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Pause. - 音のない土地 -

私がまだ都心の高層ビルの中で働いていたとき、京都の友人と連休直前にあまり思いつかない温泉地に行こうと突発的に奈良県の陸の孤島、十津川村を訪れたことがある。
車に不慣れで有れば、奈良の市街地から半日要する、難易な山道の運転。
屋根のない風呂から見える満点の惑星たちは歩いて行けると錯覚するほどだった。


翌日、熊野古道に入っていくであろう登山口の近くに車を駐車し、車を降りドアを閉めた瞬間、私の耳は今まで経験したことのない感覚に陥った。
周りに何の音もない。
自分の耳を疑いたくなるような音が全くないという経験。

世界が一時停止したような錯覚。
世界が一時停止したら得した気持ちになるということをその時に知った。