで精一杯だった。

ものすごい速さで地球館のうわべだけをなでつつ、それでもしっかりちゃっかりぼくらの歴史や生命のしくみに感動しながらだいたいひと通りまわりきったところで時計を見たら15時をまわっていた。

そりゃ歴史がこれだけあるのだから、それくらい時間が必要なことくらいわかるのだけど。
地球ってすごいわ。

16時までには新宿にいたい。となると到底日本館を回るどころか足を踏み入れるさえ難しい。
それでもせっかくだから、入り口だけだから、と好奇心だけを筆頭に歩みを進めた。

一歩踏み入れた瞬間に我に帰る。
本能がこれは機を改めた方がいいぞと告げる。

地球館を抜け出した時は「平日に休みを取ってまた来よう」と思っていたのに、日本館に入った途端に「有給全消化説あるな」と正体不明の闘志を燃やしていた。本当に何の闘志?

かならず再訪することを誓って(誰に?)国立科学博物館をあとにした。

上野公園では韓国フードフェス的なのが催されていて、所狭しと美味しそうな露店が並んでいた。
どう見ても韓国じゃないフードもいくつか並んでいたけど。まあアジアっちゃアジアか。ダイバーシティ。

目標通り16時までに新宿入り、集合時間まで茶をしばいた。
茶をしばくって表現は一体なんだ。口当たりが良くて多用してしまうけど、しばくと聞くと僕らの年代であればベランダで布団をしばきながら「しばくぞ!」と言っていたおばさんの顔が思い浮かぶ。きっと。

新宿のジンギスカン、めちゃくちゃ美味しかった。
あれだけの剥製と目を合わせたあとに本当に美味しくいただけるのだろうかという一抹の不安もパッと消えた。抱いていたことすらも忘れた。

あまりジンギスをカンした経験が多くないのだけど、それでもこれまでのジンギス観がひっくり返るほどの衝撃の美味さ。
まるで革命。ジンギス革命。シン・ギスカン。

ブロックでいったジンギスカンも、ハンバーグになったジンギスカンも全部をジンギスカンと呼んでいいのかはわからないけど、そんなことどうでもよくなっちゃうくらい、なにしろ美味しくて最高だった。
地球ってすごいわ。

酔いがさめつつある中で、わちゃわちゃ話をしながら歩いて駅まで行くのが好き。
その時間の楽しさがそのままその日の楽しさを表しているように思う。
大人の休日倶楽部ってきっとこういうことなんだろうな。絶対本来の使い方と違うだろうけど。

とっても楽しくておいしかった。大人になってよかったな。
また行きましょう。

では、また。

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