見出し画像

アイの映画をみさせて

見たときに「これは1週目散々でも絶対大化けするぞ」と思った。
そこにいた客は352席あるその映画館のいちばん大きいスクリーンで私一人の貸し切り上映だった


それが今ではどうだろうか。SNSで「中身は言えないけど絶対に見た方がいい」と話題になった。口コミが口コミを呼び爆発しようとしている(これを書いている時点では)。それが「アイの歌声を聴かせて」だった。ここではアイの歌声を聴かせてとその見に行った映画館がとった驚きの行動をnoteに書いていく。


劇場オリジナルアニメがなかなか売れない!

僕自身、映画を年間何十本も見ている。2020年の特報からMOVIXで散々流れていたからあることは知っていたし、音響監督が岩浪さんということもあって初日に見に行くこと決めていた。流行るのかどうかはさておき、おそらくは中高生に少々でいいからヒットしてほしいくらいには予告見ていた段階で思っていた。

のちに公開館が発表されると「松竹やたら強気やけど大丈夫なのか…」と思っていた。これの後エンドロールで分かるのだが、「イオンシネマ」と「岩浪さん」パワーが働き、ほとんどのイオンシネマと普段は松竹アニメ作品を配給問題でやらないシネマシティまでファーストで入っていた。

実はアニメオリジナル作品、2019年からほとんど涙飲まされることが多かった。HELLOWORLD(配給:東宝)、ジョゼと虎と魚たち(配給:松竹)、サイダーのように言葉が湧きあがる(配給:松竹)。ここら辺はまだ口コミが伸びてコアなファンがついたよかった方。岬のマヨイガ(配給:アニプレックス)に至っては作品こそ無茶苦茶よかったにもかかわらず、作品の題材もあってか口コミが広まらなかった。

ことアイうたでも脚本を担当されている大河内さんの僕らの7日間戦争(2019年、配給:ギャガ)もそうだった。アイうた見た人はこの作品も見てほしいのだが、登場人物が全員クレバーで動き方も賢いのだが。思った以上になぜか売れてない…。

画像1

理由は単純で日本人特有の心理である「新しいもに冒険してお金を払う嫌悪感」。ある程度地力がないと見ようとは思わない。新作は好きだがそれほど安心してみれる作品を選ぶ。なので「映画館で映画を普段見ない一般層」は1900円払ってみる映画に損はしたくないから有名監督や作品の地力といった点で見る作品を選んでしまう。

さらに言うと「アニメに関しては、キャストが豪華声優であれ豪華俳優であれ中身と監督を重視しがち」というのもある。故に見たオタクが「これはすごい」と言い続けないと売れないという劇場オリジナルアニメ特有の欠点を抱えてしまっている。


アイうた初日レポート

それではアイうたはどうだったのだろうか。
初日に「音響監督が岩浪さんだから」と見に行ったうちのフォロワーが「初日にして3回見る」というヘビーリピーターになっていた。それだけではない。なぜかほかの人も「これは良いぞ」「傑作だ!」という口コミが初日にあふれていた。初週の興行収入は惨めなものだったが僕が感じ取ったのは上の作品群とは違う「ある何か」を感じていた。それは初日見た勢の「勢い」だった。はっきり言ってこれは怖い作品だと思った。ほんとにそんな出来になっているのかちょっと心配になったレベルで怖かった。サジェストにホラーが入ってたけど「何かの間違いでしょ」ではない勢いを感じいたので初日で見たかった映画館というより久しく行ってなくて応援したい映画館があったのでそこにした

画像2

※2020年1月に撮影

大和路線から3両の近鉄の盲腸線である田原本線を乗り継いで一駅。ごくごく普通の住宅街が広がってる中、全国で唯一のイオンシネマがある。それがイオンシネマ西大和だ。

唯一と書いたのは文字まんまで、テナント扱いではなく全国唯一単独のイオンシネマである。道路を挟んだ反対側にはニチイから続くマイカル系のイオンがあったのだが8月に閉店してしまったため起こった珍現象ではあるが、そこの支配人がめちゃめちゃやる気のある「Twitter芸人」である。

そのTwitter芸人がアニメ作品を渾身の一番大きい7番スクリーンを割り当ててオタクを喜ばせるイベントが年に数回行われる。むろん今回もではあるが、アイうたはイオンシネマが協力で珍しくファースト配給で回ってきたこともあって(松竹のアニメ作品は普段ファーストでは回ってきません)、渾身の5回回しをやってきた。やたら今日見た人の評判はいいけどすぐに消えそうだったので行けるときに行っておいた方がいいと思い電車に飛び乗って向かった。

実はイオンが消えてから行くのは初めてだったので珍現象となってる姿を見るのも初めて。中に入ってみると関東ばりの狭いロビーは今日もがらんと。小腹が減っては戦はできぬのでホットドックを買ってシアターに突入する。

西大和の7番スクリーンは海老名と同じで上の3階に設置されている。もちろん隣接スクリーンなどはなく映画館も自体も単独(だからイオンが消えても生き延びることができた)。裏は公園と役所関係隣はキリン堂と立駐であるから多少大きい音量出しても苦情は出ない(と思われる)。ただ開館当初からあるk.c.sの御年20年くらいのスピーカーを使っている。

画像3

予告開始後、僕一人でしばらくいると、3人ぐらいが入ってきたのだが、オペレーションミス(?)なのか係員さんやってきて違うシアターに案内されていき、結局一人で上映が始まった…まさかの貸切上映、ワタシアター(物理)を公開初日の夕方に達成してしまうとは…。

正直初見で最初の方は退屈というか…うんという内容だった(これは初見だけ、1回見ると2回目以降はあっって思います)。だが後半に入るにつれてどんどん面白くなっていく…展開がものすごく好きで引き込まれていく…。太鳳ちゃんの歌の伸びもいい…すごい…。

