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フェスのファンから街のファンへ。|結いのおと 2024

今年はじめて行くことができた「結いのおと」。周りから「すごく面白いよ」「絶対好きだと思う」と言われ続けてようやく行ったその場所は、噂以上にあったかくて、結城市のまちを舞台に行うからこその魅力と体験と、やさしさにあふれたフェスでした。

結いのおとは、茨城県結城市の街に点在するお寺や酒造といった文化的な建築物をステージにして街を巡りながら音楽を楽しむ「街なか音楽祭」として有名なフェス。2014年からはじまり去年10周年を迎え、今年は11年目という新しい節目のスタートでした。今後は1年おきにHALLエリアとTOWNエリア(街なかステージ)での開催を予定しているそうで、今回はHALLエリアと称したコンサートホール2会場を使っての開催。主催の野口さんは、ご自身のnoteで今年ホール開催を選んだ理由をちゃんと伝えてくださっていて、同時に来年は街なかに戻りますという宣言もしてくださっています。改修工事のために来年はホールが使えなくなる可能性があるから、今回はホールを選択したこと。こういったひとつひとつの選択を、真摯にわたしたちへ伝えてくれることもすごく人柄の感じられるフェスだなあと思います。

行くまでは、街なかじゃないのがちょっと残念と思っていたけど、行ってみたら今年の開催スタイルはコンパクトな中に結いのおとがギュッと詰まっていて、凝縮された体験をすることができたので本当に良かったです。来年は街なかになるので、また新しい景色を見ることができるので嬉しいきもち(もう来年も行く気になってる)。2024年、そんな結いのおとのレポートをお送りします!

まずは70店舗以上が出店するマーケットへ

ライブのほか、結いのおとの目当てといえば、噂に聞いていた魅力あふれるマーケットでしょう。とても楽しみだったので着いてすぐにお店全部ぐるっと回っちゃいました。お店はぜんぶ、主催の野口さんがお声をかけて直接相談しているそうで、とてもクオリティの高いキュレーション!屋台から雑貨、面白いアイテムまで目白押しで、結城のご当地和菓子「ゆでまんじゅう」だったり、重要無形文化財の「結城紬」(ゆうきつむぎ)のリユースアイテムが破格の値段でゲットできるお店だったりと、結城市にゆかりのあるお店が並びます。東京代々木八幡でお店を構える押競饅頭など、結いのおとではお馴染みだそうなお店も全国から集っているんですが、でもなんだかそういった市外出店の方たちもみんな、わたしたち結城の店ですくらいの顔つきというか、、、この期間はお店の人も結城にすっかり溶け込んでいる、そんな雰囲気を感じました。野口さんが直接オファーしているからこそ、結城市の空気に馴染みそう感というか、そういう空気感も見てるんだろうなあと思います。

しかもこのマーケットはチケットがなくても入れる入場無料エリアなのもすばらしくて、街の真ん中で開催しているからこそ、地域の人が気軽に遊びに来れるエリアも設けられているのはすごくいいなと思います。お店的にもたくさんの人に来てもらえた方が嬉しいだろうし、チケットに左右されないフリーエリアは最初は周知が大変かもしれないけど、続けてきたからこそ地域の人の活気がすごくあって、お子さんもいっぱい走り回ってたし、いるだけで楽しかったなあ。あと個人的にだいすきな「味噌湯志なだ」さんを結いのおとでも発見して嬉しかった。東京にお店があって味噌をドリップして飲むんだけど、ちょっと冷えてきた時とか、お酒を飲みすぎた時にも最高で、フェスにはぴったりなお店だと勝手に思ってて。見かけたらぜひぜひ飲んでみてほしいです♨️

こちらはホールの目の前に広がるマーケット。味噌湯志なださんのほかワインの飲み比べやスイーツ、カレーなども。
こちらはけやき公園内に広がるマーケット!ゆでまんじゅうや着物のリユースショップ、押競饅頭さんもこちらに。
けやき公園の方にはかわいいキッチンカーも並んでて、けん玉あそびが楽しめるお店もありました。

つながりを感じるラインナップ

今年のアーティストのラインナップも最高。1日目はヒップホップ寄り、2日目はロック寄りジャンルレスな感じで、アーティストも主催の野口さんが直接または紹介経由でブッキングしているそう。わたしは今年1日目のみ参加だったので2日目は見れなかったんだけど、2日目には結いのおとでお馴染み(もはや名物)となっている、アーティストが結城市の重要無形文化財「結城紬」を着て演奏する「着物枠」もあって。そういった、ローカルフェスかつ結いのおとならではの体験ができるのもアーティストにとってもすごく豊かなことだと思います。

