見出し画像

ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ【バーン・アンド・ラン・アンド・バーン】#2

この記事は2022年5月6日に行われたニンジャスレイヤーTRPG ソロPLシナリオ「バーン・アンド・ラン・アンド・バーン」(NM:ANIGR、PL:楓)の内容をベースにしたテキストです。加筆を含む諸々の手入れを行っています。「そういう物」として御覧ください。
#1はこちら


本編

■オコトー埠頭へと向かう下道■

あれほど激しかったヤクザベンツ攻勢はすっかりやみ、時々思い出したように遠巻きに追跡してくる車が現れる程度になっていた。
夜ほど動きが激しくなるネオサイタマにおいても、ハイウェイに沿う下道の深夜ともなれば車の量はそう多くはない。

ヒイロ:「それでさ、パパったらその時怒り出しちゃって――」
助手席ではすっかり君に気を許したらしいヒイロがとりとめもない話を続けている。
アカネは時折相槌を返しつつ、周囲に不審な影がないか目を凝らしている。
ヒイロ:「ほんとに心配性で、アタシをキョートの高校に通わせるー! なんて言ってさ……ねえ聞いてる?」
アカネ:「ちゃんと聞いてるさ。キョートは良い所だって昔の同僚も言ってたよ」
アカネ:「(息が詰まるとも言ってたけどな)」
ヒイロ:「むう、聞いてない気がする」ヒイロは少しだけむくれるとすぐ笑顔に戻った。
ヒイロ:「今のうちにパパの性格を把握しとかないとダメよ? アタシを救ったヒーローとして凱旋するんだから! 報酬たくさんもらうんでしょ?」
ヒイロ:「パパに気に入られればずっとアタシの護衛になるのだってアリだし……」
アカネ:「生憎と宮仕えにはこりごりしてんだ。お堅いお父様だってアタシのナリを見りゃあ顔をしかめるだろうさ」
ヒイロ:「大丈夫だよ、私専属だったらそんなに堅苦しくならないし……。むしろアカネ=サンは普段は何をしてる人なの?」
アカネ:「……その辺ブラブラして、気まぐれで悪い奴をおっかけたり、困ってる奴の手助けをしてる」「今日のお前みたいにな」
ヒイロ:「………………」しばし考え込み
ヒイロ:「…………無職?」
アカネ:「フリーランスと言ってくれ」「そこは大事なポイントだ」
ヒイロ:「あはは、ダイジョブ。正義のヒーローだよね、ほんとに」
アカネ:「正義の…そうでありたいとは思うがな」
ヒイロ:「大丈夫だよ、今日のアカネ=サンは間違いなく正義のヒーローだから! アタシが保証してあげる!」
アカネ:「……そうかよ。そりゃドーモ」
助手席に収まるヒイロの頭を乱暴に撫でた。
ヒイロ:「んあああっ、子ども扱いしてえ!」そう言いつつも、居心地は悪くなさそうだ。

ヒイロ:「……あ」
ダッシュボードの中からジュース・ドリンクを見つけ出したらしい。
ヒイロ:「2本あったよ、ドーゾ」
そう言いながら自分の分はさっさとストローを刺して飲みだしてしまう。
アカネ:「…いただきます」
ヒイロ:「……あーあ、パパどうしてるんだろ、早く会いたいな」
ヒイロはそう呟いたのを最後に、いつのまにか寝息を立てていた。

ノゾミ:『聞こえてる?』
アカネ:『ドーモ、よく聞こえてますよ』
ノゾミ:『それはなにより。ところで車のダッシュボードの中とか手を出したりしてないでしょうね
アカネ:『ご馳走様でした』諦めの境地である
ノゾミ:『あとでケジメショーね……』

PL:(実際ケチでは??)
ノゾミ:(倹約家と言いなさい)

ノゾミ:『ところで、今回の事件についてだいたい裏取りが出来たわ。妨害がかなり入ったけど』
ノゾミ:『簡単にまとめると、今回の件は悪徳メガコーポ”ネコソギファンド”によるカネモノ・インダストリーの乗っ取りよ』
ノゾミ:『事の起こりはネコソギファンドによる敵対的買収。あそこはカネモノ・インダストリーの株を金融工学を駆使して――ここの詳しい話は分からないと思うから省くけど――4割近く手に入れたの』
アカネ:『一夜にして大株主様のご登場だ』
ノゾミ:『ええ。でも残りの6割はカネモノ・インダストリの創業者一族によって保有されていて、しかもそれは硬い社内法令によって一族以外に分与することが出来ないようになってた』
ノゾミ:『同族企業っていうと聞こえは悪いけど、それが今回は功を奏したわけね』

