見出し画像

SRに乗る理由

回転数を上げた後クラッチを切ってシフトアップし、そのままエンジンが吹け上がる余韻を残しながらもう一度クラッチをつなぐ。
その柔らかな息吹が心地よくてSRを走らせる。
400cc単気筒の馬力で不足を感じるのは高速道路と長い上り坂だけで、あとはすべてを満たしてくれる。

最近のネット情報によれば、ABS化に対応できなくてSRが製造中止となった以降はホンダのGB350だとか、海外の中型単気筒が人気らしい。
GB350に乗ったことはないが、ホンダらしいスムーズな吹け上がりと回転数でトルクをかせぐ乗り味が想像できる。試乗レビューをみても「振動が少ない」らしい。
ホンダといえばCT125を納車して2年以上経ち、走行距離は12,000キロ強。
それから、義父の家には軽トラックが三台あって、ホンダとスズキとスバル。ツールとしてみればホンダが優等生らしい。たしかにそうだと思う。

昔、中型免許をとったばかりのころ、乗っていたのは当時流行りのネイキッドバイクでヤマハの空冷4気筒。弱点は猛暑の電気系統で、高速道路から降りて信号で停まった瞬間にエンジンも停まったことが何度もある。
そのあたりは、ホンダの水冷やスズキの油冷に敵わない。
4気筒に72,000キロ乗って思ったのは、4気筒は横幅がデカすぎること。

ティアドロップタンクの美しさに惹かれたのはカワサキのZ1とZ2で、「あいつとララバイ」仕様のZ2を見たときは、あのタンクとカラーリングを心底美しいと思った。
1996年、ZEPHYR750RSが発売されたときは、Z2の再来に衝撃を受けたが、「欲しい!」とまではならなかった。やはり、4気筒はデカいのである。もとより大型免許も持っていない。
近年、再び再来モデルが発売されたが、モノショックと縮んだように見える車格に魅力は感じなかった。そういう意味では旧車ブームは理解できる。また、レーシーに乗りたいのであれば、フルカウルのバイクをバンに積んでサーキットへ行けばよい。

私が求めているのは、公道を流れに乗って過不足なく走ることができる単車なのだ。

それはティアドロップから流れるようなシートデザインでスリムであって欲しい。

4気筒は行き過ぎている。一般公道を走るにはせいぜい2気筒あれば十分だし、空冷で間に合うのだ。
できれば単気筒か、2気筒であっても配置はVツインかLツインで、タンクの幅からはみ出ることのないように。

トルクは回転で生み出すのではなく、一発一発の火花を感じたい。まるで心臓の鼓動のように。そうやって生き物のような息づかいが生まれる。

行き過ぎた発展がこの現実だとすれば、そこを追いかける理由はない。
だから僕は、独りきりで非日常を感じるためにSRに跨るのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?