今日みた夢の話
寝室のベッドはふたつの壁に寄せて置かれていて、ふたつの窓に面していた。植物が雨戸とガラスの内窓の間に置かれており、寝室からガラス越しにミントの葉が見えていた。
時々雨戸の外から植物を食べにあぶら虫や小さなハエが入ってくることがあり、その日も植物に水をやって葉についた虫を取り、きっちり内窓をしめて布団に潜った。
目が覚めると、視界の端に何か小さなものが動いているのが目に入った。急いで眼鏡をかけて確認するとあぶら虫がゆっくり歩いている。耳に羽音を感じて驚くと、小さなハエが飛んでおり、素早く壁を歩くものもいる。しっかり戸締りして眠ったと思っていたのに、内窓に隙間があった。ハエを刺激しないようゆっくりベッドから離れると、虫を叩くための紙などを探すが部屋を見渡してもそんなものはない。
ふと目が覚めると気分は最悪だったけれど、寝室が虫だらけになったのは夢だったことに胸をなでおろし、呼吸を整えて眠気に目を任せた。
ベッドから身を起こすと壁を這う小さな虫が目に入った。寝起きの重い頭と乏しい視力で見つめると、その薄緑色の小さなものはあぶら虫だった。寝室にそれが這っていることに眉をひそめ、すぐ指で潰すとその近くに更に小さなあぶら虫がいた。
驚いて壁全体をさっと見渡すと、あぶら虫が更に一匹、二匹、三匹…と目に入り、咄嗟にベッドから身を離した。さっき寝室に虫が入り込んだ夢をみたのを思い出しながら、あの夢はこれを暗示していたのだろうかと考える。
指であぶら虫を潰すのはとてもきりがないのでリビングへ紙を取りに行くと、黒くて脚の長い虫が床を歩いている。まさかと思って水場まで行くと、蟻のようなものがたどたどしい列を作って風呂場の壁にある小さな穴から出てきている。息を呑み、それらの虫を踏まないように大量の紙を手にとって寝室は戻る。
あぶら虫を潰す手は震えた。いくら潰してもきりがなく、虫の体液で白い壁が汚れていくのみ。やがて、戸締りはし直した筈なのにあぶら虫だけでなく小さな羽虫、コガネムシ、小さなムカデ、ハサミムシ、更には土の中に潜るような幼虫もあらわれ、いつしか壁は汚れて黒くなり、土がぼろぼろこぼれ落ちるようになっていた。素手で虫を潰し続けるときに毒虫の針に刺されないように気をつけていると、更に手は震えて失神しそうな気分になった。床には半分潰された虫たちが落ちてもがいており、ヒルのような糸虫のようなものもミミズのようにのたうっている。さっきの夢ではなくこれが夢であったらよかったのにと思いながら、でも今が現実なのだからと気を持ち直し、終わりの見えない状況を悲観した。
そこで目が覚めて、枕元にあるスマートフォンに上司から連絡が入ってないか確認し何も連絡がないのを見るとほっと胸をなでおろした。
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