兄について


私には五歳年上の兄がいる。
文系の大学を卒業して今は社会人二年目だ。

私が小さい頃、自分で歩くのが嫌で親にだっこを願うも疲れたと断られたとき、兄は当たり前のように肩にのっけてくれた。にやにやしながら肩の上から見た景色をよく覚えている。

私が小学一年生のとき兄は六年生。同じランドセルを背負って同じ小学校に通っていた。

それが今や大学を飛び越してもう働いているということがいまだに信じられない。

兄が車の免許をとったばかりの頃、塾の帰りに駅まで迎えに来てもらったことがある。正直すごくどきどきしたが兄は随分と飛ばしていた。

去年のセンター試験の前日、リビングで何かをしていて自分の部屋に戻ると、抹茶ラテが置いてあった。兄が仕事帰りに買ってきてくれたようだった。温かくて、甘かった。緊張してがちがちだった心が一瞬で緩んだ。

ここまで書くととてもイケメンな兄だが、昔から部屋にこもって漫画とゲームばかりして勉強などほとんどしない、イケメンとは程遠い人種だ。親は怒り兄は反抗してぶつかっていた。

そんな姿を見て私は勉強をした方が得だと思ってまじめに勉強してきた。親は喜んだ。

今思えば本当は私もゲームをしたり漫画を読みたかった。
兄はたまにゲームこっそりと貸してくれたけれど、私はあまりに下手だった。
ざわざわしてて苦手だったけれど、たまにゲームセンターにも連れていってくれた。

なぜだかわからないけれど、もし兄がいなくなったら、と考えることがある。それだけで涙が出そうになる。

それほど大切なのに、今は恥ずかしくてあまり話せない。何が恥ずかしいのか自分でもよくわからない。

いてくれてありがとう。

ああこの気持ちをどうやって伝えたらいいのだろう。

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