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また会おう、世界一の名探偵。

これ?

これはライネスとのダブルPUガチャで、回せば回すだけ間欠泉のようにドバドバとホームズが出てきたときの画像。
このときは自分の豪運よりゲームのバグを疑った。

19世紀、ゴールドラッシュに初めて出くわした開拓者もきっとこんな気分だったんだろうな。
まさしくこの時の俺は掘れば掘るだけ金が出る夢の大地に立っていた。

おかげで宝具6である。
ホームズが6人いるカルデアは、さすがの異星の神でも回れ右して逃げ出すだろう。
最終決戦のルールがファイブボンバーだった場合、まず勝てないからである。

そして、これが俺のナラティブだ。

俺のホームズが、湯水の如く湧き出た量産型ホームズであるように、あなたにとってのホームズはきっと、貴方だけのホームズであろう。 

彼と共に旅したこの数年間、きっと貴方だけの物語があるはずだ。 

貴方だけのカルデア、貴方だけのサーヴァント、十人十色のナラティブで彩られる物語。

ここまで歩んできた君なら、Fate/Grand Orderとは、そういうゲームである事を、きっと理解しているだろう。 

ライヘンバッハに沈む彼は「この日々がとても楽しかった。」と微笑んだ。

楽しかったが故に、目を逸らし続けた。

宿命から、己から、真実から。

自分が、カルデアの側ではないという“答え”から。

〝When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.〟

『全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる。』
シャーロック・ホームズ

一方で、俺はどうだっただろうか。 

劇中で、カドックは全ての不可能を消去して、最後に残ったホームズこそが、裏切り者であるという仮説を立てた。

結果として、正しい推理であったといえよう。

しかし、こんな結末を認めたくないのもまた事実である。

なぜなら、誰よりも先に真実に辿り着き、「まだ語るときではない。」と鼻高々にしている彼を見るのが好きだったから。

どんな苦難に直面しても、ただ1人、思考を止めずに、勝利を切り拓く彼が好きだったから。

ホームズがこの旅を楽しかったと評価しているように、俺も彼との旅がとても楽しかったのだ。

俺には俺の“ホームズとの旅”があったように、貴方には貴方の“ホームズとの旅”があったのではないだろうか?

楽しかったが故に目を逸らし続けていたのは、俺も同じだ。

ホームズが内通者であるという考察は、SNSでもかなり前から飛び交っており、ついにはカドックまでもがそう語り始める。

楽しかった日々を否定したくないばかりに、そんなアレコレを拒絶してまで「ホームズに限って裏切るなんてことはない。どうせあったとしても二重スパイだろ。」と自分に言い聞かせていた。 

ここに、名探偵のような崇高な論理はない。

“楽しかった日々”を手放したくなかった俺とホームズの欠落した思考。 

信じる物を優先してしまう人間の盲目的視点。

ヒューマンエラーとも言える確証バイアスにより、我々とホームズは敗北を喫したと言えよう。

されど

人間万事塞翁が馬。

不幸があれば幸もある。

ここでいう幸とは、本来スイスにある筈のライヘンバッハの滝がなんとアメリカ合衆国ネバダ州にも存在するという、トンチキな奇跡のことを指す。

上下反転させたピラミッドの上に姫路城を敷く独自の建築様式を確立したFGOの手にかかれば、この程度の事実改変、赤子の手をひねるような物だ。 

とにかく、シャーロック・ホームズは紛れもなく“ライヘンバッハ”に落ちたのだ。

なぜネバダ州にライヘンバッハがあるかなど、どうだっていい。
ライヘンバッハに落ちたという事実が肝心なのである。

魔力供給が途絶えて霊基が保てなくなったわけではない。 
任務を終えて自主的に退去したわけでもない。

何度でも言おう、ライヘンバッハに落ちたのだ。 

劇中でマシュも語っていたように、ライヘンバッハに落ちたのなら彼は必ず帰ってくる。

遠足は帰るまでが遠足。

シャーロック・ホームズの物語はライヘンバッハの滝壺から帰還するまでが、シャーロック・ホームズの物語だ。 

悲観するにはまだ早い。

ここは通過点である。

彼との旅はまだ終わっていない、と断言できよう。


『初歩的なことだ、友よ』
ホームズの宝具である。

ワトソンへ向けた彼の名台詞がそのまま宝具へと昇華したものであるが、何故かFGOでは友へ向けた台詞へと改変されている。 

ここで言う“友”とは誰か。
もちろんワトソンも内包しているであろう。

しかし、今となっては彼の友はワトソンだけではない。 
そこにはゴルドルフ所長もダヴィンチちゃんもシオンもネモもカドックもマシュもそして、主人公も内包しているのではないだろうか。

楽しい日々を送った友への言葉。
真実はシャーロック・ホームズにしか分からない。

もし彼がこの場にいたら、この謎について、憎たらしくも得意げにこう言うだろう。

今はまだ語るときではない、と。 

ならば

いつか真実を語るその日まで。

また会おう、世界一の名探偵。

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