イチョウが紫は
仕事の道具を業者に返しに、いつもよりちょっと山側の町をバスで走る。紅葉がきれいだ。
春は桜、夏は緑、秋は紅と黄、冬は白。色を美しく感じるよう世界はうまくできているなぁと思った。まあ感性なんて、生物の進化より先にあった自然の前では、所詮後付けなんだろうけど。
例えばこれが、イチョウが紫、雪が紺色だったら、今と同じようには感じないんだろうな。でもその冗談みたいな光景もちょっと見てみたい。それで、その景色をきれいだと思って見たときに、自分の中に生まれる感覚を知ってみたい。
駅前でバスを降りて、交差点へ歩く。赤信号で立ち止まった向こうに、紫のベレー帽を被ったおばさんがいた。どぎつい。目が処理しきれない。
なるほど、イチョウが紫はダメなやつだ。
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