ノゾミ:『でもネコソギファンドは大ヤクザとの繋がりがあったみたいでね……、創業一族が集まる会議に突然大量の暴漢が乱入したの。それが今日の夕方』
ノゾミ:『あくまでも建前上はただの強盗。でも目的は明らかよね』
アカネ:『マトは創業一族か』
ノゾミ:『そ。そしてネコソギファンドはどこから連れてきたのか、カネモノ一族の親戚を名乗る男を手に入れていた。どうみても偽造で完璧に合法な、彼に株の一部を譲渡する現当主の遺言書とセットでね』
ノゾミ:『あとは現当主とその妻が死ねば、50%を超える株をネコソギファンドが取得。乗っ取り成功……ってわけ』
ノゾミ:『勿論カネモノ側も警戒してて完璧な警備が敷かれてたはずなんだけど……暴漢達には全く歯が立たなかったみたい。ネコソギファンドは軍隊でも使ったのかしらね?』
アカネ:『子飼いの私兵、傭兵、湾岸警備隊くずれ…候補ならいくらでも思い浮かびますがね』
アカネ:『その当主と妻の安否は』
ノゾミ:『……貴方に関係があるのはそこからよね。ラジオをつけてみて』
小さく、奥歯を噛みしめる音がアカネの耳に届く。

ラジオからは妙に胸騒ぎのする威圧感のある声が聞こえてくる。
『我々ネコソギファンドはこのたび、カネモノ・インダストリの株の51%を取得し、経営を統合することになったためこれを喜びとともに発表します!』
『先のご当主夫妻の死は大きな損失です。しかし我々はこの悲しみを乗り越えカネモノ・インダストリをさらに大きな企業に』
『そのためには決断的なリストラを断行し、全社員の給料は完全成果主義、不要な部門は全て売却し――』
聞こえてきた声はネコソギファンドのCEO、ラオモト・カンの声だ。

アカネ:『ナムアミダブツ』小さく哀悼の意のこもった言葉を捧げる
ノゾミ:『ごめん、その声聞いてると苛ついてくるからやっぱり消してくれる?』
アカネ:(苛立ちを隠せない手で乱暴にラジオを停止)
ノゾミ:『……ありがと。ご夫妻の遺体はNSPDでも確認したわ。偽造ではない、確実に亡くなっている』
ノゾミ:『問題はひとり残された娘の身柄よ』
アカネ:『それがヒイロ嬢、間違いないですか』
ノゾミ:『ええ。大半の人は混乱の中で死んだと思ってるみたいだけど、まさか正義のヒーローが拐ってったなんてね?』
アカネ:『はっ。アタシは誘拐犯か』
ノゾミ:『少なくとも一部の政治家からはそのように扱えという圧力がかかってるわ』
ノゾミ:『ヒイロ=サンにはこれから49%分の株式が相続される予定……でも、51%をネコソギファンドが取ってる以上いずれ紙くずになるでしょうね』
ノゾミ:『それでもネコソギファンドが彼女の命を狙ってるのは……"念のため"くらいの理由でしょうね』
アカネ:『"潜在的リスク"は確実に潰すって訳か』

ノゾミ:『彼女はもう全部を奪われたただの女の子よ、莫大な報酬はあんまり期待しないほうがいいと思うわ』
アカネ:『そうですね…割りに合わねえ…セコい仕事になったな』
ノゾミ:『なら降りる?』
アカネ:『今更手土産に連れていったって報酬はたかが知れてる、むしろ車代やらなんやらでケツの毛まで抜かれるのがオチだ』
アカネ:『このビズはもうショートしちまってる。なら、少しでも寝覚めの悪くない着地点を考えるしかないですよ』
ノゾミ:『損得勘定の下りは後付けかしら? でもあなたが相変わらずのイディオットで安心したわ』
アカネ:『これでも色々考えてやってるんですよ、フリーランスは大変で』
『フフ……』インカムの向こうから笑顔が漏れる。
ノゾミ:『ただ、これだけは心しておいて。ネコソギファンドは例え”念のため”であっても手段を選ばずにその子を殺そうとしてる』
ノゾミ:『正直、こんな悪辣で暴力的なやり方は見たことがない……何が出てくるか、まだわからないわ。まだとても安心はできない』
アカネ:『ご忠告ドーモ。しばらくは眠れない時間が続きそうだ』
アカネ:『(本当にこのままキョートまで運んだ方が良いのでは?…しかしルートは?頼る先は?)』
そう言っている間に埠頭が見えてきた。
『とにかく、埠頭にいるのは29課。事情は話してあるから、彼らと合流してほとぼりが冷めたら警察署に……』

