画面から覗く本棚

スマートフォンアプリ開発を生業として十余年、未だにUI化できない体験があります。
雑誌や本棚がそれで、これは物体のもつ「a)全体を見渡す網羅性」「b)細部に注目する詳細性」をスマートフォン上で両立できないためです。

このふたつの性質を成り立たせているのは対象の物理的な広がりと人間の視覚によるもので、人間は広範囲を鳥瞰することと一点に注目することを瞬時に切り替えることができます。

一方でスマートフォンでそのような視点の切り替えを行うには指を使ったジェスチャを行う必要があり、また広範囲を映すとき単純に縮小してしまうと細部が読めなくなってしまうため縮小につれ簡略化しなければなりません。

雑誌や本棚の体験をUIにするのが難しい理由はa, bの性質の切り替えコストが大きい点と、細部に注目している間に全体のどの位置にいるかがわからなくなってしまう点にあります。

これらを部分的に解決している製品は例えば、全方位スクロール可能で大画面に雑誌風のカタログを表示するGapのiPadアプリ(現在は提供されていないようです)や、一覧画面と詳細画面どちらでもスクロール可能で切り替えコストを抑えたInstagramのアプリなどがあります。

とはいえこれらは根本的な問題解決ではないため、新しい表示法or操作法をつくる必要があると思われます。

追記:地図アプリは技術上の要件(網羅性と詳細性の両立、縮小時の簡略化)を満たしていますね

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