箕面萱野駅に行って、みのおキューズモールでお昼。相方のことを思い出す。
今日は通院日。お昼を江坂で食べようかと思ったけど、思い立って新しく延伸した箕面萱野駅に行くことにした。
箕面萱野駅は、駅舎に木材のスレートがいっぱい使われた、モダンかつあたたかみのある造り(ちょっと隈研吾さんっぽいよね)。改札を出たら、そのまま109シネマズとみのおキューズモールにつながっている。これは便利だわ。
とにかくお腹が空いてて、何食べるかだいぶ迷ったけど、ラーメン横綱に行き着く。一風堂もあったけど、一風堂は梅田にある。バーガーキングにも惹かれたけど、これも梅田にある。ラーメン横綱は、基本的に車がないと行けない場所ばっかりだから、今日はココだ。
野菜ラーメンとランチの小天津飯のセット。ラーメン横綱は、ネギ入れ放題。最高やないか。しかも替え玉100円。ありがた過ぎる。替え玉100円で麺と茹でるお湯代と人件費の元が取れるってこと? 小麦の値段上がって麺業界は結構しんどいって聞いてるんだけど、大丈夫なんかな……とか思いつつ着席。
まずは山盛りにしたネギと野菜を、ぜーんぶスープにしっかり浸す。具材とスープが馴染むのを待ちながら、スープを飲む。ベーシックな豚骨醤油。分かりやすい味で良い。スープを吸った野菜を食べてから、ゆっくり麺をすする。うーわー、俺ラーメン食ってる。ラーメン食うなんていつぶりだろう?
と、隣のテーブルに女子高校生3人が座った。全員クリームソーダ。内心、もうお昼食べた後なんかな、なんて思ってたら、その子たちが話し始めた。
「あー、めっちゃラーメン食べたい!」
「なー。めちゃくちゃラーメンの美味しそうな匂いしてくるよな」
「いやー、でもあたし節約すんねん」
「そうそう、カロリーもヤバいって」
壮絶に食べにくいんですけど。
いや、分かってる、別に君たちは思い付いたことをしゃべってるだけだよね。別に俺を責めてるわけでも、俺にタカりたいわけでもないよね。でもさあ、聞こえてるんよ。っていうか、フードコートガラガラやのに、なんでよりによってラーメン食ってる俺の隣に座った? そんなん隣で言われたらさあ、なんか俺がラーメン奢らなあかんみたいな空気なるやん。いや、分かってるよ、俺が考え過ぎなだけよね。でも、俺には、そう聞こえるの。
これではいかん。数ヶ月(数年?)ぶりのラーメンを、この神聖な一杯を、俺は集中して楽しまなければ。構うまい、隣の女子高校生にどう思われようが知ったことか。せいぜい美味しそうに食ってやる! 僕は静かに息を吐き、一気に麺を豪快にすすり上げる。これよ、これがやりたくてラーメン食うんよ。音だって立ててやる。笑顔だって見せてやる。しかもラーメンと天津飯を交互に、フルコースでお送りしてやりますが何か? ってか君ら、クリームソーダって、まあまあカロリーあるくせに逆にお腹が空いてしまうってこと、分かってないよね。ソーダの炭酸で胃が刺激されるから、タイミングによってはめっさお腹空いてしまうんやって。バッドチョイスよ。頑張ってラーメン一杯の方が、たぶんお腹いっぱいにはなる。
ラーメンと天津飯を食べ終え、久しぶりの豪華な外食の余韻に浸っていると、女子高校生の1人が立ち上がった。
「あたし、やっぱりラーメン頼んでくる」
結局食うんかい! それやったら食べる順番をせめて逆にせえや。なんかおかしくてたまらなかった。
みのおキューズモールに来たのは、無印良品に行きたかったから。冷蔵庫がまだなくて、袋のインスタントラーメン(具なし)を延々食べてつないできたけど、もう気持ちが限界で。無印良品には「ごはんにかけるシリーズ」っていうレトルトのぶっかけ系スープが売ってて、結構好きで食べる。ローソンでも売ってるけど種類が少なくて飽きるから、今日は無印良品に行って普段買えない種類を買い置きしようと思ったのだ。
無印良品の店内は、いつもホッとする。不思議だけど、うるさい無印良品に出会ったことがない。なぜか静かで穏やかだ。理由は何となく分かる。まず、通路の幅。極端に広い通路と、ちょっと狭いくらいの通路を使い分けた動線。広い通路から狭い通路に入ると、人間は自然に無口になるのだ。逆に狭い通路から極端に広い通路に出ると、自分の声が想像以上に響くことに気付いて、これまた人間は無意識に声を落とす。うまい仕組みだ。あと、店内のBGM。これがかなり強く作用している。昔は無印良品の店内BGMがCDで売ってたけど、今もまだあるのかな。
