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幸せを求める権利

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

日本国憲法

幸福を手に入れる方法には色々有りますが、最も安価で確実なのが向精神薬です。抑々、幸福感が脳の神経活動の産物ですから、其神経回路を弄って幸福感を認識させる、解り易いアプローチです。古来、アルコールや麻薬とか覚醒剤とが使われてましたが、神経生理学と合成化学が進歩するに連れ、自然界では存在し無かった様な化合物が向神経薬として合成・使用される様になった。所謂ビッグファーマと呼ばれる製薬会社の新薬開発は大体、向精神薬(含む 鎮痛薬)、抗癌剤、循環・代謝疾患が三本柱です。そこで、忘れてはいけ無いのが、一般の薬使用者の期待です。昨今の社会的ストレスの増加や鬱病の社会認知により、ストレスからの逃げ道に薬を使用したい。その期待に答えるのが製薬会社の任務で有り、商売でも有ります。

下は、最近人工知能関連で良く目にする様になった神経回路の模式図です。神経信号は左から入って、回路内で処理され、右に抜けて行きます。 白い星印が神経細胞で、細胞体から軸索と呼ばれる細い繊維が下流の神経細胞に伸びています。軸索と次の神経細胞との接点がシナプスと呼ばれる神経間接合部です (下図、黒点)。

神経回路網

一連の神経細胞の並びが下図です。神経間接合部は黒い点です。神経細胞は静止期と興奮期の2相間を行来し、興奮期に下流の神経細胞に信号を発出します。神経細胞の相を決定するのが、神経細胞への入力です。神経細胞は複数の神経細胞からの入力を受けていて、入力の合算が閾値を越えると興奮期に移行し、それらの入力が減弱すると静止期に戻ります。此興奮の流れが神経回路網の信号処理機構と信じられており、人工知能も此機構を電子計算機で再現・改変してます。

単純な神経回路

神経の記憶・学習の機構はと言うと、仮説段階ですが、一つには、神経細胞の興奮の閾値を変える機構が考えられます。また、神経間接合部の信号の伝達強度を変えるのも神経回路内の信号の流れを変える事が出来、後者が、記憶・学習の細胞機構と考えられています。

神経間接合部の伝達強度を調節する論理として、

  • 下流の細胞が静止期がら興奮期に移行する時に信号を送っていた神経間接合部が強化され

  • 興奮期移行後や静止期に留まっている時に信号を送った神経間接合部が排除される

という仮説が有ります。つまり、下流に有効な信号を送った神経細胞が幸せな気分を味わい、無駄な信号を送った神経細胞が辛酸を舐めるって感じかと。

も一つの記憶・学習機構の仮説が、「報酬回路」です。こちらは、複数の性質の異なる神経細胞が参加する神経機構で、高次の神経機能に於ける記憶・学習を担ってると考えられており、ドーパミン神経系が代表的な報酬回路です。此処では、神経回路網の出力を判定する神経細胞 (下図、橙色) が居て、その出力が有用だった場合に報酬信号を神経回路網内の神経細胞等に送って、働いた神経細胞にご褒美を与えます。

神経回路網・報酬回路

という処で、人を幸せにする薬にも少なくとも2種類に分類されます。1) 神経細胞間の信号伝達強度に働く薬、2) 報酬回路に働く薬。他にも色々仮説は有りますが代表的な仮説は此2つです。

 1) 神経細胞間の信号伝達強度に働く薬の代表例は、モルヒネと大麻、多分ケタミンもです。此手の薬の精神的な効果としては、霊魂の中和です。霊魂は「欲」の心情、つまり、「もっと」で表わされる不充足感です。此不充足感を消して、満足感を与えてくれるのが此手の向精神活性物質です。2) 報酬回路に働く薬はアンフェタミンや抗鬱薬・モノアミン再取り込み阻害薬等、報酬回路に特異的な活性物質で、精神的効果も報酬回路の役割に依存します。

薬を飲んだ報酬として幸せになるのは、道徳的観点を除くと習慣性になら無ければ余り問題にならない。要は娯楽だから、条件によって無しで過すのは忍耐可能です。一方、霊魂の「不充足感」の解消は、薬の作用が無くなると困る。薬が切れるとイライラして廻りに当たって回るって感じです。それに加えて、此手の薬は神経回路網の基本構築を変えてしまう。神経回路は動的に変化する事によって、変化する周囲の環境に合せて最適化される動的な組織です。その回路調節を人為的に操作すると何処に向かうか分ら無い。例えば、花を見ると音が聞こえるとか、鈴の音を聞くと匂がするって感じです。唯、一つ確実なのは、薬が切れ無い様に日々精進する事です。下手をすると薬確保が人生の目的に成ってしまう。社会的女子の皆さん注意した方が良いですよ。

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