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第26回定期に寄せて

W・A・モーツァルト 「フィガロの結婚」より序曲
高い人気を誇るオペラ「フィガロの結婚」より、モーツァルトの膨大な作品の中でも特に人気のある序曲を演奏します。


序曲 Presto(ニ長調、2/2拍子 アラ・ブレーヴェ)

ピアニッシモの合奏で開始し、すぐに派手に盛り上がります。演奏時間は5分以内と短いながらも、軽快な曲調の中に昼ドラ的ドタバタコメディであるオペラのあらすじが凝縮された作品です。(演奏時間:4分程度)

F・J・ハイドン 交響曲第104番 ニ長調
「交響曲」というクラシック音楽における一大ジャンルを完成させたハイドンの交響曲で特に人気の高い第104番を演奏します。本作はイギリスはロンドン滞在中に作曲されたことから「ロンドン」の愛称で親しまれています。「交響曲の父」ハイドンの、型にとらわれない、観客を飽きさせない工夫がふんだんに盛り込まれています。本日は第4楽章フィナーレを演奏します。


4.Finale Spiritoso(ニ長調、2/2アラ・ブレーヴェ)

バグパイプ的なチェロとホルンの短い前奏に、バイオリンが民謡風の主題を元気に演奏します。ピアノで主題が演奏されたかと思えば次の瞬間フォルテになるところや、登場するたびに変化するメロディ、突然短調になるなど、ハイドン流の遊び心や工夫が随所に散りばめられています。最後はニ長調で華々しく幕を閉じます。(演奏時間:7分程度)

追記:F・メンデルスゾーン・ヘンゼル 弦楽四重奏 変ホ長調
あの天才作曲家には同じく天賦の才を持った姉がいました。その才能は人生を通してほとんど家の中で完結してしまい、残念ながらあまり大きな曲も残しておらず演奏機会はごくわずかです。しかし、弟フェリックスに勝るとも劣らない彼女の作品には、形式に縛られない自由な発想や円熟期のロマン派を先取りする極上の色彩、そして演奏技術の高さを感じる技巧的な工夫が随所に散りばめられています。本日の幕間コンサートでは現存するファニー唯一の弦楽四重奏から3楽章ロマンスを演奏します。


3.Romanza. Molto cantabile(変ロ長調、2/2アラ・ブレーヴェ)
憂い、もしくは悩みを帯びた弱奏で開始します。4小節のフレーズを2回示すと、バイオリンとビオラが掛け合う明るい雰囲気の曲調に、さらには幸福なハ長調が2人の逢瀬を彩ります。しかし幸せな時間は長くは続かず、転調を繰り返しながら曲調は激しくなっていき……再現部、前半では掛け合いに使用されたテーマは一人でもの悲しく演奏され、彼/彼女がそれぞれの人生を歩んでいったことを予感させながら楽章を終えます。

L・v・ベートーベン 交響曲第7番 イ長調
ベートーベンの交響曲の中でもドラマで使用されるなど特に人気の高い本作は1812年に完成しました。第5番のミニマルミュージック的な試みや、第6番「田園」での自然賛美を経たベートーベンが新たに手掛けたのは原点回帰の正統派交響曲です。それぞれの楽章には、各曲の中で非常に特徴的なリズムが何度も何度も何度も何度も何度も何度も執拗に同じ音形が狂ったように繰り返されます。それだけに、各楽章のキャラクターが非常に際立った作品です。全曲を通して聴いてみると何かに勝利したように感じるベートーベン的な曲調や、県大オケとして最後の演奏会となった第23回の定期演奏会では、第7番と対になる第8番を演奏したこともあり、今年のメインプログラムとしてこの曲を演奏できることは望外の喜びです。(全曲の演奏時間:44分程度)


1.Poco sostenuto(イ長調、4/4) - Vivace(イ長調、6/8)

序奏とそれに続く主部で構成されています。序奏と主部はフルートとバイオリンの掛け合いによって接続されていて明確に切れるわけではありませんが、フルートがリズミカルに歌いだしたところで主部が開始します。


1-1.序奏 Poco sostenuto

オーケストラ全体の斉奏で華々しく開始しますが、まずはオーボエのメロディにご注目ください。このメロディが各楽器に受け継がれ、序奏を構成します。だんだん静かに落ち着いていき、最後はフルートとバイオリンだけで掛け合って序奏を終えます。


1-2.主部 Vivace

ターータターというリズムが全体を支配します。フェルマータによる一時停止の後、音階を伴って勇ましく主題を演奏します。中盤ではターータターを変化させたタッッタターのリズムが攻撃的に演奏され、そこに至る過程やその後も含めて見どころです。最後はオーケストラの斉奏で華々しく曲を終えます。(演奏時間は15分程度) 

追記:コーダで中低弦に初出の音形は2楽章冒頭の後半フレーズを予感させているのではないかと思いましたが、あんまり誰も言ってなさそう。

2.Allegretto(イ短調、2/4)

騒がしい明るい第1楽章とはうってかわって短調の葬送行進曲です。この楽章は初演の時からとりわけ人気が高く、ワーグナーは「不滅のアレグレット」と評しました。ピアノで始まりますが、力のある旋律は楽器が増えるたびに熱を増していき、フォルテッシモに至ります。途中、優美な旋律が木管楽器によって印象的に演奏されるところにも注目です。(演奏時間:10分程度)


3.Presto, assai meno presto(スケルツォはへ長調、トリオはニ長調、3/4)

とにかく繰返しの多い第7番の中でも特に繰返しの多さが常軌を逸しているのがこの第3楽章です。クラシックでは基本的に8小節が1かたまりで作曲されますが、この楽章では勇ましい序奏や様子を伺うような余分な小節を挟んでいるため変な節回しになっています。中には7小節で次に進んでしまうところも…?スケルツォとはイタリア語でふざけるという意味ですが、その名の通りの楽章だと思います。ベートーベンの愉快なおふざけにお付き合いください。(演奏時間:9分程度)


4.Allegro con brio(イ長調、2/4)

どことなく田舎を感じる熱狂的なフィナーレはもはやロックンロール!この熱狂に説明は無粋でしょう。残暑を吹き飛ばすエネルギッシュな演奏をお楽しみください!(演奏時間:10分程度)

追記:誌面の都合上大変雑な紹介になってしまいました。ホルンに多大な負担を強いたり最後の最後にVn、Vaにアンサンブル的な難所が置かれているなど、ベートーベン先生は演奏者を最後の最後まで苦しめます。