見出し画像

香りの力を役立てて、笑顔をもたらしたい [ 小野光子 ]

今回、香りにまつわる話を伺ったのはアロマセラピストの小野光子さん。M.Herbs&Aromatherapy を主宰し、アロマを日々の暮らしに取り入れるアイディアを紹介しているほか、「草冠の学校」でもアロマの講座を開講しています。
※この記事は、2015年11月に公開されたインタビューです。


小野光子(Mitsuko Ono)
『M.Herbs&Aromatherapy』主宰。AEAJ認定アロマセラピーインストラクター、AEAJ認定アロマセラピスト。生活を彩り豊かにしてくれる「アロマセラピー」を、より楽しく、そして正しく安全に日々の暮らしの中に取り入れるアイデアを、身近な人たちに紹介している。「植物が持つ、人間の心身に働きかける作用」を学び、ハーブとアロマセラピーを日々の暮らしに取り入れながら、生活雑貨の商品企画、テーブルコーディネートなど、多岐に渡り活動する。「草冠の学校」にて講師をつとめる。

−−−アロマセラピーとはよく聞く言葉ですが、そもそも、どんなものなのですか?

植物の有効成分を抽出した「精油」を使って、心や身体を穏やかに調整する自然療法のひとつです。精油は、植物の葉や花、果皮、樹皮などに含まれる香り成分を抽出してつくられます。植物にとってこの香り成分は、人間で言えば血液や汗、ホルモンなどに当たるものなんです。
花の香りには受粉のためにミツバチを引き寄せる誘引効果がありますよね。逆に敵や有害な菌を遠ざけたり、殺菌するために香りを放出することもあります。また、汗のように蒸発することで植物自身を冷やすという働きもあります。
不思議なことに、精油が含まれている植物の部位が、人間に効果をもたらす部分と対応しているんです。例えば、花は植物の生殖を司っています。だから、ローズやカモミールなど花から採った精油は、女性ホルモンのバランスを整え、肌を美しくする働きが期待できます。
このように、植物が自身を守ったり子孫のためにつくり出した物質を、私たちの健やかな暮らしのために助けとなってくれるのが、アロマセラピーなのです。


−−−アロマセラピストになりたいと思われたきっかけはどんなことだったのでしょう。

8年ぐらい前、体調を崩して入院したことがあるんです。仕事を頑張っていた時だったので「どうして私が?」と、その時は気持ちが滅入りました。手術の後は数日お風呂にも入れなくて、身体も気持ち悪いし......。
そんな時、看護師さんが精油をたらしたお湯で身体を拭いてくれたんです。柑橘系のオイルだったと思いますが、内側から「元気にならなきゃ」という思いがふーっと湧いてきました。頑張っていたけど、自分自身の健康を後回しにするぐらい、のめり込んでいたんだと。だったら、今は楽しんで休もうと素直に感じられました。

それが、ほとんど初のアロマ体験ですね。それまでは部屋の中でディフューザーを使って芳香浴ぐらいはしていたけど、オイルも1〜2種類くらいしか持っていなかったですし。それをきっかけにアロマのことをもっと知りたいなと思うようになって、勉強をはじめたんです。アドバイザー、インストラクターと資格試験を受けて、最終的にセラピストの資格を取得したのが2013年です。
今は、身近な人にトリートメントをしたり、日々の暮らしの中に取り入れ楽しむためのアロマレッスンを開いたりしています。

「草冠の学校」の様子

−−−ご自身でアロマの素晴らしさを体験されたことが背景にあるのですね。どんなふうにアロマの良さを伝えているのですか?

トリートメントをするときは、心や身体についての詳しいアンケートをとり、また精油に限らず普段の好きな香りなども伺って、どんな精油を使うか提案をして決めていきます。その結果に沿って、いくつかの精油を組み合わせながら、フットバスやアロマタオルでリラックスしていただいた後、精油を植物油に希釈したオイルを使ってトリートメント(マッサージ)を行います。
アロマレッスンでは、来てくださるお客様の心身に合わせて精油を選び、それを使ったアロマスプレーやブレンドオイルをつくります。

アロマレッスンで私が大切にしているのが、先入観なく香りを感じてもらうこと。だから、最初に精油を選んでもらうときは、精油名を明かさず10 種類の香りをかいでもらうんです。
というのも同じ名前の精油でも、収穫した地域、気候などの微妙な変化で香りが違ってきますし、また香りの好き嫌いというのはあるとしても、自分の心や身体が欲している香りというのは体調や気分によって毎日変わるんです。
それは、その人がその日に求めている香りなのです。

