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「夕立」/有坂真白

夕立

真白「雨、明日まで降るのかな。練習できないから早く止んでほしいなぁ……」

部活が終わる頃には止むと思ってたのにな。
ポツポツとビニール傘に雨が当たる。
雨が降ってると部活は体育館での練習になるから、飛ぶ練習ができないんだよね。
FCの飛び方を忘れちゃうんじゃないかって心配になるから、早く晴れて欲しい。

真白「頑張って作ったんだから、晴れにしてよね」

傘にくくり付けたてるてる坊主を指先でつつく。
ただのてるてる坊主じゃない。耳と羽、それからしっぽを付けた、わたし特製の「邪神ちゃんてるてる坊主」なのだ!
雨にも負けず、邪神ちゃんはゆらゆらと傘の端っこで揺れている。
早く晴れるよう祈って作ったんだけど……うーん。効果、あるかな?

真白「……って、あれ?」

邪神ちゃんから空に視線を移す。
さっきまでグレーの雲に覆われていた向こうの空は、いつの間にか明るくなっていた。
夕焼け、だんだんわたしに近付いてきてる?
雨が上がるのにはもっと時間がかかると思ったのに……。

真白「通り雨だったのかな?」

オレンジ色が辺りに広がっていく。
これなら、明日は晴れて、絶好のFC日和になるんじゃない!?

真白「きっと、邪神ちゃんのおかげだね」

雨にちょっと濡れちゃた邪神ちゃんは、「ひと仕事終わったぜ」と言わんばかりの顔をしている……ように見える、かも?

真白「せっかく邪神ちゃんが晴れにしてくれたんだし……わたしも頑張らなくちゃ!」

向こうの空は綺麗に晴れて、オレンジ色の太陽が沈んでいくのがよく見えた。
夕焼けから夜につながるグラデーションがとっても綺麗で、何だか心がウキウキしてくる。

真白「わたしだって、負けていられない!」

傘をぎゅっと握って、一歩踏み出すと、今ならどんなトレーニングだって頑張れそうな気がした。