体調不良が事故の原因? 流れに乗るための調整でした。
3月19日は暖かく、普段暮らしている辺りは少し暑いくらいだった。
その日は2回目の渓流釣りへ出かけた。前回は午後からの半日。今回、閉鎖されたスキー場の駐車場に到着し、澄んだ流れに足を滑り込ませたのは9時頃。
三つの沢を少しずつ釣り上がり、15時まで歩き回って釣果はアマゴ2匹。それっぽっちでも美しい渓魚と空気には十分癒やされた。
その夜は中学生の頃のバスケ部の練習以来の猛烈な疲労感だった。渓流を上る作業とは、普段使わない筋肉の酷使と、流れやぬめりに足をとられまいとする緊張感の連続だったのだ。
翌日3月20日は休日出勤。天候は雨。二十歳のころにやったバイク事故のむち打ちで、一日中仕事にならない精神状態であった。仕事の上でのトラブルがなかったのは幸い。
この日の通勤の足はSRで、帰りのロッカールームで合羽を着込んだ。帰路には普段、通らない大通り。その選択の理由は、なるべくカーブの少ない道を帰ろうと思ったからだ。雨の道路は滑る。しかも暗い。
トンネルにさしかかる左への緩いカーブ。そして僕は判断を誤った。
トンネルのすぐ手前に、右への枝道はショートカットだ。対向車が来ないことを確認して車体を右へ倒した。SRの前輪がセンターラインに乗っかり、そのまま車体が倒れて身体は前のめりに飛び出した。
左へのRはやや右への傾斜がついていた。雨でタイヤが滑ることは十分知っていた。しかもより滑る傾斜つきのセンターライン。バイク歴28年の僕が、そんな状況で転けたことは一度もなかったのに今更。
対向車がしばらく来なかったのは不幸中の幸いで、少し唸った後、手際よく車体を起こして脇へと押した。ヘッドライトはへしゃげ、右前方ウインカーは破損していた。他にも擦り傷がいくつか。身体の方は右膝が痛い。擦り傷と打撲程度だったので大事至らず良かったと言うべきだろう。
前日の疲労と天候によるむち打ち症状で、その日は朝からあらゆる判断がいつもと違ったのだ。
朝出かけるときは、数年ぶりに引っ張り出したフライトジャケットを羽織り、バイク通勤では使ったことのないリュックを背負い、雨の日のバイクでは通ったことのない道で帰ったのだ。そして転倒する選択をした。
車体も身体も必要以上にずぶ濡れで傷だらけ。けれどもかえって清々しいこの気持ち。
そう、今日は春分だ。今日から新しい流れが始まるのだ。
世界の流れはうねりと共に方向転換する。
僕が単車で曲がり損ねたカーブから飛び出したのは、これからの世界に必要のないエネルギーだったのだ。
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