名無し2

 いっそのこと体調が悪くなって欲しい。何度そう願っただろう。なんでぼくは健康なんだ。こんなことを願うのは、健康でいたくてもいられない人に対しての侮辱だと捉えられる。けれど、そう願わずにはいられないほどぼくは健康だった。
 「大丈夫?」「休んでていいよ」そんな心配の言葉が好きだった。ぼくのことを思ってくれている気がするから。人は内面を見ようとしない。固定概念に囚われすぎている。かと言うぼくだって例外ではないが。上辺だけ見て、そうだと信じ込むので、その考え方を曲げることは難しい。

 「毎日楽しそうだね」
 「うん、楽しいよ笑」
 周りにはそう見えてるんだって。日々が憂鬱で苦痛な毎日を送っているのが周りにはわからないんだって。それを望んでいるからそれでいいはずなのになんだか心苦しくて本当にぼくの心は矛盾している。

 「好き」という言葉は時折人を傷つけてしまうことがあると思う。「好き」が分からなくなってしまったぼくには、苦い思い出が頭をよぎり、言葉の意味そのままに好意を受け取ることができない。

 ぼくは我儘だ。気づいて欲しいけど気づいて欲しくなくて。誰かに愛されたいけど愛されるのは怖くて。結果を出したいけど頑張れなくて。目立ちたいのに目立ちたくなくて。我儘というより天邪鬼なのかもしれない。こんなひん曲がった人格が認められるのだろうか。認められないと自分はずっと思っていて、認められたいくせに本当の自分を出す気はないんだ。ほらやっぱり天邪鬼だ。なぜぼくはこんなにおかしいんだろう。異常だ。しにたい。しにたいしにたいしにたい。

 ぼくはまた朝を迎えた______

                                                  夕凛    第1章 終

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