雨。のまわりにある雑記。

雨。降っている。

今年の冬は、よく雨が降る。
太平洋側のカラッとした冬晴れ、
なかなか会えていない気がする。
けっこう、好きなんだけれどなあ。


でも、雨は好きだ。

雨は、
わたしがわたしでいること
わたしがひとりでこの世界にいること
わたしが大切な誰かとこの世界で生きていること
なんか、
見てるよって伝えてくれる気が、たまにするんだ。


たまに、ね。



『言の葉の庭』

ふいに思い出した。
雨の日の午前中はきまって、
新宿御苑のとある東屋に足をはこぶ男子高校生が主人公だった。


2年間 東京で暮らしたことがあるけれど
こうやって映画やアニメの中に
じぶんの知っている場所や地名が出てきたときの
少し甘酸っぱくて
少しどきどきして
なんだかそわそわする感じ、
まだ慣れない。



『花束みたいな恋をした』

この映画が大好きだ。
呼吸が乱れそうなとき、
おまじないのように時折、
パソコンの画面にこの物語を映している。

私、2年前まで明大前の近くに住んでいたんです。
主人公2人の出会いが明大前駅だとわかったとき、
なにもなければきっと忘れていただろう小さな思い出たちに
そっと居場所ができた気がして嬉しかった。



商店街の道の端に、ちょこんと誰かを待ってるベンチ。
それを、路面店の1階の席から眺めている時間が好き。

なにもない道路にただベンチが置いてあるだけで、
人って集まってきたりするんだ。

あれはお散歩中の老夫婦。
この人、たぶんこの商店街に初めてきた人で、お店探してる。
あ、私の好みの服着てる人だ。どこで買ったんだろう。
犬の散歩してる人、けっこう多いみたい。
このまえ友人が、すごく長いリードを引っ張って犬を連れている様子を見て
「あれは散歩してる犬じゃなくて散歩されている犬だね」
ってボソッと言ったの、おもしろかったなあ。

なんて考えている。
そんな私は、
たべたい!って思うものしか食べたくないって意地を張って
けっきょく食べ損ねてしまったお昼ごはんを
腹ペコなお腹をなだめながら16時に食べていたりする。

そこで絶品のハンバーグと出会えたときなんてもう。
外のベンチに座る人に、教えてあげたくなっちゃったりして。




「いいお店って、雰囲気で分かるんだよね」
って、ちょっと自慢したくなっちゃうとき、ある。

根拠はまだない。


東京では
てくてく歩いて移動することが多いけれど、
あ、ここ好きなお店だって感じたお店は
総じて、今後通うことになる。
気がする。

わたしのお気に入りのお散歩コースには
わたしがこの街で生きていくためのひかりが
たくさん灯っているんだ。


そして、
雨の日はその直感が、少しだけ、鋭くなるんだ。

直感を遮るものが、少なくなる。
そうとも言えるかもしれない。


雨は、
触れたら通過できてしまいそうな
繊細で柔らかいカーテンだ。

わたしには眩しすぎるこの世界の照明を少しだけ遮って、
遠くに見える、赤青黄の広告看板を霧の中にかくまって、
忙しなくうごめく雑踏を少し足止めして、
ゆっくり、ひかりを探しながら歩くわたしをゆるしてくれる。


いつもよりも照明の落ちた世界に灯るひかりは、
よく、映える。

ここにいるよ、
って背伸びせず、
ただありのままの存在を灯している。
その姿は
晴れた日よりも
なんだか自由を愉しんでいるように見えたりして。


ようこそ。
はじめまして。
おかえり。
ただいま。
ひさしぶり。
また会ったね。


折りたたむ傘のかげに隠れて、
そっと挨拶してみたりして。

それが、わたしなりの雨宿りだったりする。



うん。
雨の日が、好きだ。


数年に一回
傘を買いに出かけるの、
すごく好きだったなあ。

今までの傘、ぜんぶ覚えている。


移動が多い暮らしになってから
めっきり折りたたみ傘ばかりになって、
大きな傘を買うこと、
してないなあ。


直感が少しだけ鋭くなる雨の日のわたしに
さらに力をくれる傘。
そんな仲間を探しに
明日は出かけてみよう。



あめ。

そのままでいいよ。
そのままがいいよ。




…… ほんとうかな。
まだ、信じきれないや。




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