ヒイロ:「んぅ……」
ヒイロ:「……あれ、もう着いたの?」
アカネ:「もうすぐ着く」「まだ眠っていて良いぞ」
ヒイロ:「ん……」
アカネ:「はぁ…誰かが教えてやらないといけないんだよな…」

もしスピットファイアが深くヒイロを注視していれば、
その目の端に涙の粒があったことに気づけたかもしれない。

■オコト埠頭■

かつては工業用品の輸出入で栄えたこの埠頭は、磁気嵐によってこの人工島が封鎖されて以来寂れる一途となっている。
それ故に多くの裏取引に活用され、故に多くのマッポがここを見張ってきた。だが……今、この埠頭にはそのどちらもいない。
ただ、誰もいない埠頭がアカネとヒイロを出迎えていた。

ヒイロ:「……おまわりさん達、どこにもいないけど……」
アカネ:「だなぁ。……29課の連中、一体どこで油売ってやがる」
ノゾミ:『アカネ、合流できたかしら?』
アカネ:『いんや、誰もいねえ。どうしたもんかな』

ノゾミ:『え……?』
インカムの向こうで声色が変わる。
はっきりとした息を呑む音。あるいはそれは最悪の事態に気づいた音。
ノゾミ:『ブッダファック……どこまで腐敗すれば気が済むの……?』
ノゾミ:『アカネ! 今すぐそこから逃げて!』
アカネ:『あぁ?今度はどこに』
ノゾミ:『どこでもいい! とにかくそこは敵に全部筒抜――』
ノゾミ:『とにかく、逃げ――ザザッ』
アカネ:『姐さん?…姐さん!?』
ヒイロ:「――っ」
インカムの向こうでデッカーが絶叫する。同時にヒイロが息を呑んだ。
アカネ――スピットファイアのニンジャ感覚も捉えたはずだ。その存在を。

???:「わざわざ連れてきてくれて、ご苦労だったな」
その声は埠頭の入り口の方からした。同時に全ての無線が切断される。ジャミングだ。
スピットファイア:「……はて、こちらはお前みたいなチンピラを呼んだ覚えはないんだが。何の事だかさっぱりだな」
???:「ハァー……面倒なやり取りは嫌いなんだ」
そのニンジャは、ゆっくりと頭を下げ、アイサツした。

チェンタウロ:「ドーモ、ソウカイヤのニンジャ。チェンタウロです」

◆チェンタウロ(種別:ニンジャ)
カラテ    5(8)    体力  7
ニューロン  6    精神力  7
ワザマエ   5(7)    脚力  4(6)/N
ジツ(ヘンゲ) 4

攻撃/射撃/機先/電脳  8/5/6/5
回避/精密/側転/発動  8/5/5/9

◇装備や特記事項
 『Tニンジャアーマー』、『◉忠誠心:ソウカイヤ』、『頑強なる肉体』
 『◉滅多打ち』:回避ダイス2をコストに【連続攻撃2】を得る(サツバツなし)
 『★アクマ・ヘンゲ・ジツ』
  :カラテ+3、ワザマエ+2、脚力+2、近接攻撃ダメージ2、連続側転不可
 『☆◎弾き飛ばし』:近接攻撃で2ダメージ以上与えた場合、弾き飛ばし追加

スピットファイア:「…ドーモ。ソウカイヤのチェンタウロ=サン。スピットファイアです」
チェンタウロ:「もう一度言う。その娘を引き渡せ。そうすれば無知故の愚行として見なかったことにしてやる」
クローンヤクザの大軍を引き連れて現れた男の放つアトモスフィアはヤクザ……いや、これまでやりあってきたニンジャとくらべても強い。
シルバーカラス……あるいはそこまではいかぬとも、間違いなく『ニンジャを殺すために訓練を積んできたニンジャ』である。