個人的には1日目のヒップホップ寄りのラインナップすごく好きで、なんというか、ローカルフェスってヒップホップと割と思想が近いと思うんですよね。。。ストリートでなんかやろうっていう人間が集まって、それがローカルコミュニティ化していって、独自のカルチャーが生まれていく。ストレートに、俺たちはここで音楽をやっているぜ、と声に出していくこと。そのコミュニティにフォロワーが増えていくこと。これってまさにローカルフェス!実際に行って感じてみてなお、街を舞台にしている結いのおとには、そんなヒップホップみを感じたりしました。

わたしはラッパーの方々が「今日は友達と一緒に歌います」と言って当日出演していた他のアーティストと一緒にパフォーマンスしたりして、横や縦のつながりをオープンに見せてくれるのが好きで、今回も田我流のステージに柊人が出演したりなどが最高でした。仲間、友達、先輩、後輩、家族。もちろん人にもよると思いますが、文化としてヒップホップはそういう、対ヒトの関係に対してとても真摯だなあと思うんです。「自分たちが好きなひと、好きな場所を、自分はもちろん多くの人に好きになってほしい。(貶したり汚したりするのはやめようね。)」そういうふうに伝えてくれる方々が、結城市のことをリスペクトして声をあげてくれるのってフェスとしてもすごく嬉しいと思うし、結城市の方にとっても貴重な言葉だと思うんですよね。結城市は人口5万人の小さな街。だからこそ、愛のある、大きな声はきっとみんなに届くと思うんです。「つながっていくこと」。それをラインナップでも感じた1日でした。

さらに結いのおとはタイムテーブルもゆったりしていて、1ステージごと詰めすぎず、その空き時間でマーケットを散歩したりなど楽しんだりできるのも嬉しいポイント。しかも今年はホール開催で、ホールは隣あっているので移動しやすいのもよかった。ホールはアーティストごとに全入れ替え制だったので(スタッフの方が大変そうだったけど)、地蔵が発生することもないし、ホールに入れば座ることもできるので、観たいアーティストをちゃんと観れるし、多くの年代の人に無理なく楽しんでもらえる設計になっているのもいいなと思った。あと、撮影可のアーティストはパフォーマンスの前にアナウンスがあって、ステージによっては撮影を楽しめたのも粋な計らいだったなあ。

ホールは隣り合わせ。入れ替え前の整列も屋内なので体に負担が少なかった。
階段やステージにあったこの飾りものも、地域感があって好きだったなあ。
こちらはOTO HALL。後ろは固定席が216席で、前がスタンディングだったので各々のスタイルで楽しめた。
こちらはYUI HALL。1,276席のワンフロア型の大ホール。かなり広くて座席間もゆとりがあって快適だった。

ホールで音楽を聴くことって、ワンマンとかならあるけどフェスだとなかなかないので、それも貴重な体験だった。ホールの好きなところは、音がいいことはもちろんだけど、拍手がホール内に響いて上品なのもいいんですよね。コンサートで聴くような拍手の音に包まれるのもなんだか心地よかったです。
あと衝撃だったのは1日目のYUI HALLのトップバッター、切腹ピストルズ。ステージでどんどこどんどこ、ほと走る音と汗と熱気。最後の方はホールのお客さんも巻き込んでステージ上が大宴会みたいになっててお祭りの幕開けってかんじでとにかく最高でした。

地域の人があつまるフリースペースも充実。

マーケットはチケットがなくても来れるフリースペースと前述したけど、その他にも、公園の方のステージでは無料ライブやトークショーが楽しめるなど、フェスの雰囲気も感じられる太っ腹なスペースになってました。フジロックにも飲食やROOKIE A GO-GOステージが無料で楽しめるエリアがあるけどその感じがしてよかったなあ。フリースペースのいいところは近くや地域の人が気軽に遊びに来れて楽しめることはもちろんだけど、わたしみたいに市外や県外から来ている人にとっても、結城市の人がいてくださっていることで結城市の人の感じや雰囲気を感じられるのが嬉しいと思いました。結城市の人がたくさんいるからこそ、わたしも一層結城の空気に触れている気持ちになれる。海外旅行とか行くとすごく感じるけど、そういう空気感って、つくれるものではなくて自然とあるものだからこそ、その土地にいる人から生まれるものをこういう空間で感じれるのが嬉しいなと思いました。

ホールのある市民文化センターと、けやき公園の間の道路は思い思いのスペースに。
けやき公園の方のステージ。無料で観覧できて、地域の人もたくさん見にきていた。
オトナのこども心をくすぐるレトロでキュートなアイテムにはお子さまも夢中に。
けやき公園のステージ裏には広々とした遊具エリアも!遊びまくれて最高。

結いのおとのグラフィックがかわいい!

