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羽衣石くんと田中と渚
「え!じゃああの時遊んでくれたのってかいけー様?」
「あは、みたいだねぇ〜」
通りがかりに聞いた宇宙人と会計の会話が耳にするりと入り込んで来た。ちらりと盗み見るように振り向けば楽しげな会話と笑顔が転がってきて舌打ちした。その音に気がついたのか、目敏く宇宙人が「なぎなぎ先輩〜!」などとふざけた呼び名を叫んで手を振ってくる。不快感がひどい。顔を戻し後ろの騒がしい声は無視、誰?とでも言いたげな会計の顔にも無性にイラついた。──覚えているのは俺だけか。
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氷室くんと渚
目の前のお綺麗な顔を眺めて口角を上げる。どれだけ外面が完璧でもこちらには情報がある。
「やあ、初めまして氷室生徒会副会長。…………ねえ君、僕と手を組まない??」
「何の話でしょうか、私にはよく……」
「ああ"そういう事"にしたいのか。それならそれで構わないけれど君だって僕のこと、知っているだろう?」
俺が敢えて流したアレを知らないとは言わせない。もし本当に知らないのであればそれは俺の目が節穴だったという事だろう。さあ、お前と対等な"友人関係"を結ぶとしようか。
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小林と渚
「はあ……別に」
「ちぇ〜つれねーな」
馬鹿に芝生に沈められ服が汚れた。今日は厄日か。その馬鹿は隣で不貞腐れたような顔をしていたがふわりと吹く風につられてか日差しのせいか欠伸をこぼして、まあいいや。おやすみ〜などと昼寝を始める始末。そっと起こしていた身体を倒す。別に、悪くはない。薄目を開けてこちらを見てくるこの男にわざわざ言うつもりは無いが。
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碓氷くんと田中
ぽかぽか陽気のお昼寝日和の今日、おれは眠気にあらがい目下格闘中である。白い毛、黒と茶色のまだら模様ににゃーと鳴く声。そう三毛猫ちゃんと仲良し大作戦を決行しているのです!
「三毛猫ちゃん、今日こそおれとラブラブしてもらうんだからね……!」
「落ち着け。また逃げる」
「うっ、りょーかいです。ししょー」
おれにアドバイスをくれる声の主は裏庭のにゃんこ天国に君臨するにゃんこ大王の碓氷師匠。傍らに白猫ちゃんをはべらせ弟子のおれに見せつけてくるなんて!なんて日だ!!
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凛堂くんと田中
拝啓おとーさま、おかーさま、空き教室にて倒れている書記さまを見つけた場合おれはどうしたらいいのでしょーか。なんてふざけている場合じゃなく。
「えーと、書記さまー?いきてますか??」
「……お腹、空いた」
「ほあい?」
onakasuita……もしかして飢え死に寸前的な!?こりゃ大変だ、とりあえずポケットに手を入れおれの人生の相棒を取り出す。白くてツルツルのアイツである。
「書記さまーゆでたまご食べましょうよ」
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相馬くんと渚
白く、やたらと細い腕に見える傷の跡。顔や足首にも同じような有様で立っているのも辛そうにしている。にも関わらずろくな手当てもせず「オレ、打たれ強いんで!」と強がる始末。見苦しくて見ていられない。
「おい、相馬。そこに今すぐ座れ」
「へ?なんすか!?」
目を白黒させ戸惑う馬鹿は放置しロッカーへ向かう。救急箱を取り出して大人しく座っていた相馬の腕を掴む。驚きに染まる表情に失礼な奴だと思いながらもそのまま治療した。
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「しどーくん、ゆでたまごいる?」
「いや、いらないです」
苦笑する紫藤くんを眺めて今日も駄目だったかーと肩を落とす。このおれよりよっぽど大人っぽい後輩くんはいつもつれない。先輩を敬って一回くらい受け取ってくれても良くない?まあそれはさておき、おれはこの間とんでもねーものを見つけてしまったのである。
「むむ、ねえしどーくんさ。そのべろ痛くないの」
「痛くないですよ」
開けるときは流石に痛みはありますけど。そう言って笑う姿もやっぱり大人で悔しいのでおれは耳に二個もあるけどね!と張り合ってみるのだった。
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お昼に食堂のオムライスを食べてるんるん気分の田中壱です。現在は放課後、風紀室にて事務作業中。キーボードを打つ音に紙をめくる音その他、静かすぎてやる気が出ません。
「サッキーえすおーえーす!」
「それ、もう二回目だよ田中君」
「えーんつれなあい」
サッキーこと如月くんは同期の風紀委員でおれと違って大変真面目でなのでこうしてだらけているおれと違って今もきっちり手を動かしている。それでもちょっとこちらを見て「これで頑張って」と飴をくれるのだから優しい。ちょっとだけ頑張るか〜そこ、チョロいとか言わない!