スピットファイア:「なるほどな、例の押し入り強盗はソウカイヤか。それなら合点のいく話だ」
チェンタウロ:「ソウカイヤを知っている? ならば話は早いはずだ」

チェンタウロ:「…………ああ、なるほど、報酬目当てか」
チェンタウロはスピットファイアとヒイロの顔を見比べると合点がいったように言った。
ヒイロ:「……そ、そうよ! 報酬があるのよ! アカネは私のことを裏切ったりしないんだから!」
チェンタウロ:「ククク……ハハハ…………ハーッハッハッハッハッハ!!」
チェンタウロの嘲笑が辺りに響く。
ヒイロ:「え……?」
チェンタウロ:「そこの娘は知らないようだから教えてやる。既に我々は貴様の両親を殺し、株式の51%を取得している」
ヒイロ:「っ!!」
チェンタウロ:「貴様には49%が相続される予定であるが、51%を我々が保有している限り何もできん。売ろうにも馬鹿げた貴様らの社則のせいで一族以外には売れないしなァ?猫にコーベイン。紙切れと同様ということよ」
チェンタウロ:「翻っては、貴様への報酬も無いということになる。女傭兵」
ヒイロ:「…………!」
スピットファイア:「……」
ヒイロ:「ぁ……」
ヒイロ:「………………」

ヒイロがスピットファイアの顔を見上げる。
ヒイロ:「…………ごめん、なさい」
ヒイロ:「…………騙し、てて」
ヒイロ:「私、お父さんとお母さんが死んだの、知ってたの」
ヒイロ:「二人が死んだらどうなるかってことも」
ヒイロ:「最初から、報酬払えるアテ、無かったんだ」
ヒイロの告白を静かに聞いていたスピットファイアの横顔が少し微笑む。
スピットファイア:「……ふふっ、最初は生意気なガキだと思ったが、なかなか大した女優じゃねえか。御見逸れしたよ」

チェンタウロ:「つまり、くだらんクソガキの浅知恵とそれに騙された間抜けなニンジャのせいで我々は随分と大きな損害を受けたわけだ」
チェンタウロ:「……だが、お前の戦闘状況は動画で見させてもらった」
チェンタウロ:「どうだ、スピットファイア=サン。お前が望むのならばソウカイヤに入る手筈を整えてやろう」
チェンタウロ:「貴様も傭兵として戦ってきたなら分かったはずだ。どれだけワザマエがあろうとこの街でソウカイヤに楯突いて生きていくなど不可能」
ヒイロ:「……うん、そうした方がいいよ」
スピットファイア:「……確かに、ソウカイヤからマトにかけられて長生きできた奴の話は聞かねえなぁ」
スピットファイアの手がヒイロの方へ伸び、彼女の小さな手を握った。

ヒイロ:「アカネ=サン……?」
スピットファイア:「支払い能力の無い契約は無効だ。アタシは現契約から降りさせてもらう」
ヒイロ:「……!」
目に涙が浮かぶ。それが零れそうになるのをヒイロは必死にこらえた。
ヒイロ:「うん、そりゃ、そうよね」
チェンタウロ:「そうだ、そのままそのガキをこっちに連れてこい」

スピットファイア:「――ヒイロよぉ。さっき車でアタシの事、"正義のヒーロー"って言ったよな」
眼前のソウカイニンジャから視線を逸らさないまま、スピットファイアが静かに言葉を紡ぎ始める。
ヒイロ:「……うん」
スピットファイア:「後ろは暗い海、目の前にはヤる気満々の敵。逃げ道は何処にもねぇ。……正義のヒーローって奴はさ、こういう時どうするもんだと思う?」
ヒイロ:「え……?」ヒイロは予想もしない質問に目を丸くした。
僅かな逡巡の時間が流れる。そして――
たすけて、そう唇が紡ごうとするのをヒイロは意思の力で無理やり抑え、絞り出すように言う。
ヒイロ:「――最近のヒーローは、勝てない相手からは適宜引くのものらしいよ?」
スピットファイア:「世知辛いなぁ。頭が回らない奴は生きづらくて困る」
ヒイロ:「だから、だからアカネ=サンも」

ヒイロの手を握り締める力が一層強くなり、目と目が触れ合う。
その緑のまなざしは――暖かい、優しい色をしていた。
ヒイロ:「エ……?」
スピットファイア:「……アタシも正義のヒーローって奴の事、まだよく分かってないんだけどさ」

スピットファイア:「ここで困ってる女の子を見捨てるようなクソッタレは、ヒーローなんかじゃないって思う」
ヒイロ:「!!」

スピットファイア:「アタシはまだお前の『正義のヒーロー』でいられるかな?アタシの事、まだ信じてくれるか?」
ヒイロ:「アカネ=サン……!」
ヒイロの目から遂に涙が溢れた。
ヒイロ:「アカネ=サンは正義のヒーローだよ……! だから、だから……」
スピットファイア:「――さて。改めて契約といこうじゃないか、ヒイロ=サン」
手をほどき、小指を差し出す。子供じみた誓いの証だ。
スピットファイア:「お前は車の裏で、身体を小さくして、アタシの無事を祈ってくれ」
スピットファイア:「アタシは……お前のヒーローらしく、踊ってやるよ」
ヒイロ:「…………うん、うん……!」
差し出された小指に小指を絡めた。
細く弱々しい指だが、懸命な力がこもっている。
ヒイロ:「私を助けて、ヒーロー……!」

