国交省統計改ざん/二重計上問題の問題点と論点を整理する(4/4)

(1/4)国交省統計改ざん/二重計上問題の問題点と論点を整理する
(2/4)国交省統計改ざん/二重計上問題の問題点と論点を整理する
(3/4)国交省統計改ざん/二重計上問題の問題点と論点を整理する

長くなってしまいましたが、最後にこの問題に対する報道のあり方について考え、話をまとめようと思います

5 複雑な問題を解きほぐして

5.1 誰も全容を把握できていない?

前の記事で取り上げた、この不可解な「差額」答弁、およびその報道が意味するところ、その意図は結局何だったのでしょうか?

質問は単に既存のデータと新手法で再集計したデータとの比較を聞かれているので、それに答えただけとも言えますが、ごまかしの意図がなかったとも言いきれません。質問者自身もこの二種のデータの意味するところを正確には理解していなかったのかもしれません。また時間的にもこれ以上の追及は難しかったようです

報じた毎日新聞(の記者)も、答弁の意味を正確に理解しあぐねているように思われます。少なくともこの二つのデータの性質を理解すれば、これを「二重計上による差額」と表現するのは適切ではないし、また本当に「二重計上による差額」であれば「改善手法での数値の方が高い」ことは不自然であることに執筆時点で気づくはずです(読む側の私が気づかずにスルーしかけたことは棚に上げます)

実際、この記事への反応でも、「二重計上の "水増し分" が月1.2兆である」という理解(見出しを見れば、そのように捉えるのは当然だと思います)や、中には「改善後」の数値の方が大きいことに気づいて不信に思う方もいるようです。

マスメディアは分かりにくい(場合によっては詭弁的なものもある)官僚の答弁をそのまま載せるだけでなく、きちんとその意味が理解できるように記事を書いてほしいものです。しかし実際のところ、複雑すぎて記事を書いている各メディアの記者もきちんと追い切れていないのではないかと思います。いわんや一般の視聴者、読者においてをやです

5.2 丁寧かつ明快な報道を

繰り返しになりますが、この問題は国家の基本的な信頼に関わる大問題です。マスメディアや野党には徹底的に原因や影響を追及してほしいと思っています

ここまで見てきたように、この問題は複雑で、多くの問題点、論点が絡み合っています。そのような問題に対し的確な追及を行うには構図や問題点を整理し正しく理解することが不可欠です。

しかし残念ながら現状では、マスメディアの報道はそれを十分に行えていないと感じます。結果として、例えば調査票の改ざんと二重計上の因果関係というこの問題の根本的な事項についても、短絡的な理解に陥っている人が多いように思われるのです

官僚、政府は全力で責任の回避に走るでしょうから、問題の理解が曖昧なまま追及を行っても、必ずどこかで行き詰まると思います。政府擁護側から誤解や曲解に基づいた野党/民主党政権批判が行われることもありますし、逆に追及側が誤解や思い込みで追及してしまうと、政府に逃げる余地を与えてしまったり、思わぬしっぺ返しを食らうこともあるかもしれません

ちょうど年末に入り、国会の動きは一旦止まることになります。この間にマスメディアは問題の構図や問題点、時系列、変更された推計手法の意味等を改めて整理し、わかりやすく、しかし省きすぎたり短絡したりすることもなく、的確に伝えてほしいと願っています。

情報が整理され、論点が明らかになれば野党の追及もしやすくなることでしょう。もちろん、メディア自身が率先して追及する姿勢を見せてほしいのですが

そんな中で、この記事が読んだ方の問題把握の一助になれば幸いです。

……といっても、正直なところ私自身、自分の理解がどこまで正確かあまり自信を持てません。詳しい方のご助言もお待ちしています