初めて銭湯に行った話

初めて銭湯に行った話

不運にも電気が止まったある夜。
お風呂に入れないため、銭湯に行こうと決めた。
秋葉原で朗読劇の本番があるため、近場がいいなあと探していた時、御徒町にとても雰囲気が良さそうなところを見つけた。

そして次の日、早起きをして高まる胸を押えながら家を出た。
家から最寄り駅まで歩いている時に雨が降ってきたが傘を持っていなかったために、少し濡れてしまった。
冷えた体を温めに行くにはちょうどいい機会だ。

そして、御徒町から徒歩約5分の所にある銭湯に初めて行った。

そこは想像していたよりも古く、想像通りの銭湯だった。
入口から男女で別れており、中央には女性の番頭さんが座っていた。

下駄箱は木札で閉まるタイプでワクワクした。

入浴料520円という安さに驚きを隠せなかった。
レンタルのバスタオルが+60円で計580円で入浴が出来た。
(フェイスタオルは自分で持っていったがレンタルが+20円で出来るみたい。)

中での電子機器の使用は一切禁止で、私がロッカーに荷物をしまっている時に男性客が番頭さんに怒られていた。
50代くらいの女性番頭さんで、少し怖い印象だ。
長くお店をやられているだろうし、こういう場所はルールに厳しい印象だ。

お風呂の中に入ると、大きな壁に富士山の絵が書かれていて、仕切りも何も無い洗い場が並んでいた。

入口には居酒屋で最近見るケロリンの桶に小さいイスが重ねられていた。
そしてシャンプー&リンスとボディソープは各列に1つ置かれていて、立ち上がってその場でプッシュするシステム。

私はひとつずつお借りし、体と髪を洗った。
洗い場には均等に「シャワーをひねりっぱなしにしない事。必ず座って洗うこと」という貼り紙がされていた。

初めての場所と経験に怯えながらも洗い終え、2つある浴場の1つに入った。

温度は熱すぎず、冷たすぎず、ちょうどいい温度だった。
浴場にも「お湯は掛け湯に使用しないこと。お湯の中で体を擦ったりしないこと。」と張り紙がされていた。

長風呂が苦手な私だが、雰囲気に飲まれ10分ほど浸かっていたような気がする。

お年寄りしかいないかなと思っていたけれど、意外と若い方やOLらしき方などもいて、立地の良さが伺える。

身も心もほっこりしてあがって、着替え終え、ドライヤーをしようと思い鏡台に向かった。

ドライヤーはお金を入ると動くタイプで20円で3分だった。
3分で乾く…??と戸惑ったけど、ビジネスホテルについているような風量が弱いタイプではなく、しっかりしたドライヤーで家で使っているやつと同じだった。
なんか嬉しくなった。
3分でも充分乾いたけど、もう少し乾かしたいなと思ってもう20円入れようと思ったけど…。
しまった、10円しかない。

きっとお願いしたら両替してくれるだろうけど、雰囲気を楽しもうと思って、150円の瓶コーヒー牛乳を購入した。

すると、番頭さんは意図を組んでくれて
「おつり、10円玉にする?」と言ってくれた。
そして続いて「言ってくれたら両替するよ?」と。
最初はきつく怖い印象があったけど、そんなことも無いのかな…??と思った。

有難くお釣りを10円玉にしてもらい、コーヒー牛乳は好きなので買いますと伝えた。

そして計6分で髪を乾かし終え、初めて自分のドライヤーの時間を測れた気がする。

コーヒー牛乳も変わらずの味で、小学生の頃に大好きだった味だった。
お借りしたバスタオルも返却用のカゴに入れ、軽く化粧を済ませ、番頭さんにお礼を言い、銭湯を出た。

銭湯を出ると、雨は止んでいた。
身も心もスッキリして、晴れた気持ちになった。
合計730円でこの幸せを手に入れたと思うと、この後何でも出来そうな気がした。

中にはペットボトルの飲み物を持参している方もいたので、コーヒー牛乳を買わなければ580円で入浴出来るし、バスタオルも持っていけば520円で入れる。

こんなに幸せな思いをしたのは久しぶりな気がする。
湯船に浸かるのが嫌いで、知らない人達が沢山いる銭湯などが苦手だった私が、初めて好きになれそうな気がした。

不運な時こそ楽しいことをしよう、幸運にしようと行動するけど、今回は大正解だった。

掲載許可も何もとってないから、写真も場所も控えるが、初めてで新鮮な経験をさせてくれた、あの銭湯には感謝したい。
また行こう。

以上。

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