スピットファイア:「……悪いなァ、チェンタウロ=サン。アンタの申し出は切実にありがたいんだがよォ――」
スピットファイア:「正義のヒーローにも看板ってもんがあるんだ。抱えてる契約はキッチリ守らないといけねえ」
チェンタウロ:「その馬鹿げたロマンチシズムと増長慢でソウカイヤに逆らい、死ぬことになる」
チェンタウロ:「それを望むならば、今すぐそうしてやろう!」

GUGAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!
チェンタウロの身体がバキバキと巨大化する! アクマ・ヘンゲだ!
スピットファイア:「ヒイロ、下がってろ」
漆塗りの鞘からカタナが静かに解き放たれる。その鎬には荒々しく刻まれた銘、"アデヤカ"。
チェンタウロ:「シュウウウウウウ…………愚か者め。ソウカイヤに逆らった罪、深く後悔して死ぬが良い」

スピットファイア:「……クソブッダ!めん玉かっぽじってよく見ておけ!これが『正義のヒーロー』…アタシのイクサだ!」


ボス戦開始

この戦闘の特殊ルール
チェンタウロとスピットファイアだけは1ターン2回行動
行動順はチェンタウロ→スピットファイア→チェンタウロ→スピットファイア→クローンヤクザ(6体)となる。
クローンヤクザは弾幕ルールを使い、全員合わせて1ダメージ回避難易度Hを放つ。

●1ターン目

チェンタウロの手番(1回目)
チェンタウロ:殴りつける

NinjaSlayer : (8B6>=4) → 3,5,3,2,2,2,1,6 → 成功数2

NM:ダメージ2の攻撃、食らうと弾き飛ばしだ!
PL:3個で回避

回避:
NinjaSlayer : (3B6>=4) → 1,4,4 → 成功数2

チェンタウロ:「イヤーッ!!」チェンタウロが鉤爪のついた巨大な腕を振り下ろす!パワーもさることながら、その巨体からは想像がつかないスピード!
スピットファイア:「イヤーッ!」カタナを振り上げて腕を受け止める!
ミシィ! スピットファイアの身体を襲う強烈な重圧!
スピットファイア:「(重い…ッ!!)」
チェンタウロ:「野良ニンジャを狩って良い気になっていたのだろう」
チェンタウロ:「ソウカイニンジャの恐ろしさ、身に刻んで死んでいけ!」

スピットファイアの手番(1回目)
スピットファイア:「そのよく喚く喉を切り裂いてやる!」
スピットファイア:『移動スタイル:カスミ』で横に1歩→強化強攻撃

NinjaSlayer : (8B6>=5) → 1,2,1,1,6,6,1,5 → 成功数3
回避:
NinjaSlayer : (3B6>=4) → 4,3,2 → 成功数1

振り下ろされた腕を横に受け流し、その腕に足をかける!そのまま駆け上り喉元へ!
スピットファイア:「イヤーッ!」横薙ぎの斬撃!
チェンタウロ:「イヤーッ!」その巨体に合わぬ俊敏さで致命的な斬撃を回避!

チェンタウロの手番(2回目)
チェンタウロ:もう一度殴り

NinjaSlayer : (8B6>=4) → 2,2,3,1,6,1,5,6 → 成功数3 → サツバツ!!

チェンタウロ:「イヤーッ!!!」鉤爪をむき出しに致命的な攻撃を仕掛ける!
ヒイロ:「アカネ=サン!」

PL:3個+緊急1個で回避

回避:
NinjaSlayer : (4B6>=4) → 4,5,6,1 → 成功数3

スピットファイア:「イヤーッ!」
スピットファイアは空中で身体を捩り、鉤爪の間をすり抜ける!固唾をのんで見守るヒイロへ微笑んだ!「余裕だよ!」
チェンタウロ:「オノレ……!!」地面に巨大なひび割れが広がっている。もし受ければひとたまりもあるまい……

スピットファイアの手番(2回目)
スピットファイア:集中→強化強4*4

NinjaSlayer : (4B6>=4) → 6,3,6,6 → 成功数3
NinjaSlayer : (4B6>=4) → 2,1,2,5 → 成功数1
回避:
NinjaSlayer : (2B6>=5) → 3,1 → 成功数0
NinjaSlayer : (2B6>=4) → 3,2 → 成功数0

NM:両方命中!サツバツ判定どうぞ!
PL:ウォーッ!

