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#詩
半透明と記号
誰もいない電車を乗りついで 期待の最大瞬間風速をまとう終着点。 わるい夢をみた朝は清々しい。 泡沫みたいな淡い記憶の無作為な産物として 断片化された身体が体温をとりもどす。 不器用で正直すぎて、破壊でもって生を知り こわいほどあこがれにまっすぐだったあのころ。 波音から無数の旋律が咲いては、 数珠つなぎの泣き笑いに消えた。 夜風がかすかに終わりの匂いをまとわせた日から 季節は反時計回りをはじめていた。 午後の蜃気楼、蝉時雨と歪んだ音色のグラデーション 涙はじけ虹は落ちても、その轟音は鳴り止まない。 いつかは他人になることを知らないみたいに ただそこにあった世界。 遠浅な思考は停止で、あてどない帰り道をいく。 きみはじぶんをつよくもっているから なにもおそれるな そう言った、あの人が見ていた世界は永遠の変拍子。 なにが正しくて、たしかなのか 誰もひとつとして興味がなかった。 雨が上がったら、かえろう。 息がとまるくらいになつかしい場所、 ずっと聞けないままのうたを密かに口ずさみ。 ただいま。 残された遠い夏の足跡は、 この波がついに洗い去ってくれる。 わたしはげんきです。