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お題:銀河売り#シロクマ文芸部 

銀河売り。
こんなあこぎな商売はない。
俺だって、昔は立派な「星を売る人」だった。

俺は、自ら光り輝く恒星も好きだが、
なんてたって恒星に惹きつけられて、
その周りをぐるぐる回り続ける惑星が好きだった。
そういえば、惑星のなかでも青く澄んだ地球とかいう星は
格別に美しかったなぁ。
月が地球から離れられないでいるのも納得だ。
俺は、そんなけなげな月が太陽っていうぎらぎらの恒星に照らされて、
地味に白く輝くところなんかも好きだった。
そうそう、颯爽と駆け抜けていく彗星にも憧れたもんだ。
ちっ、今日はひどく星のことを思い出すな。

昔は、ひとつひとつの星をちゃんと見ていたんだ。
それぞれの特徴や愛すべきところ、ちゃんと見てやってたんだ。
俺にしか分からない魅力を発見したときなんか、1人でにやけたもんだ。
いつ頃だ、星がみえなくなったのは。
そうだ、人間って野郎に地球を売っぱらってしまったときだ。
はじめは面白いやつだと思ったんだ。
「星に住みたい」なんていうやつはいなかったからな。
だから、あいつにだったら、あの「地球」を売ってやってもいいって
心からそう思ったんだ。
でもまさか、あんなに美しかった地球があいつのせいで。
いや、俺のせいか。
そうだ、だから星をみるのをやめちまったんだ。
くそっ、またつまらないことを思い出してしまったもんだ。
そもそも太陽系のような狭い地域で商売したって儲かりやしない。
もっと外の上客あいてに、銀河ごと売っちまった方が
手っ取り早く大金が手に入るってもんさ。
そこに、どんな星がいるかなんて気にしなくていい。
それに星にだって寿命はある。
いずれ消えるんだ。
気にするこたぁねぇ。
けどよ、
けどよ、そりゃねぇよなぁ。
ろくに星もみずに、売りつけるたぁ。
愛がねぇよなぁ。
ちっ、つまんねぇ銀河売りなんかになっちまったもんだぜ。


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