NinjaSlayer : サツバツ表(1) → 「イヤーッ!」腹部に強烈な一撃が命中! 敵はくの字に折れ曲がり、ワイヤーアクションめいて吹っ飛んだ!
 『痛打+1』。敵の【体力】を減らした場合、付属効果として『弾き飛ばし』を与える。

サツバツ:2+痛打1+吹っ飛びダメージ(回避ダイスなし)!=3
通常打:2
合計5ダメージ!

スピットファイア:「イヤーッ!」緊急回避から素早く体勢を整えたスピットファイアは着地と同時に腕へ斬撃!
そしてチェンタウロが怯んだ隙を見逃さない!壁蹴りの要領で顔の前まで駆け登り…
スピットファイア:「イヤーッ!」顔面にケリ!ブーツのスパイクが徹甲弾めいて食い込む!
チェンタウロ:「グワーーーッ!!」
KRAAAAAAAAAASSSH!!巨体がコンクリートに叩きつけられる!
チェンタウロ:「アバッ、アバババッ……!」
スピットファイア:「あーあ!イタソー!」
チェンタウロ:「ば、馬鹿な……!」

編注:
「腹部に強烈な一撃」って言ってるのに顔面を蹴られるチェンタウロ=サン
そういう事もあるよね、うん

クローンヤクザの銃撃
チェンタウロ:「ク、クローンヤクザ、俺を援護しろ!俺を援護しろーッ!!」
クローンヤクザ:「「「「ザッケンナコラー!」」」BRATATATATATATTA!クローンヤクザ達が一斉にスピットファイアに射撃!
スピットファイア:「大勢下っ端引き連れて、ダッセんだよ!」

NinjaSlayer : (3B6>=4) → 5,3,1 → 成功数1

スピットファイア:「イヤーッ!」銃弾を叩き落す白刃!
チェンタウロ:「な、なんだと……! コイツ、車での戦いよりも余程……!!」
ヒイロ:「アカネ=サン、スゴイ……!!」
周囲を流れ弾が飛び交うが、ヒイロの目はスピットファイアを捉えて離さない!

●2ターン目

チェンタウロの手番(1回目)
チェンタウロ:「ありえん、甘えたフリーランスがソウカイニンジャである俺を倒すなど……!!」
スピットファイア:「最近のフリーランスはひと味違うんだぜ?試してみろよ」
チェンタウロ:「ウ……ウオオオオーーーーーッ!」
チェンタウロは遮二無二突進!

『◉滅多打ち』:回避ダイス2をコストに【連続攻撃2】を得る(サツバツ発生権を失う)
NinjaSlayer : (4B6>=4) → 1,3,6,1 → 成功数1 #1
NinjaSlayer : (4B6>=4) → 6,1,5,1 → 成功数2 #2

チェンタウロ:「イヤーッ! イヤーッ!!」
鉤爪のついた両腕で八つ裂きにせんと連続攻撃をしかける!

NM:ダメージ2の2連発!
PL:3*3で回避

回避:
NinjaSlayer : (3B6>=4) → 1,6,6 → 成功数2
NinjaSlayer : (3B6>=4) → 3,2,3 → 成功数0

NM:2発目命中、だが1発目カウンター!しかもイアイ反撃だ!
NM:命中すればトドメ!
NM:いや、燃える展開だし受ける!

チェンタウロ:「甘えた野良ニンジャのカスがァーッ!!」
チェンタウロは遮二無二突進!
スピットファイア:「ッ…!!」
回避は間に合わない!鉤爪で切り裂かれるスピットファイアの身体!
だが剣気は散る事なく――

チェンタウロ:「クハハハハ、当たった! そうだ! これが本来の正しい姿なのだ……なっ!?」

スピットファイア:「イヤーッ!!」
身体を捻りながら上方へ、自らの鮮血と共に虚空を舞う赤いニンジャ。
身体の芯が不自然に冷たくなり、視界が灰色になる。
天地反転ののまま虚空でカタナを振るい、暗闇に浮かび上がる線へ刃を沿わせる。至る先は、チェンタウロの胴
柔らかい泥に棒を突き立てるように、白刃が巨躯にねじ込まれる
スピットファイア:「イヤーッ!!」

チェンタウロ:「グ……ワ……! アバーーーーーッ!!」巨体が横一文字に切り裂かれる!!
その身体が膝から崩れ落ち、アクマ・ヘンゲの呪われた姿がボロボロと崩れ行く!