あととにかく愛を持って伝えたいのが、結いのおとのグラフィックが本当に好きっていう話です。「結いのおと」自体には、筆で書いたロゴが別で存在しているんだけど、わたしが特に好きなのはこの「結」と「音」の漢字をデザインしたこのグラフィック!まずこのグリーンの色合いが好き。深すぎず、明るすぎず、結城市の市の木である「桑」のグリーン。調和を感じるいい色です。そしてこの感じのタイポグラフィのかわいさと言ったら。ラウンドの丸みも好きだし、膨らみ部分のシャドウもちょうどいい加減で、「結び」をモチーフとしているであろうこのデザインがとにかく好きすぎます。画数多めの「結」の漢字のデフォルメ具合もなんてスマートなんだろう、、、といった具合で完全にグッサリと刺さっちゃったのでした。🙏🙏

「のおと」の部分が「NOTE」になっているのは「結う人の手」ってことなのかな

ホールの会場には、タイムテーブルやホールのガイドが貼ってあったんだけどこのパネルも、印刷してハレパネに貼るんじゃなくて、パネルに直接印刷してて、めちゃくちゃ発色も良かったし、厚みも張りもしっかりしててかなりグッときました。YUI HALLとOTO HALLのパネルにはそれぞれの漢字がレイアウトされていてわかりやすいですね。聞いたところ協賛にも入っていらっしゃる茨城県の「あけぼの印刷社」さんの協力なんだそう。小さなところだけど、こういう制作物ひとつにも地域の人の手や技術が詰まっているのも、とても素敵なことだなあと思いました。

そして実はわたしが今年行くことを決めた一つのきっかけがこのオフィシャルグッズ。グッサリ刺さったかわいいグラフィックがデザインされた、このグリーンの手ぬぐいがどうしても!ほしかった!!!グリーンの手ぬぐいはもう1日目の早い時間でもうほぼ品薄状態になっていて、わたしもギリギリでゲットできたのですがこれが欲しくて行ったので1日目に行って本当によかった…!!😭 ちなみに手ぬぐいのカラーバリエーションのピンクの方も市の木である「桑」の実の方のカラーだそう。こういう、選択の随所随所に「結城市」が軸としてしっかりあるのも、わたしが結いのおとを好きな理由です。選択に理由があって、それがちゃんと語れるものであるっていいですよね。結いのおとの思想のファンです。

Tシャツも早々にSOLDOUT!TENUGUIゲットできて本当によかった・・・

音楽が結城市を届けるメッセンジャーへ

結いのおとのすごいところは、すごいぞっていう市のものをちゃんと魅せてくれることだと思います。例えば街なか開催では、歴史ある神社やお寺、酒蔵、古い建造物をステージにして魅せちゃうところ。例えば出店の方とコラボしたり、結城市にゆかりのあるものを使った商品をつくるところ。例えばマーケットに重要無形文化財である「結城紬」のリユースショップを入れ、お客さんにも結城紬を実際に楽しんでもらえるようにしているところ。などなど。
そして結いのおとでお馴染みとなった「着物枠」も有名です。アーティストに実際に結城紬を着てもらってパフォーマンスしてもらうことで、アーティストや音楽を通じて結城紬のかっこよさを世界中に伝えられると同時に、アーティストにとってもここでしか体験できない唯一無二のステージになる。ちなみにトークで聞いたところアーティストの着る結城紬は、一着300万もする超高級なものだそうで、ちゃんとした管理のもと着付けの人がいらっしゃるそう。(ちょっとヒヤっとしますね…!!)

