まち×学生 ボランティアが繋ぐ交流

六角橋地域ケアプラザの原島さんは地域交流の仕事を一手に担っている。高齢者の生活支援ではなく、地域の困りごとを様々な人とコラボレーションすることで解決に導く仕事だ。

六角橋のエリアには約3万3000人ほどの住民がいる。一方で神奈川大学の横浜キャンパスには一日で約1万8000人ほどの学生が出入りする。日中人口で見れば約半数は学生が占めていることが、この地域の特色であった。町を盛り上げるには学生の協力なしにはできそうにない、という考察のもとに原島さんは大学に注目したという。

とは言っても、最初から地域と学生の関係が順調だったわけではない。当初は学生に対して、「ゴミの分別ができていない」「深夜に騒いで迷惑だ」などといった近隣住民からのクレームも多かったそうだ。そうなると学生の方も六角橋に関わることがなくなっていき、ただの通学路になっていってしまう。

この状況に対して危機感を唱えたのが原島さんだ。

「災害が起こったとき、頼らざるを得ないのは若い力であり、協力しなければならないのも学生です。六角橋で空き巣が少ないのも、昼間に学生がいることによる監視の効果があるからです」

学生が町にいることのメリットは大きい。しかしマイナスイメージばかりが先行してしまい、学生と町の接点は作れなかった。ケアプラザの創設はそんな状況を大きく変えることに貢献した。

神奈川区について深くは知らない大学生のために区の特産品やものを大学に持ち込む、年に一度の「神大マルシェ」や大学生が考える子育て企画「オハナの遊び場」など、現在では学生と町が関わる行事もたくさんあるという。

今年はコロナウイルスの影響で学生と集まることは出来なかったものの、緊急事態宣言下で学生の貧困が問題となるなか、「まちSHOKU」という食事支援活動が行われた。

環境の変化によって商店街自身も厳しい状況の中、500円の食事券を二枚学生に渡したり、約430人の学生に一週間分の食事を三回提供する企画であったという。

注目すべきは、学生支援が行政や大学ではなく町の人、商店街の人々によって主体的に行われたという点だ。

”学生の為の支援” これこそ、ケアプラザがこれまで学生と町を一体化させるべく活動してきたことの大きな成果と考えられるだろう。


「学生が町へ出ることになった」

それが、プロジェクトを通じて原島さんの感じた変化だという。

町おこしという活動を通じて、学生と六角橋の地域の関係は間違いなく深まっただろう。今後も大学生と関わる様々な企画を計画しているというケアプラザは、若い手を必要とする日本の商店街や地域にとって見習うべき手本となり得るのではないか、そう感じさせるインタビューであった。




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