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❏もういちど読みたい記事

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もういちどと言わずなんどでも読みたい。
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#文学

社会的羊と一匹狼

例えば、高級レストランに行ったとする。 白いテーブルクロスに夜景が見渡せるガラス窓、上品なお洒落をした客。クラシック音楽とワインを注ぐ音が静かに流れる店内。 お皿の余白が気にならないほど色鮮やかな前菜に目と舌を楽しませたあと、メインへの最後の序章ともいえる、温かいスープが運ばれてきたとする。 さて、いざスープを慎重に唇の隙間からゆっくり流し込もうというとき、席を共にする相手がズズズーっと音を立ててスープを飲み始めたとしたらどうだろう。 ギョッとして冷や汗が噴き出てくるだろ

手帳類図書室に行ってきた話

手帳とは、ひどく私的で、プライベートなものだと思う。 持ち主が現実でどこに行き、誰と出会い、何をするのかを記入する、それはつまり、持ち主がどのように生きているのかの記録だ。 私は手帳を誰にも見せたくない。 私にとって手帳とは予定を管理するためのノートである以上に、思考を垂れ流すためのツールであるからだ。 高校生時代から10年間弱、1日1ページタイプの手帳を使っているが、悲しくてやりきれないことも、恥ずかしい野望も、誰にも言えない秘密も、全てを手帳には打ち明けてきた。手帳はカ