今年はぜったくん&SUKISHAさんのステージと、kiki vivi lilyさんのステージの2枠が着物枠でした。SNSの投稿見たら、もうぜったくんとSUKISHAさんの着物姿の似合うこと似合うこと・・。普段とまた一味違ったアーティストのかっこよさを見れるのもファンにとっては嬉しいです。結局わたしたちがフェスを楽しむ時間は2日程度ではあるけれど、こんなふうに結城市のすごいものを魅せ、体験できる工夫がぎゅっと詰まっているから、わたしたちも自然と触れることができるし、フェスを楽しむ中に、結城市のものを好きになれるきっかけがたくさんある。一度来たらきっと結城市を好きになる、魅力を伝える工夫がそこここに考えられているところが唯一無二の体験ができる理由だと思います。

あと感動したのが、主催の野口さんのおもてなし・・!アーティストの方とひと組ずつ、かならず一緒にフェス会場を回ってマーケットを紹介したり、人を紹介したりされてて、アーティストの方が結城市に触れやすくなる接点を作られているのを時々お見かけしたんですが、本当に「つなげるひと」なんだなあと感動してしまいました。そのほか一般のお客さんを座席までアテンドしたり、とにかく現場にいてとにかく手を差し伸べる様子をみて、この思いやりあふれるおもてなしが、結いのおとの空気感の真ん中にいるんだなあと感じて、結いのおとというフェスがさらに好きになりました。きっとアーティストの人もその手に触れて、特別な思いを抱いているんじゃないかなあと勝手に思ったり。

こんなふうに遊びに来た人にとっても、きっとアーティストにとっても、唯一無二の体験ができるローカルフェス、どうかこれからも続いて欲しいと願うばかりです。

来年は「まちなか」へ

結いのおとのサイトでは閉幕のメッセージが公開されています。その中で書かれているのは、

大切にしたいことは"つながること"

あの日が今日に、あの日が来年に、来年のその日がまたもっと未来に。きっとつながっていくんだと思うと、なんだか泣けちゃいますね。あっという間に好きになってしまいました。結いのおと。タイトルにも書きましたが、フェスのファンになって、わたしは同時にあの街と人のファンにもなりました。フェスが新しい街、新しい景色、新しい体験に連れて行ってくれる。旅行といったらフェスに行くという私にとってはもう最高な導かれ方です。来年は街なか開催ということで、地域の人々の暮らしや文化を感じる、街なかを舞台にしたサーキットフェス。今年は会場と、他に散歩した程度で少ししか街を見て回れなかったのでまだまだ知りたい結城市がたくさん残っています。

来年の結いのおとも待ち遠しいし、結城市のローカルアクションも知りたいなという気持ちでいっぱい。主催の野口さんが今年の結いのおとの開催最中に初回放送したVoicyを聴くのが最近の楽しみです。(偶然わたしもその中にいて、ラジオ開始の瞬間を目撃しました。)結いのおとは1年に1回だけど、点を増やしてつないで線にするように、こうして触れられるものがあるってとても嬉しいです。

初回が収録された時の様子。一緒にいたオーガナイザーのみなさん少年のような笑顔で大好きな一枚。

来年の結いのおとにもきっと行きたいと思います。大好きな音楽に導かれて、街なかをいっぱいに感じるのが楽しみだなあ!

おしまい

街なか音楽祭『結いのおと2024』 概要

開催日時:2024年4月20日(土)、21日(日)
会場:茨城県結城市
〈YUI HALL・OTO HALL〉結城市民文化センターアクロス(大・小ホール)
〈KEYAKI PARK〉結城市南部中央公園(けやき公園)
料金:2日通し券 15,000円 (お1人様/税込) / 1日券 8,000円 (お1人様/税込)
出演:
4月20日(土)
スチャダラパー / 田我流(Band Set) / OMSB / 柊人 / LIBRO / BigBen / ZOMBIE-CHANG / U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS / さらさ(Solo Set) / 切腹ピストルズ / 児玉奈央
4月21日(日)
OAU / SOIL&"PIMP"SESSIONS / SPECIAL OTHERS / Kan Sano(Band Set) / グソクムズ / Ålborg / eastern youth / kiki vivi lily / ぜったくん&SUKISHA / 優河 / 北里彰久
主催:(一社)MUSUBITO・㈱TMO結城
企画運営:結いプロジェクト
後援:結城市 / 結城商工会議所 / 結城市観光協会 / 結城市商業地域づくり連合会ほか
協力:結城市民文化センターアクロス / 結城市の皆さま
協賛:KEBOZ / あけぼの印刷社 / インクデザイン / FREAK'S STORE / 株式会社石島建設 / 金子金物 / 株式会社リビタ / 大木工業 / 中山株式会社 / penguin market / 麵や杉寅 / ツキヒホールディングス株式会社 / ドラヤキワダヤ / TAKIZAWA / 片岡屏風店
公式サイト:https://www.yuinote.jp/
X:https://twitter.com/yuiproject
Instagram:https://www.instagram.com/yuinote_yuki/

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