あの子が好き、なんでか分からん

私はアイドルが好きです。

大きな会場を埋める国民的アイドルと呼ばれるアイドルから、演者がお客さんの表情をほぼ把握できてしまうくらい小さな会場でライブをするアイドルまで、色々なアイドルが好きです。

アイドルがステージの上で放つきらめきであったり、あるいはその人が抱える影であったり、勝手に目を奪われて勝手に想像して勝手に救われている、そんな身勝手な楽しみ方をしています。

さて、私は数年前から応援している女の子がいます。

その女の子は好きになった当時とあるグループに所属していました、恐らく世間的にはそんなに有名なグループではなかったと思います。

元々そのグループを知っていて、全体的には見るけどこの子だ!って決めたいほどの子はいないなあ、でも曲もいいしコンセプトも面白い、いいなぁと思っていた程度だったのですが、まぁ色々ありそのグループの初期メンバーが数名脱退したのち、その女の子がグループへ加入しました。

担当カラーはピンク色。今日からよろしくね、と綴られたツイートを見て自分の中に電流が流れたのを今でも覚えています。

可愛い、とにかく可愛かった

ピンク色の髪の毛に合わせたカラコンは少し緑がかっていて、画像からも分かるような柔らかそうな肌、薄いのにどこかぽてっとして見える唇

全部全部全部かわいかった…今当時の画像を見てもやっぱり可愛くてお腹の底がグアーっと熱くなります。

心の中の庇護欲と母性が一気にくすぐられた私は、その子が応援したい女の子になりました。

その子が加入しているグループはとにかくよく全国を回っていて、ライブも本当に毎日のようにやっていたので会いに行ける機会はたくさんありました。会いに行く機会を選べる、これがまた自分のテンポを作るのにちょうど良くて。行きたいなあと思った時に会いに行って、無理せずにその女の子に会いに行ける=ストレスがない!その子の現場に行って嫌な気持ちになったことなんて一度もなかったです。

現場で友達を作らずにライブに通いました。そうなると、私が知っている人はその場でその子と他のメンバーだけ。私のことを知っているのはその場でその子だけ。まるで逢瀬見たいじゃない、なんて、至極気持ち悪い思考で現場に行っていたのを思い出します。自分で書いていてくそみそにキモくてウケる。


その子はいつでも最新の姿が最高で

実は強い女の子だったので、私が守る必要などなくたくさんの人をそのかわいいの武器で魅了し自分で道を切り開いて行きました。

その子のすきなところを書きます。

声が好き、歌う時の癖が好き、「ありがとお〜」と少し気の抜けたような声で言われるのが本当に好き。笑った時に下がる目尻が好き、汗をかいて束状になった前髪がおでこに張り付いていたのが好き、バニラの香りが似合うけど、その後につけていたお花のような香水もとても似合っていて。そして、咄嗟に出る言葉は優しかった。

いつもふわふわと微笑んでいてかわいいのかと思えば、パフォーマンスの時にとても苦しそうに、でも射抜くように泣きそうな目で、ステージの床や客席を見ていた姿もとても好きです。


ある日、その子はグループを卒業しました。

卒業を知った日は仕事をしながら人目も気にせず泣きました。もう会えない、私の大切な女の子に。宝物みたいな気持ちばかりくれたあの子に。

脱退の理由に色々な憶測を立てる人々に対して「そういうこと言わないで、むかつく…」と生配信中に小さな声で言った彼女がやっぱり好きでした。

加入当初はアイボリーやベージュの柔らかい雰囲気の洋服をよく着ていた彼女はその日は濃い紫色の長袖のトップスを着ていました。季節が流れるごとに着たい服が変わるような姿も、演者として全てをさらけ出せない等身大の彼女の欠片のようで愛おしかった。

最後かと思って会いに行ったその子は「幸せになろうね!」と言ってくれました。

涙ばかり流して言葉を飲み込んだ私に、「幸せになってね」と言おうと思っていた私より先にそう言ってくれました。

私が見る彼女はいつでも眩しく笑ってて、周りにとにかく可愛がられて愛されて、彼女は光の中にいました。眩しくて抱きしめたいくらい愛おしくて、でもやっぱり手が届かなくて。そんな彼女が大好きでした。


彼女がグループを脱退して、しばらくして、彼女について色々な話題が飛び交いました。具体的な内容は明記しませんが、巷でよくあるような話です。

失望も落ち込みもせず、やっぱり彼女は等身大だったのか、と妙に納得できました。

だってかわいいんです、何をしててもかわいい。立てばあかちゃん、座れば人形、歩く姿はしぬほどかわいい。

もう何されてもかわいいの白旗しか挙げられないのです。

彼女の何がそこまで私を夢中にさせたのか、確かに思い出を振り返れば何度も何度も彼女に射抜かれてきました。でも結局最後の最後まで答えは同じ。かわいいんです。何をしてても。そのかわいいの理由なんてわたしだけが感覚でわかっていればいいし彼女だけがチェキを撮る時に早口になって胸がつっかえて酸欠の金魚のようになる私の好意を空気で感じ取ってくれればいい。あなたが好きだ、あなたが愛しくて守りたい、この気持ちが1ミリでも伝わってくれればそれでいい。


彼女は今またステージに戻ってきました。

以前いたグループの去り際、濃く染められていた髪の毛はその時よりも色素が抜けていて。普通の少女に戻ろうとしていた時間が巻き戻ったようでした。色素の抜けた髪色は彼女の真っ白なお肌と可愛らしい目を強調するようで、とてもよく似合っているし彼女も気に入っているとよく言っています。

わたしは物事を言語化するのがどうも苦手です。感覚で生きているので言葉にしても結局抽象的な表現になってしまう。ここ数日、彼女のことをたくさん考えました。誕生日が近いので、恋しくなったのでしょう。


今日は台風が近づいていたので夕方の空がいつもと少し違う色で、くすんだピンク色をしていました。あの子の色だ、と思って少し立ち止まって。SNSを通じてそう思ったよと彼女に伝えました。そういう自分の気持ちの動きも含めて、私は彼女が好きなのでしょう。このどうしようもない好意ととてつもない関心を抱き合わせたこの気持ちに納得のいく言葉を与えて名前をつけるまで、私はこの感情をまとめて「推しが好き」と言うし、自分のことをオタクと形容することにします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?