これは絶対に化ける…

そう確信した。そりゃ見たTLのフォローしてる人たちみんな言う。多少細かい設定がアレでも、その細かい設定をガン無視できて作品にのめりこめる大多数の人ならお勧めできる作品だと。

でもしかし、やっぱりさっき語ったようなハードルの高さは、ぬぐえ切れない。なんてったって
10/29(金)公開初日のイオンシネマ西大和の一番でっかい7番スクリーン(352席)の18:10の回でワタシアター(物理)達成
してしまったんですから。もうそれはそれは…いつも空いててガラガラで見やすいとはいえTwitter芸人が本当に可哀そう。なので僕は

というツイートを入れたのです。そうして「イオンシネマ西大和ってとこ、遠いけどガラガラだしTwitter芸人だけど映画の品質は良いぞ」って布教したんです。

そうしたら、何人かの映画館オタクが行ってくれて。もちろん公式が宣伝したツイートもあったからなんですが「確かにここは良いゾ」って言ってくれたんです。姫路とか先に行ったオタクもいたのに。


AC西大和が幸せにしてあげる!!

そうして2週目を迎えていく。1週目の後半から、3日が祝日ってこともありTLでは半端じゃないアイうたすごいツイートが増えていくのですが流石公式動きが速い。

柔道ミュージカルシーンを48時間限定公開

これはかなり盛り上がった。だってあの煉獄さんが柔道しながらミュージカルしてるんよ。これ見て気になったら見に行ってと。見に行った人の反響はどんどんどんどん増えていく…。「見なきゃ損」「映画館で見ろと」

2週目は1Fにある小箱だった(7番スクリーンだけが3Fにある)イオンシネマ西大和もあまりの反響の多さにびっくりしてたんだろう。

このツイート自体にも反響はついたのですが、僕自身この時のTwitter芸人さん、えらいひと達(近畿エリアマネージャーや番組部門)と掛け合っているのではないかと…。たまに登場してくる「えらいひと」は懐の深い人で、以前メイドインアビスでバズった時も「なんでや、ええことやんか」と言ってくれた人でもある。

そうして、西大和の運命を変える大事な1つのツイートがいつものこれである

Twitter芸人、渾身の松本○志とジャニーさんのパk…オマージュツイートを投げた!!
ではなく「おまたせ、いつもの、大きいスクリーン

3週目に最大箱運用なんて滅多にできない。そりゃ大作あったらそっちになるし、1週目鳴かず飛ばずだった作品だ。けど支配人さんの愛と空いてるからできる技で、何回もおなじみでやってきてます。ありがとうTwitter芸人さんとえらいひと。

そしたらやばいくらいに反響ツイートが…「イオンシネマ西大和ってどこ?」「え?奈良の映画館??」とか。傍らで見守ってた僕自身「いやこれ見に行く人絶対出てくるだろう」と思って

バックアップ♪(C.V.土屋太鳳)しておいたやつを投げた。まぁこれも反響がすごくてすごくて…オタクの趣味のバックアップ、こんなことで役に立つかと。

さらに岩浪音響監督始め、この作品の監督の吉浦監督、有名アニメーターの入江監督に至っては…

映画館オタク顔負けでやってきたやん、この人行く気満々やん。
その他サンダー役日野聡さんやシオン役土屋太鳳さん(インスタ)まで反応してくれて…なんかすごいものを見せられてる…


これが売れるスキームであることは間違いがない、いやむしろ
なんでやる気のある映画館にアピールしてこなかったんだろう
って。

見てない人に見て見てって言うのはたやすい話である。それはもちろんのこと。では今まで見た人のリピーターはどうすんの?とかいろいろな壁が生じてくる。そこで「見た映画を映画館にアピールする」という戦法をオタクはとってこなかったよねって。幕張や立川のガルパン、横須賀のはいふり、綾川や海老名のプロメア…みんな映画館が頑張ってくれた。けど映画館は作品がないとかけれない。だったら自分たちの一押し作品をSNSで広めると同時に映画館の中の人に「これかけてよ」ではなく「これ見てよ」とアピールすることが今まで映画を見る客には欠けてたんじゃないかって思ってしまって。この作品すごいぞ戦法は映画館に向けると大きな宣伝力になるし作ってる人も含めてみんな幸せになるじゃないですか?そうだよね?アイうた騒動はすごいけど、それに反応してくれるシネコンさんがあったおかげで次から次にシネコンさんの宣伝材料にしていく姿を改めて見ていった瞬間であったように僕は感じています。


11/13(土)17時40分、イオンシネマ西大和に来た僕を待っていたのはさほど混んではないが明らかに人がいるロビーだった。そして7番スクリーンへ足を運んでいく。人がいっぱいいるではないか。この時の観客は僕が最初に見た時の10/29(金)18:10の回の20倍を超えていた。
トイレに向かうと拡声器を持ったスーツ姿のスタッフさんが上ってきたので「あっ中の人」と声をかけた。実はこっちの存在も知られていて「むぎちゃさんですよね?いつもありがとうございます」と声をかけられてしまった。

上映開始前にプチ挨拶があった
「あーあー、えー上映事故じゃないでーす。実はTwitter見てこんな辺鄙なところの映画館に来てくださった皆さんにお礼が言いたくてここに来ました。社内ルールでふぁぼやRTができないのでここで言わせてください。来てくださってありがとうございます。あと何かわからない人、自分では面白く発信してるつもりなので是非イオンシネマ西大和のTwitterをフォローしてください。これからアイの歌声を聴かせて始まりますが、是非楽しんでいってください!」


じゃぁ僕はシフトが18時までなので帰ります!ありがとうございました!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?