「ビー玉」/倉科明日香
明日香「ふー……今日の練習も大変でした。やっぱり、もっと体力つけなくちゃですね」
晶也「そうだな。でも明日香、今日はよく頑張ってたよ」
明日香「はい、負けていられませんから! 頑張ったおかげでコーチにラムネ奢ってもらえたから、ラッキーです!」
そう笑って、明日香はラムネを飲み干す。俺も残っていたラムネに口を付けて、飲み終えてから海の方を見た。練習はもう終わったけど、まだまだ飛びたくなるような快晴だ。
明日香「うーん……」
晶也「どうしたんだ?」
明日香「ラムネのビー玉を取り出そうと思ったんですけど、上手く取れなくて」
晶也「なるほど。なら、俺が取るよ」
明日香「お願いしますっ!」
明日香から瓶を受け取って蓋を外す。思ったより硬かったから、これじゃ女の子には厳しいだろう。
晶也「はい、ビー玉」
明日香「ありがとうございます! わぁ……キラキラしてて綺麗ですっ! 見てくださいコーチ!」
晶也「そ、そうだな」
明日香「……?」
晶也「いや、何でもないよ。ところでそのビー玉、持って帰るのか?」
明日香「はい、部屋に飾ろうと思います! せっかくコーチがくれたビー玉ですから!」
明日香がビー玉をつまんで太陽にかざす。太陽の光を反射して、海の表面みたいにキラキラと光るビー玉は確かに綺麗だ。
けど――
晶也「飲み終わったし、そこの停留所から飛んで帰ろうか」
明日香「はい! ごちそうさまでした、コーチ!」
ビー玉より明日香の笑顔の方が輝いてる、そう思ったのは……明日香には秘密にしておこう。