チェンタウロ:「ガ……アバッ……そ、そんな、バカな……!」
スピットファイア:「…どうよ、"正義のヒーロー"のイクサは」
チェンタウロ:「こ、ここを切り抜けたとしても、アバッ、ソウカイヤは貴様を許さない……キサマにその覚悟があるのか」
スピットファイア:「覚悟?そんなもんあろうが無かろうが、死神はドアをノックしに来るだろう?今日のヒイロや――お前さんのように」
雄弁に応える首への一閃!
チェンタウロ:「サヨナラ!」首を切断されチェンタウロは爆発四散!
スピットファイア:「お母さんに習っただろ、悪者は長生きできないってよ。アタシの場合は……少なくとも、今日じゃない」

クローンヤクザ:「ザ、ザッケ……!」
クローンヤクザが銃を君に向けようとした、その瞬間
BRORORORO!!!!後方から乱入するマッポカーの車列!
その先頭にはアカネの先輩、ノゾミの姿も見えるではないか!

スピットファイア:「姐さん!?」
マッポ:「御用だ!!」
ノゾミ:「関係ねえ、現行犯だ射殺しろ!!」
マッポ:「イエッサー!」BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!
「「「「「グワーーーッ!!」」」」
マッポ達の致死的執行で肉塊となるクローンヤクザ!ナムサン!
ノゾミ:「フリーランスの正義のヒーローがカッコつけてて、本家が汚職じゃ情けなくて涙が出るからね」
ノゾミ:「上層部なんてクソ喰らえ。NSPD魂、見せてやったわ」


ヒイロ:「アカネ=サン!!」
アカネが呼ぶが速いか、飛びつくように抱きつく。その勢いに圧され、二人揃ってアスファルトに倒れ込んだ。
ヒイロ:「ありがとう、ありがとう……! 無事で良かった……!」
スピットファイア:「おお…今日はブッダが夜更かししてたみたいだぜ」
ヒイロの頭を撫でながら告げる。
スピットファイア:「正義のヒーロー、これで契約完了だ」
ヒイロ:「……!」
その言葉に応えるように、ヒイロはもう一度アカネを強く抱きしめた。


ノゾミ:「ということで、後処理はこっちの方でなんとかするわ」
全部29課に押し付けてやる。そう言って邪悪な笑顔を見せる。

ノゾミ:「それで、ヒイロ=サンのことなんだけど……」
アカネ:「ええ」後ろに隠れているヒイロの手を握る
ヒイロ:「……」
ノゾミ:「ヒイロ=サンが望むなら、証人保護プログラムを使用してキョートに引っ越してもらうことになるわ」
ノゾミ:「ヒイロ=サンが相続する49%の株券も今夜中なら裏ルートで現金化はできそう。価値としては1割程度になるけどそれでも大金よ」
ノゾミ:「……ネオサイタマには最低10年は戻ってこれなくなるけど、どう?」
ヒイロ:「あ……」ヒイロは小さく呟くと、アカネの手を弱々しく握った。
アカネ:「どうする。キョートは良い所らしいぞ。少なくとも、ネオサイタマよりはずっと」
アカネ:「アタシだったら高跳びするけどなァ」
決心を促すように意見を述べるアカネ。しかし――
ヒイロ:「ん……」
ヒイロの顔を見てノゾミはため息をつく。
ノゾミ:「ネオサイタマに残る場合は、まあ顔と服装は子供だからなんとでもなるとして……身元引受人が必要になるわね」
ノゾミ:「天涯孤独で唯一の親族はネコソギファンドの手下、流石に預けられないわ」
アカネ:「箱入り娘の身元を引き受ける酔狂な奴なんかどこに…」
ヒイロ:「…………」
じっと見上げている。
アカネ:「(…そうなるか……)」
ノゾミ:「ま、実際フリーランスの貴方が預かって育てられるとは思わないから、あのお爺ちゃんの隠し子ってことにするのが妥当なところかしら」

アカネの元上司、シモイズミ・サハリのことである。
アカネ:「親父さんか…隠し子というより、孫の方が格好つきそうだ」
ノゾミ:「いやー意外とあの人あの年齢で結構遊んでたって噂が……イヤナンデモナイワ」

サハリ:「エッキシッ!!」
マッポ:「大丈夫ですか?そろそろ冷え込んできましたからね…」
突然の市街戦で混沌の坩堝と化したネオサイタマの中心街で、マッポ達は事態収拾に追われていた。
サハリ:「……なんだか、この後とんでもない厄介事を背負わされる気がしてきた」
マッポ:「出た、サハリ=サンの『マッポの勘』!」
マッポ:「まァ――現在進行形で厄介事抱えてますが」
サハリ:「そうだなァ。……ったく、どこのおてんば娘が暴れたんだか」

