カモさんと日向ぼっこ

🦆🦷🔗SS
※捏造注意


※VirtuNymという、いととと界隈の新概念の二次創作です
代理キャラのようで代理キャラではない、自分であって自分ではない、インターネット上での人格というかキャラクターというか、そういうやつです


「わ! びっくりしたぁ」
つゃぽ、と変な音がしたかと思ったら、目の前の池の中から、丸眼鏡をかけた子供の頭が現れた。
「あ、カモちゃん」
「ゾンちゃん! 何してるの、カモさんが逃げちゃうでしょ〜」
「逃げてないです。ほら」
ほんとだ。カモさんたち、逃げるのを忘れてドン引きしてる。
「カモさんも逃げてないし、カモちゃんも逃げてないです」
ゾンちゃんが私を指さす。確かにわたしもカモちゃんか〜。ん? 人間のわたしを差し置いて、カモにさんづけ? ……まいっか。カモ好きだしさ〜。
「水揚げ」
ゾンちゃんが池を出て、わたしのいるベンチに向かってくる。好奇心なのかな、耳(頭の上にある、メンダコみたいな方ね)をパタパタさせてる。っていうか、池から出ることを水揚げって呼ぶ? ……まいっか。
「あ、ちょっと、待って待って!」
「?」
そのままとてとて駆けてきたゾンちゃんが、頭の上を見つめながら膝に登ってこようとするから、慌てて止めた。
「びしょびしょになっちゃうでしょ〜。また後でね」
「濡れますか。乾きます」
「?」
今度はわたしが疑問符。まとまってた髪の先が一束下りてきて、くるんとハテナマークになる。最近のクセかも。わたしのというか、髪の毛の。自我があるんだよね〜。
ゾンちゃんはそれをじーっと見つめると、岸近くの大岩に向かった。上で日向ぼっこしてるカメさんをどかして、自分がその位置に寝そべる。カメさんは池の中へ戻そうとしたけど、場所を奪っちゃって悪いと思ったのか、自分の背中にポンと置いた。なーるほど、そのまま登ったらわたしが濡れちゃうから、体を乾かしてきますってことね。たまにわかんないから、困っちゃうな〜。
「ゾンちゃん、水の中落ち着きます。たまに潜ります」
「そうだったんだ〜。そのお耳、メンダコか何かだよね?」
「多分そうです」
「だからかも〜」
水の生き物の血が入ってるのかな。……水の生き物の血? どうやって?
まあでも、VirtuNymにそんなこと関係ないかぁ。私だって、カモの色の髪の毛だもんね。
「カモちゃんも、水辺は落ち着きますか?」
「そうかも〜。やっぱりカモの血入ってるのかな?」
「どうやって?」
「ふふ、わたしも同じこと考えてた〜」
頭を傾けて笑うと、ふわっとカモさんの羽根が一枚落ちてきた。もう少し大きかったら、羽根ペンになるのにな〜。カモさんの羽根で絵、一回描いてみたい。
「水辺じゃなくて、カモで落ち着く可能性は」
「あ〜、考えてなかった」
確かに、海とかあんまり行ったことないなあ。日差しが強いところ、ちょっと気後れしちゃうから、静かな池とか湖とかが好き……なんだと思ってたけど。カモさんがいる場所が好きなのかも?
「カモさんと水辺の好みが同じなのか、カモさんを見て落ち着くのかはわかんないけど、あるかもね」
「カモが好きなんですよ。だって、頭」
「うわっ!」
ゾンちゃんがいい終わる前に、わたしの後ろで大声が上がった。
「カモっち、お、おま、何やってんだ?」
「あ、じんの〜」
絵描き仲間の人ノ生、略してじんのがなんかビビっていた。
「のんびりしてる。ゾンちゃんもいるよ」
「います、います」
「うわっびしょびしょ⁈ 何だこの狂気の空間は」
「ゾンちゃんはびしょびしょだから乾きます。カモちゃんはカモが好きだから一緒にいます」
「あのなあ……なんの筋も通ってないだろ!」
じんのがビシッと指差した先には、わたしが頭の上に作ったカモさんの巣があった。中にはカモさん一羽。ぬくぬく。
「最近、髪の毛が勝手に作るんだよね〜」
「いや、とかせよ! お前の髪だろ!」
「うーん、すぐ戻っちゃうの」
ほんと、困っちゃうよね〜。
「しょうがねえなー、アタシがといてやっから」
じんのが横に腰掛けて、わたしの髪に手を伸ばす。
「んー、嬉しいけどー、また今度かな。カモさんがいないときがいいかも」
「えー? お人よしなのか何なのか……いや、お人よしか? これ」
じんのが止めた手に、わたしの髪の毛が一束絡みついて、ぎゅっと握った。
「お、おう……これ、握手?」
「そうかも〜」
「カモっちにもわからないのかよ。不思議だね、まったく」
「ゾンちゃんも見たいっ」
「乾いてから……あっ」
伸びた。ギュイーンと音を立てて、髪がゾンちゃんのとこまで伸びた!
「すげえっ! そんなこともあんの⁈」
「……そう、かも」
「かもなのかよ!」
ゾンちゃんがわたしの髪の毛をにぎにぎしてる。ふと横を見ると、池にいるカモさんたちが、またドン引きしていた。
あーあ。ほんと、困っちゃうよね〜。

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