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東京ってすごい②

衝撃映像を流す番組が、最近増えたと思う。
ザッピングするみたいに次々と、前後の説明無く流していくあれだ。あれは何の為にあるのだろう。現実離れしたことが起こってもあまりショックを受けないようにするためだろうか。

映像関係の仕事をしていたこともあり、編集で全てがどうにでもなる様子を何度も見てきたので、心霊映像も全く恐怖を感じない自分だ。
本当にあったら、こんなに怖いのか。

画面奥から歩いてきたオレンジ色のTシャツの男性は、
片手をジーンズのポケットに、颯爽と歩きながらスマホを構え、広告を撮って歩いた。
はて。正しいリアクションがわからない。
「違うよね?違うよね」
東京にピンク頭はいっぱいいる。
Youtuberもいっぱいいる。
そういう人だと思った。はて。
「イェイェイェ」

ああ。聞いたことある。

咄嗟の判断でアングルを下げる。有名人だ。
存在で飯を食っている側の人。
「ちょっ、、と一旦止めるわあ。」
テンパりすぎてなんか鼻につくイントネーションになった。ここからは有料コンテンツであるべき。
見てくれていた側の方のことを思うと、衝撃的すぎたとおもう。あまりにも綺麗なアングルで、画面右から左へ、丁寧に消えていく細い脚。

スマホを仕舞い、ゆっくり歩いた。立ち止まっていたマネージャーさんへお声がけしてみる。
「すみません、今日って、お写真撮らせて頂くことってできますか…?」
“今日って”というのは、前日のファンサツイートを受けてのものだ。
「あ!すみません、今日はちょっとダメなんです…!」
「そぇすよね、すません全然大丈夫です、あざますっ」
邪魔したくなく、1秒でも巻かなければと思い、ちゃんと喋れていなかったと思う。

一歩下がって彼を見ると、
なんと振り返ってこちらを見た。
しまった、気づかれた。目が合った彼は、一瞬で全て察して、広げた掌をぶんぶん振る。
「ごめーんっ いまむりなんだぁっ」


は?
こっちみてるよ一般人のこと見てる目がでかいな今何時メガネしてくればよかっ腹減った顔ちっさ指なげこの声しってる脚なが私どんな顔してるしごおわでマスクしててよかっ(走馬灯)


全 然 だ い じ ょ う ぶ で す ぅ


19:00『やばいことおこったね』


私はただそこに居ただけだ。
彼も、ただ歩いてきただけだ。落ち着け。
今日は普通の日だろ。
帰って霜降りミキXIT観るんだろ。

鳩尾のふわふわは限界を迎えていた。お腹が減って胃が痛い。思っても無いことを考えそうになっていた、先程の自分に伝えたい。
それ、胸騒ぎだよ。
あれは、やっぱりいつもより確信していたのだ。
なんでだ。

遠いものは大きく、近いものは小さく見える
とはよく言ったもので、
いたって普通の大きさのピンクボーイが
すぐそこで楽しそうにしている。



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