自分の心や身体が欲している香りは、日々変わるのだそう

−−−アロマを暮らしの中で上手に使っていくおすすめの方法があれば教えてください。

 まずアロマ専門のショップで、いろいろ試して自分の好きな香りを選ぶとよいと思います。「ピュアエッセンシャルオイル」と書いてある商品であることを確認してください。オーガニックだとなおよいと思います。
芳香浴なら、部屋やシーンに合わせてアロマディフューザーを使い分けるとよいですね。リビングはキャンドルタイプにすればムードが出ますし、炎のゆらぎでリラックス効果も高まります。寝室は電気式にしたり、アロマスプレーを噴霧したり...。香りもぜひ使い分けてください。リラックスしたいならオレンジやラベンダー、スッキリしたいときはローズマリー、レモンなどから使ってみてはいかがでしょうか。
精油をハンカチやコットンにたらすだけでも、簡単な芳香浴になります。枕元に置いて安眠を促したり、満員電車の中で取り出してかげば、ちょっとリフレッシュできますよね。
とても実用的な使い方もあります。レモンバームやゼラニウム、ユーカリレモンといったオイルでつくったミストは虫除けスプレーになります。デッドシーソルトに何滴かたらして、バスソルトにするのもよいですよ。2〜3 種類ブレンドして使うのがおすすめです。オリジナルの香りになりますし、相乗効果が生まれますから。私も、その日の気分や体調でブレンドして楽しんでいます。家族も「すごくよい香り」と喜んでくれます。

小野さんが自作したアロマクラフトたち

−−−まさに、アロマに囲まれた生活ですね。ご自宅のお庭でもハーブを育てられているそうですね。

庭と言ってもささやかなんですが、一角がハーブのエリアになっていて「香りの小道」と名付けています。それから、バルコニーでも少し育てています。3〜7月は花がピークですから、まず、切り花を自宅に飾って楽しみます。5〜6月にラベンダー、それからダマスクローズ。この季節は毎日収穫できますから、気分が上がりますよ。ダマスクローズは花をそのまま浮かべてバラ風呂にしています。ラベンダーは花が咲く直前で刈り取り、束ねて吊るしてドライフラワーにします。こうすると、よい香りが後まで残ります。
7〜9月にはジャスミンサンバックという、ジャスミン系の白い花が咲きます。ジャスミンサンバックをはじめ、生の芳香植物の活用法で気に入っているのが「ティンクチャー」です。アルコール度数40 度以上のウォッカに花びらを1 カ月漬け込むんです。濾(こ)せば化粧水や香水の基材にもなりますし、水に数滴たらしてハーブティーがわりに飲むこともできます。日本ではまだあまり知られていませんが、欧米ではメディカルハーブの活用法として多くの方が取り入れているそうですよ。

お気に入りのハーブ「ジャスミンサンバック」は、 幸福感をもたらしてくれる香り
庭で摘んだハーブブーケには、ラベンダー、ティーツリー、
ローズヒップ、フェンネルなど多種多様なハーブが たっぷり入っている

−−−最後に、今後の活動について聞かせてください。

今は社会的にも、「香り」の機能的な役割が広く認められてきていると思うんです。例えば、ある企業では社内に香りを拡散させているそうです。時間帯や季節によってブレンドを変えて、社内の消臭や殺菌、仕事の効率アップに役立てているのだと思います。ホテルやショップでオリジナルブレンドのオイルをつくり、お客さまに「香りのおもてなし」をしている所もあります。役者の方が、開演前に気分を上げるために、自分だけの香りを使うというお話も聞きます。
このように、香りに関する仕事はもっと求められる時代になっていくと思います。そんな中にあって、自分ができることの幅を少しずつ広げていきたいです。
また、私がアロマに助けられた経験から、働く女性や頑張っている女性を応援したいという気持ちが強いですね。人を癒やしたり、活力を与えたり、笑顔をもたらす力が香りにはあります。多くの人がもっと健康で幸せになれるよう、香りの力を役立てていきたいと思います。

聞き手・テキスト:圓岡(まるおか)志麻 撮影:水野聖二


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?