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目には見えないもの


ふとお父さんから「古いパソコンから見つかったよ」と写真が送られてきました。それは、7か月の留学を終えて学校に提出するために書いた文章でした。

noteでは自分の忘れたくない想いや感じたことを残しておきたいので、以下の文章をその当時に書いたままに残しておこうと思います。

約2年前、おそらく2019年5月ぐらいに書いた文章かなと思います。


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留学をしていた7ヶ月は長いようで人生でみるとほんの一瞬の時間であるがとても価値のある経験だった。留学といえば色々な国の人と友達になったり英語が流暢に喋れるようになったりとかっこいいというイメージがあると思う。もちろん、楽しいことはたくさんある。しかし、実際にはたくさんの挫折と挑戦がある。

わたしが行ったデイトンは中期留学の中で唯一始めから寮での生活を送る大学だった。ルームメイトはデイトン大学に通っている学生3人。私達が過ごしていた寮はグローバルコミュニティの寮で、様々な国出身の学生がいた。それぞれ違う国のルームメイトと過ごして、毎日の寮生活の中でも異文化を肌で感じることができるんだなと期待していた。

しかし、わたしのルームメイトは全員アメリカ出身の学生だった。アメリカ人3人の中に日本人はわたし1人だけ。ネイティブの発音についていけず、伝えたいことも伝えられない。食べるものや生活スタイルも違えば考え方も違う。それに、4人で住み、各自の部屋はなく2人部屋で寝る。1人の時間も辛いしかといって1人の時間が作れないのもストレスだった。全てが日本での生活と違いすぎてついていけなかった。せめて他の国からの学生がいてくれれば気持ちが共有できたかもしれないとも思った。

始めはどのようにコミュニケーションをとっていいか分からず寮の違う部屋で友達になった子の部屋にばかり行き、ルームメイトとの距離を置いていた。するともちろんコミュニケーションをとる機会も減りお互い何か壁があるように感じた。しかしながら、ルームメイトの人柄が良かったことはわたしにとって救いだった。寮の設備はよく故障し、わたしが部屋で過ごし始めて間もない頃部屋の電気がつかずどう治してもらえばいいのかわからず、ルームメイトの1人に聞いたところすぐにパソコンで連絡を取ってくれた。

また、連休中には実家に一緒に連れてってくれたりするなどとても良くしてくれた。寮生活だからといって全く家族と関われないわけではない。

特に思い出深かったのはクリスマス。クリスマス休暇にもルームメイトの1人が家に連れて行ってくれた。一緒にクリスマスのビデオを見たり、お菓子の家を作ったり。本当のクリスマスの過ごし方ができた。日本のクリスマスもいいものだけれど、こんなにも家族の暖かさを感じることのできるクリスマスは初めてで、本当の家族のように接してくれたルームメイトの家族にとても感謝している。朝起きたら靴下にお菓子がたくさん入っていて、家族に囲まれてそのお菓子の説明をしてくれながら食べた。他国から来たわたしにいろいろな経験をしてあげようとしてくれて、いろいろな場所に連れて行ってくれたり、ご飯を作ってくれたり。イメージ通りのアメリカではなく、現地に行ったからこそわかる本当のアメリカを感じられる。

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数ヶ月が過ぎてルームメイトとの関係も変わってきた。今まで不安に感じていたことや不満に感じていたことは英語に自信がなくて言えなかった。自分が我慢すれば済むことだからと伝えるということを避けていた。しかし、ある日我慢が限界になってしまい、泣きながらルームメイトと話し合いになった。きちんと自分の気持ちを話したら、気がつかなくてごめんねと言ってくれた。そういうつもりはなかったが、日本人は察する文化があり、伝えるべきことを伝えないで済ませてしまうことがある。しかし、思いを伝えることでコミュニケーションが生まれるし、なにを考えているかわかることも増える。この日を境に小さなことでも思ったことは伝えようとした。

結果我慢してしまうことはあったが前よりも壁がなくなったように感じたし、わたしももっとルームメイトと一緒に過ごしたいという、気持ちに変化がみられた。トラブルを起こさないように行動に移せていなかったことが多かったことに気がついた。

この経験はわたしにとって大きく、この経験があるからこそ今は以前より自分の主張を大事にするようになったし、思ったら行動に移そうという考えをより強くさせてくれた。また、留学中は嫌なほど自分と向き合う時間がある。今までは自分と向き合う時間をわざわざ作ろうとはしなかったが、自分がどう思うのか、どうしたいのかという選択肢を迫られる場面が多いため、自分の気持ちと向き合うことが自然と多くなった。その中で自分の弱い部分や嫌な部分を知ることができた。知らなかった自分をじっくり知ることができたのは留学という環境が大きく変化した状況だったからだと思う。

日本で過ごしていても、自分の努力次第では留学に行った人に負けないぐらい、またはそれ以上に上達させることはできる。しかし、実際にその国に行くことで言語以外のことを多く学べる。テレビやインターネットなどのイメージだけでその国のことを決めつけることはなくなる。その国の文化を実際に体験することで本当の情報を知ることができる。それに、日本にいるのとは違う価値観に触れることができる。いろいろな文化を持った人や考えを持った人がたくさんいる。絶対に考え方の視野が広がる。

日本の学校の授業はほとんどが先生の発言や黒板に書かれたことをノートに書くという形であるが、わたしの行っていた語学学校ではほとんどノートは取らず、先生の話を聞き、生徒同士で話し合うことが多かった。また、プレゼンテーションやディスカッションテストなど、発言するという機会も多かった。これはわたしも含め日本人の学生にとっては苦手な分野であると思う。準備も含めそれらの授業はわたしにとってとてもストレスだった。しかし、苦手なことに諦めず挑戦したということは自信に繋がること。今ではあのときの苦しい経験があるから頑張れることがたくさんある。

留学に行った後、その人の変化は一見よくわからないかもしれないが、必ずその人は成長していると自信を持って言える。

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