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ヘドウィグの夫 イツハク ミュージカル『HEDWIG』より

ヘドウィグにとって重要なもう一人の人物。イツハクについても書いておきます。

#5 Wig In A Boxが終わり、イツハクにコーラを買いに行かせているその間。ヘドウィグは2人目の夫でバンドのボーカルパートナーであるイツハクについて話し始めます。

ヘドウィグがクロアチアでコンサートツアーを巡っている時、イツハクはそこですでに有名なドラッグクイーン(女装の男性)で、ユダヤ人最後の女神クリスタル・ノクトゥとして活躍していて、ヘドウィグのマネージャーが目をつけスカウトしてきたと。

その日の公演の前座として一曲歌ったクリスタル。あまりにも素晴らしいパフォーマンスで観客を魅了し、お陰で公演はすっかり前座に持っていかれてしまいます。

機嫌を損ね舞台には上がらず帰ろうとしたヘドウィグに、クリスタルが縋りつきます。
どうか私と結婚してアメリカに一緒に連れて行って。じゃなければ私はここで民族浄化にあってしまうと。

懇願するクリスタルに向かって、ヘドウィグはその昔、母親がハンセルに向かってそうしたように、証明写真のような無表情のままクリスタルに言います。
「クリスタル。自由には犠牲が伴うの。あなたの中でひとつだけ諦めなさい。金輪際そのカツラを脱いで、二度と女装しないと約束して。そうしたら結婚してアメリカに連れて行ってあげる」と。

そうして生き延びるため、クリスタルはカツラを脱ぎ女装を諦めヘドウィグの夫としてアメリカに渡りました。2人は唯一無二のパートナーとなり、ヘドウィグの公演では黒い革ジャンにブラックデニム、頭にはバンダナを巻いてサイドボーカルを務めるイツハク。
でも、華やかなカツラと女性の衣装をまとうヘドウィグを常に見なければいけない環境。カツラにも、女装にも未練があります。

#4 The Angry Inch が終わってヘドウィグが舞台裏に下がったあと、イツハクが一曲歌うのですが、そのナンバー「Papa, Can You Hear Me?」(映画『Yentl(邦題:愛のイェントル)』挿入歌)を、前座のステージでも披露したというイツハク。

自らが輝けるステージへの未練が捨てられず、ヘドウィグに内緒でブロードウェイミュージカル『RENT』のオーディションを受けて合格を勝ち取ります。が、その通知を手にヘドウィグに報告したその瞬間、合格通知を奪われて目の前で破り捨てられてしまうイツハク。舞台にすっかり集中している客席からは悲痛な溜息があちこちから上がります。

壁に分離された国で抑圧され育ったヘドウィグと、内戦で民族浄化に怯えたイツハク。二人の関係はこの先どうなるのでしょう。

Yentl (2/7) Movie CLIP - Papa, Can You Hear Me? (1983) HD

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