本当はレトルト食品に行って帰るだけのつもりが、気がゆるんで服や文房具、キッチン用品や収納用家具、ソファやベッドまで見てしまう。こんな風に──ウィンドウショッピングをすること自体が、もう何年もなかった。去年は半年食事が一切できず、家と病院を往復するだけだった。今年も、病院と当事者会、市の会議くらいしか外に出ていない。そもそも、1人で買い物に出る習慣が僕にはあまりない。行ったところで何も買えないという現状と、買い物に行きたがるのはいつも相方だったから、僕が買い物に行きたいと言った覚えがあまりない。でも今は少し楽しい。たぶん。
ついでに2nd Streetにも寄る。めっさかわいいスニーカーがあったけど、サイズが29cmで合わず(どんな巨漢がこんなかわいいピンクのスニーカー履いてたんだろう)。服や雑貨見るの楽しい。買えたらもっと良いんだけど、それは望むべくもない。冷蔵庫代だって控えてるんだから。
帰りに31アイスクリームでダブル・レギュラー・ワッフルコーンで仕上げ。注文しながら隣で相方がため息をつく姿が目に浮かぶ。「お前な、今メシ食ったばっかりやろ。シングルのレギュラーか、ダブルのスモールでええやろ」。構わず僕は注文する。「ダブルのレギュラーで! ラブ・ポーション・サーティワンとナッツトゥーユーでお願いします!」相方が呆れ果てる。
僕が最後に31に行ったのは、まだ相方が生きていて、元気で入院する前だ。何年前になるんだろう。普通に食事(しかもかなりの量)を食べた直後でも、アイスやケーキやパフェは別腹。僕には余裕で入る。それも毎日。相方は仕方なくシングルのスモールで付き合ってくれる。31にはコーヒーすらないのだ。付き合うには自分もアイスを食べるほかない。
そうしてガツガツ食べる僕を、呆れながらも見ていてくれるあなたが好きだった。僕が「ワッフルコーンで!」と頼むたびに「カップでええやろ! ワッフルコーンやと値段上がるやんけ! どんだけ食うねんこのデブ!」って罵倒してくれるあなたが、大好きだった。食べ終わったあと「やばー! めっさのど渇いてきた!」って言う僕を、「だから言うたやんけ、アイスなんか食べたらのど渇くって! ましてワッフルコーンなんか一番のど渇くやんけ!」って叱ってくれるあなたが、大好きだった。でも、もう、誰も呆れてはくれないし、罵倒も、叱ってもくれないんだなあ。31のアイスは本当に美味しい。でも、ちょっと淋しい。だから行くのは特別なとき。今日は特別。ちょっとだけ生きることが楽しいと思えたから。幸せだ、って思えたから。
ねえ、保。俺、今年でもう10kg体重が減ったよ。今日病院で測ったら、服着て靴履いて測って72kgだったよ。1月は82.5kgだったのに。ちゃんと食べてるのにね。むしろいっぱい食べてるのに。もうデブじゃないよ。保よりは太いけど、いっぱい食べるのは相変わらずだけど。どうしてなんだろう。最初は体重落ちるのが嬉しかったけど、今は食べるのに体重が減っていくのが、少し、怖いよ。
今ね、精神科と循環器科と脳神経外科に通ってるよ。3つも病院に通うのは、さすがに初めてだよ。
循環器科の方は、うまくいってる。俺の血液、結構いい感じに戻ったよ。冷蔵庫がないまま1ヶ月が過ぎて、自炊できないから、今どうなってるかちょっと不安だけど。
精神科と脳神経外科は……少し難しい感じになってる。精神科の勧めで脳神経外科に行って検査してもらったけど、精神科も脳神経外科も脳のお医者さんだし、精神科で薬を出してもらってるから、力関係が微妙なことになっちゃった。
脳神経外科の先生は「検査はするけど、薬は精神科でなんとかしてもらってください。薬含めて診るなら、うちにガッツリ通ってください」って言うし、精神科の先生は「うちで脳の検査もできるけど、検査とかは脳神経外科でやってもらった方がいいです。うちはあくまでも精神科なんで」って言うし。微妙に押し付け合いみたいになっちゃって……もう10年以上精神科の先生にはお世話になってるし、離れたくないんだけど、やっぱ先生の勧めでも脳神経外科行かない方が良かったのかな。MRI撮ってもらえたのは俺には一つ、安心できたことだったんだけど。
ゆっくり帰宅。はあー、いつになったら冷蔵庫の購入希望申請の結果出るのかな。先月の9日に必要書類全部出して、民生委員さんにもご挨拶して、申請出したんだけどな。今日はお金使っちゃったな。申請通ったら冷蔵庫代が毎月引かれていくし、明日からいっぱい節約しなきゃ。