NM:
ここはPL次第だけどどうします?
ヒイロの身元引受人になるか、キョートに送って第二の人生の幸福を願うか
どちらにしてもヒイロの明日は今日よりはマシになるでしょう

アカネは溜息を一つついた後、ヒイロの前でしゃがみ、その赤い瞳を覗き込んだ。
アカネ:「何が恋しいのか知らねえけどよ、これまでの綺麗で豊かな暮らしとは全てが変わっちまうぞ」
ヒイロ:「うん……」
アカネ:「簡単に考えるなよ。お前が今まで想像した事も無いようなクソ共と仲良くする人生がこの先に待ってる。」
ヒイロ:「ウン……」
アカネ:「ネオサイタマはクソだ。もう世話をしてくれる家政婦も、守ってくれるSPもいない。陰で頭縮めてるだけじゃ誰も助けてくれない。自分で自分を守らなくちゃいけないんだ。」
アカネ:「……それでもそっちを選ぶのか?」

ヒイロ:「……でも、アカネ=サンはそうやって生きてきたんでしょ?」
アカネ:「…そうだよ。アタシはそうやって生きてきた」
泥のような目でヒイロの問いに応じた。
アカネの幼少時代は決して不幸な物では無かったが、この街に数え切れない程の血と涙が沈殿している事を彼女は熟知している。
アカネだけではない。ノゾミや周囲のマッポ達、そしてアカネの背中に刻まれた幾つもの名前――倒れた仲間達――の間で共有される悲しみの記憶だ。
ヒイロ:「なら、アタシもそうやって生きたい!」
アカネ:「カチグミのお嬢様なら多少は考え事も上手だと思ったが…こりゃあ相当バカな娘だ。本当に先が思いやられる」
ヒイロ:「大丈夫だよ、だって」
ヒイロ:「正義のヒーローって、頭が悪くなきゃなれないんでしょ?」
ヒイロはそう言うと笑った
ノゾミ:「アンタの負けね、アカネ」
アカネ:「ええ…これはもう、救いようがねえや」
アカネ:「やった! これからもよろしくね、アカネ!」
再び首に腕を回して抱きつく。その身体はネオサイタマで生きていけるか不安なほど細く軽く、しかし重金属酸性雨にも負けない熱を帯びていた。
アカネは一瞬のためらいの後、背中を抱き返した。
ノゾミ:「フフ、今回はめでたしめでたしってことで~」

かくして、スピットファイア……否、セビ・アカネの長い夜は終わりを迎える。
明日は今日より少しだけマシに……それをどこまで続けていけるのか、その先に何があるのか。
それはまだ分からない。だが、一つだけ分かることは……
貴方は明日咲くこの笑顔を今日、守り抜いたということだろう。

【バーン・アンド・ラン・アンド・バーン】おわり


あとがき

編者兼PLの楓です。正義のヒーロー回でした。
お前…ちゃんと正義のヒーローできるじゃねえか…!
か弱いヒロインとの逃避行、カーチェイス、荒れ狂う鉄と炎、そしてボスとの一騎打ち!こういうの大好きです。
契約更改シーンは前半のエピソードで一番好きです。ブッダの温情とNMのマスタリングで熱い展開になりました。
ヒイロが健気カワイイ!育て方間違えると「私が正義のヒーローの相棒だ」とか言い出しそうな危うさがあるのが不安ですが…

NM:ヒイロもここまでアカネに懐くと思ってなかったから
NM:そのへんはアカネ=サンのロールが熱かったってことだ
PL:(足先から光の粒子になるPL)

あと何気に先輩デッカー(ノゾミおねいさん)もパワーアップして再登場したのが嬉しかったなあ。優秀だけど少し抜けたトコがあって好き。圧が強いトコも好き。地獄耳…ドケチ…

傭兵ニンジャとしての場数も増え、粗削りながらもイアイの鋭さが増していきますが、順風満帆に物事が進むなんて事がネオサイタマで…ありますかね?ないんだろうなあ。物語は次のセッションへと続きます。

【おことわり】スピットファイア/アカネはartbreeder在庫処分、ヒイロ・カネモノはこあくまめーかー2ndこちらのメーカー、マスハナ・ノゾミは警鐘が鳴ってる、シモイズミ・サハリは拝式目付きの悪い男メーカー、チェンタウロはサンシタニンジャメーカーをそれぞれ顔アイコンに使用しています。【感謝】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?