Der Mond wird wieder aufgehen
独語でDer Mond wird wieder aufgehen.
そのまま英語にするとThe moon will rise again. 月はまた昇る。
独語で太陽は女性名詞、月は男性名詞らしい。
大学院~社会人2年目頃まで、一番のストレス発散方法は「予算を決めて(主に1000円~1500円)セカンドハンドのお店で買い物をする」ことだった。1000円あればブックオフで5枚はCDが買えたし、古本屋さんの雰囲気や古い紙と文字の質感も大好きだった。特に、気軽に買い物に行けない院生時代はよくメルカリにお世話になり、店頭ではもう手に入らないCDや本、ハンドメイド雑貨などを譲ってもらっていた。手書きの宛名から、日常生活の欠片を手渡ししてもらっているようでわくわくした。Yahooとメルカリはヨーロッパでは利用できないらしく、自分が何を買ったかログインして確認することも出来ないのだけれど、今でも大事にしている購入品のひとつが腕時計である。
毎日少しずつ太陽や月が昇っては沈んでいくデザインが可愛いなあと思ったSEIKOの時計。私が生まれるよりも前の製品で、もちろん既に製造もされていなければ店頭にも並んでいなかったけれど、月と星が昇るデザインのものを運良くメルカリで譲っていただけることになった。
一度電池交換がてらメンテナンスに出したら、今はもう製造されていない部品が使われていること、修理は難しいと思うけれど、物はひとつ試しにやってみましょうということで中を綺麗にしてもらったことがある。なんと地方のお店からSEIKO本社に修理を依頼してくれていたらしい。水にも弱いので手を洗う時や手指消毒液なども気をつけてくださいね、と穏やかな初老のスタッフさんの一言が添えられて返ってきた。
お手入れをして長く使っていく過程で、思い出も愛着も増すのが楽しい。使い込まれて2枚舌になっていたベルトも一度交換して、オーストラリアにもドイツにも連れてきた。子どもと接する仕事中は付けられないけれど、普段の休日やおでかけ、少しドレスアップする時など、どんな場所や服でも似合ってくれるおかげで重宝している。
日本で購入して、オーストラリア、ドイツ、オランダ、スイス、イタリア、スペイン、ポーランドと、日本とタイムゾーンの違う場所で時間を刻んでくれている。私より年上の時計なので、もう30年以上、私と出会う前はどこでどんな人とどんな時間を刻んでいたんだろう、なんて思ったりする。状態が良かったので、大事に使われていたか、大事すぎて仕舞われていたか、かもしれない。
今のホストファミリーの80代の祖父が時計屋さんだったらしく、丁寧なイギリス英語で「その時計はどこのもの?良いね」と褒めてくれたことがある。時計屋さんに褒めてもらえるなんて嬉しくて、日本のSEIKOという会社だよと伝えると、「素敵だね。昔、仕事で神戸に行ったことがあるよ」なんて話をしてくれた。
いつか自分が大事な人に、この時計を贈れたらいいな、なんて思っている。形見分けでも多いよね、時計。ご縁があって譲ってもらったものを、私もいつか誰かに譲って受け継いでもらえたらいいな、なんて思っている。
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